転生
~~~どこかわからない場所にて~~~
酷く気分が悪い。目が覚めたそこは、真っ暗闇で船の上のように揺れていた。状況が呑み込めない。俺は確か死んだと思ったが、、、、間違いだったのか、、、いや、そんなはずはない。俺は、徹夜での仕事の後、12階建ての会社のビルの屋上から落ちたのだから。自殺とかではない。いや、自殺といえば自殺なのか?事故といえば事故なのか?ただ間違いなく言えることは、人生三十年のうち最大のうっかりをしたということだろう。
~~~会社の屋上にて(回想)~~~
やっと仕事が終わった。明け方にかけて疲れがどっと襲ってくる。今年で30歳。これで低賃金だからどうしようもない。朝日に飲むジュースがうまい。俺は珈琲が飲めない。自販機で適当に選んだけど、滅茶苦茶うまいな。ピーチ100パーセントドリンク?どうりで旨いわけだぜ。俺は桃が大好きだ。
「桃が大好きだー!!」
初恋の相手は桃子ちゃん!好きな果物は桃!好きな漫画家は「さくらももこ」!
「やっほーーー!!!」
俺は、徹夜明けで少しおかしくなっていたんだな。テンションがおかしかった。だから朝日に向かって叫びたくなった。
「ピーーーーーーーチ!!」
俺は、朝日に感謝したよ。こんなブラック企業で働くうだつの上がらない貧乏サラリーマンにも他の奴らと同じように暖かい光を送ってくれるんだぜ。
それにさ、朝日ってなんか桃に似ていないか。色といい形といい。
「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーチ!!!」
やっぱり、どう考えても疲れていたんだな。昔から頭が悪かったけど、死ぬまで変わらなかったわけだ。
俺は、なんだかテンションがおかしくなって、屋上の柵を超えた。
ただ、ピーチ(朝日)掴みたかった。
「ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーチ!!」
そうそれは、屋上からダイブした男の最後の言葉だった。