EP19 祭りの日に③
飛鳥さんの能力については、後のEPで解説します。今はこんな感じとだけ思っていてください。
敵の数は22人。位置の情報も得た。
そして人質は、ゴルノバ王、ステラ女王、クラリス姫、侍女15人。
近衛兵が、王たちの近くに居ないのは気になる。
人質は、玉座の間に居る。全員同じところだ。
当然見張りも多く、15人が部屋の中で剣を構えている。
魔法が使えない以上、一気に切り込んで倒すのがベスト。
ジェームス係長は、ほぼ無戦力。こっちは3人。一気に倒さないと、人質の安全が・・。
「これを使うであります」
飛鳥さんの手にあった銃が消え、代わりに手りゅう弾?
手りゅう弾も出せるのか?
「これは閃光発音弾であります。俗に言うスタングレネード。光と音しか出ないであります」
今、一番必要なものだ。だけど、魔法が使えない状態で作動する?
「たぶん大丈夫であります。銃は撃てないと分かるであります。でもこっちは、使える気がするであります」
頭の中に、使える魔法が浮かぶのと、同じ原理の様だ。
「よし、使えるのは物理攻撃だけ。一気に15人を倒した後、人質の安全確保。残りの敵は、ギャリソンに任す」
ジェームス係長と、氷姫さん、四聖獣はトイレで待機。
私たちは、周囲に気を付けながら、玉座の間に向かう。
玉座の間の入り口には、やはりペンギンの着ぐるみを着た二人が、見張りとして立って居る。
「任せて」
私は帯を4つに折り、片手に持つ。まだ剣には変えない。紐帯のままだ。
そして、無防備に玉座の間に近づく。
「おい!止まれ!」
見張りに気づかせる。
「えっと、ここって・・・」
迷子の振り。可愛らしい素振りで、困惑して見せる。
「なんだ、迷子か」
「ツイてないな嬢ちゃん」
2人は、素手の私に油断しきって近づく。
剣を私に向ける。私は「降参」の仕草。両手を上にあげるが、これが上段の構えとなる。
間合いに入った!
片手に持つ紐帯を剣に変えると、振り下ろす。
一振りで、2人を倒す。
「お見事でございます」
ギャリソンに称えられる。
飛鳥さんは、少しだけ入り口を開けると、中の様子を確認。
「奥左に人質。手前側に10人。奥右5人であります」
なんて頼りになる人だ。手慣れている。
「では、行くであります」
閃光発音弾を転がして中に入れる。
「3,2,1、突入であります!」
閃光発音弾は、強い光と、大きな音で、敵を行動不能にする。
中から爆音と、悲鳴に似た声がすると同時に、私たちは突入。
中に居た敵は、目や耳を覆い、戦闘不能な状態。
手前の10人を倒し、右奥の5人に斬りかかる。
抵抗はなかった。ただ斬るだけの、簡単な戦闘だった。
「みんな!無事?」
「おお!雪姫」
「雪姫さん」
「ゆっきぃーーー」
全員無事だ。
音を聞いて駆け付けた残党は、ギャリソンが最強聖霊の名に恥じぬ働きで倒した。
「油断した。近衛兵を祭りに行かせたのが不味かった」
油断しすぎだ。近衛兵が側に居なけりゃ、近衛ではない。
「クラリスが人質に取られ、抵抗できませんでしたわ」
親バカだもんな・・。
「ゆっきぃーーー怖ったよ」
クラリスが抱き着いてくる。
そりゃ怖かったろ。もう大丈夫だよ。
頭をナデナデしてあげた。
「雪姫、奴らの狙いはマリアだ。そして、この王都の壊滅」
マリア?壊滅?
どうやるつもりだ?
「一人ぐらい、生かしておけばよかったですな」
いや、トイレの2人は生きてる。
尋問だ。
「尋問なら、この汎用型陸自特製和包丁が、物を言うであります」
出刃包丁。陸自装備を出せる魔法なのか?
・・・そう言えば、飛鳥さんが穴から落ちて、マリリンさんがマニュアルに従い聞いた時・・頭の中に『自衛隊』と浮かんだと言っていたが・・。
ギャリソンと飛鳥さんがトイレに向かい、代わりにジェームス係長が来た。
「我々の知る、砂漠のペンギンさんでは、ないようですね」
転がっている屍を見て、ジェームス係長は言う。
「ええ、資金が豊富なようですわ。高価な魔法の阻害石や、統一されたユニホーム。このユニホーム、良い生地を使っていますわ」
貧乏テロリストが、景気のいいパトロンを得た・・と、いうことか。
奴らの狙い・・・マリアの殺害と、王都の壊滅。
ギア族の中でも、人気の高いマリア。反ギア活動では有効な手段だ。
でも、王都の壊滅って?
「隊長殿!」
うわぁ!返り血を浴び、手に持つ包丁は血だらけの飛鳥さん。
「中々にエグイものを拝見できました。・・・今晩のおかずは、ケチャップ抜きでお願いしたいですな」
同行したギャリソンが、そんな顔になる程の尋問だったのか?
「マリア殿の公演が行われているコロシアムには、自爆兵が潜入してるとの情報を得ました」
なんだって!?
「すぐに公演は中止!観客の避難を!」
ステラ女王の指示だが、飛鳥さんが止める。
「自爆兵は、自爆の事実を知らされてないであります。爆発の条件は、2つであります。
公演がクライマックスを迎える事、コロシアムから出る事であります」
!!!!
それって‥不味い。避難をさせられない。
3万人からの観客がいる。紛れ込んだ奴だけを、見つけ出すなんて不可能だ。
しかも、公演がクライマックスに成れば、爆破は行われてしまう。
「手がありませんわ・・・」
策士、ステラの顔から絶望の色が伺える。
まずぞ・・・まずい。何とかしないと・・・。
次回は雪姫の奇策です。




