望まぬ帰還(2部)
日本編です^^おさらいも兼ねての、出だしとなります。
私は、元の世界に、戻ってきてしまった。
ここは、友人と来ていた湖の湖畔。
私は森で『穴』に吸い込まれ、異世界ルーランに落とされた。
ルーランでは、異世界転移者を「迷い人」と呼び、迷い人は、例外なく『時』が奪われる。
更に『穴』から落ちて来たモノは、何かを失い何かを得た者と、何も失わず何も得ない者の二通り。
私は前者。
前の世界での記憶の一部を失い、代わりに超魔法を得る。
ルーランに落ちた私が出会ったのは、獣人マックス。
ギルド「スノープリンセス」のマスター。
私の魂は本来、この世界に生まれてくるはずだった。
しかし、私を生むはずだった、マックスの妻の白姫さんは、呪いに掛かり、私を生む前に亡くなってしまう。
白姫さんには、強大な力があり、未来を見る事ができた。
そして、世界が滅ぶことを知っていた。
異世界で生まれた私を、我が子のように想ってくれた、マックスと白姫さんは、世界を滅びから救う為、私に戦える力、『ギルド』と『四聖獣』を残してくれる。
私は仲間達と共にルーランで「ギルド スノープリンセス」を運営しながら、来るべき時に向け、力を着けていた・・・が、『穴』が、私を元居た世界へと戻してしまった。
ルーランのギルド「マーメードドルフィン」のギルマス『マリリン』さんを巻き添えにした私は、途方に暮れていた。
「どうしよう・・・」
頭が真っ白だ。何も考えられない。
「雪姫さん、雪姫さん!」
マリリンさん・・・。
「私、どうしたら・・・どうしよう?」
「落ち着いて、今は状況に対応しないと」
マリリンさんは、私の肩を両手でしっかり押さえ、目を見据えていた。
「うん・・うん・・・」
そうだ、落ち着かないと。
ここは元居た世界。私は地元の湖に遊びに来ている最中。
周りには、3人の友人が居る。
今の姿、白姫さんの着物の姿を見られるのは不味い。
とりあえずは、家に帰ろう。
私は、この世界の記憶を取り戻していた。
自分の名前も、父と母の事も、友人関係も、全て思い出している。
友人には悪いが、いったん家に帰り、家から連絡を入れることにした。
森を抜け、最寄りの駅まで行くと、タクシーを捕まえて家に戻る。
幸いマリリンさんは、冒険者スタイル。
腰の剣を隠せば、山では違和感のない格好だ。
私の着物姿は、大分違和感があるが、それでもタクシーの運転手さんは、乗せてくれた。
「さ、入って」
私は、我が家にマリリンさんを招き入れる。
約2年間を、ルーランで過ごしていた。
しかし家の中は、友人たちと出かける日の、朝のまま。
マリリンさんを居間に案内すると、固定電話から、友人の一人「山田ゆかり」の携帯に電話を掛けた。
今頃、プチ騒ぎになってる頃だ。
「あ、わたし。ほのか」
私の名前は『柊ほのか』こっちの世界では、高校2年生。
「ほのか!どうしたの?何処に居るの?」
やはり、居なくなった私を、探してくれていたようだ。
「ごめんね。急に気分が悪くなって・・通った・・タクシーに・・乗っちゃったんだ」
心苦しいが、嘘でごまかす。
「大丈夫なの?ねぇ」
私にとっては、2年ぶりの友人の声。
演技ではなく、こみ上げてくるものがある。
私の言葉は、詰まり詰まりだった。
「今は大丈夫、安静にしてるから。皆に謝っておいて」
「わかった。皆には伝える。後で連絡するからね」
これで大事にはならない。
台所の冷蔵庫から、麦茶を出す。
私は数時間前まで、この家に居た。
『穴』に飲まれ、ルーランで過ごす2年は、この世界では、ほんの数秒の出来事。
不思議な感覚だった。
「さぁ、マリリンさん、対策会議しよ」
麦茶を出し、マリリンさんの前に座る。
「『穴』に飲まれた時の、対応マニュアルに従い、現状の把握から始めましょう」
マリリンさんも、ギルドのマスター。
緊急時の心構えは出来ている。冷静だ。
「私たちは、『穴』に飲まれた。そして、雪姫さんの居た世界に落とされた」
「うん」
現状の把握と言っても、私にとっては勝手知ったる世界。
「次は安全性の確保よ」
知らない世界に落とされたわけではないから、現状は緊急事態ではない。
安全は確保されている。
「最後に、この世界についての情報と、生きていくための術の確保」
私が全て知っていし、普通に暮らすことはできる。
「流石は優秀ね。スノープリンセスの、ギルドマスターだけの事はあるわ」
そこ、褒められてもね・・・。
「えっと‥次は・・」
「魔法かな?」
この世界には魔法はない。魔法が使えるかは、大きな疑問だ。
だが、余り強力なのは撃てない。我が家が心配だ。
お風呂場で「アイスバーン」を試した結果、床が薄っすらと白くなる程度。
マリリンさんの「ウオーターシャワー」に至っては、指先から水がチョロチョロ出る程度。
全く使えない訳ではない。が、相当弱くなっている。
「雪姫」
!?氷姫さん!
私は、打掛と色無垢を着ていることを思い出した。
「私たちは、この世界に拒絶されているようだわ」
テーブルの上に出て来た氷姫さんは、親指程度の大きさ。
四聖獣たちも、同様だった。
白鳳は、ライターの代わりぐらいにはなる火を吐く。
白虎は、団扇で扇ぐ位の風が起こせた。
白龍も白玄も、生活魔法程度の力しかない。
「役に立てそうにないわね」
そうでもない。話し相手になってもらえるし、居てくれるだけ心強い。
「後は、帰還の方法よね」
マリリンさんが核心に触れる。
「うん・・だけど『穴』は・・・」
『穴』に関しては分からないことだらけだ。
ルーランに戻れる方法など・・・。
「戻れない?」
「もう、みんなと会えない?」
「リアちゃんにも、ブルックにも・・もう会えない?」
突然、喪失感が襲ってきた。
こみ上げる不安と寂しさ。
押さえきれない・・・・。
私は泣き出してしまった。
私をなだめるマリリンさんも、いつしか泣き出していた。
私たちは抱き合いながら、泣きまくった。
夕闇が、部屋を暗くする。
私たちの泣く声だけが、部屋に響いていた。
2部では、新キャラが1人。日本編で登場のキャラです。




