EP10 マックスとの出会い③
ラストはマリアデス。AIの愛とは・・重いテーマだw
「私はマック様に見つけていただき、再起動しました」
マリアとマックスの出会いの話だ。
「・・・・えっと‥終わりです」
「なんで?」
「マックス様と出会ったので、終わりです。この後、私はマックス様と行動を共にしていました」
「物語になってないよ!」
「マリア様、ギム様に好意を抱いた時のお話をして差し上げれば、雪姫様もお喜びになるのでは?」
コイバナか!大好物っす。
「では、その時のお話を」
マリアは話し出してくれた。
「あの当時の私は、機械そのものでした。感情を司るシステムでさえ、『自分は兵器』と認識し、命令に従うだけの機械。ただの兵器でした」
「マリア、お前には心がある。只の兵器ではない」
「マックス様は、私に何度も言うのですが、私には感情は理解できませんでした」
「当時のマリア様は、今のように笑う事はなく、すぐ武器をぶっ放される、危ない方でした」
マジ?マリアが?
「相当地形を変えています。少なくとも山を6つは消し去りました」
「私は兵器としての機能を見せたかったから。存在意義は火力だけでした。だから、とりあえず撃っていましたね」
取り合えずで光子砲かぁ・・・危ない奴だ。
「でも1月ほど過ぎたころ、ある疑問が私の中に芽生えたんです。私の武器は全て、発動まで時間がかかります。武器を起動してから発射迄の間、私は無防備になります。その私を守っていたのがギムでした」
ほう・・最初に意識した瞬間だね。
「最初は支援機だと思っていました。しかしギムの戦力は、私を凌駕します。『私より強い兵器が、なんで私を守るのか?』私は、この答えが見つけられません」
ほうほう。確かにそれは疑問だ。
「私はこの疑問を、マックス様に具申と言う形で伝えます。
『ギムを前線に出した方が、効率よく戦えます』と」
「ギムがお前を守りたいから、そうしてるんだろ?」
「この答えでは、私の疑問は解決できません。私のCPUは、答えを探し続けました…でも解は得られません」
「3ヶ月ほど過ぎた頃です。私はある事を思いつきました。
優先順位の入れ替えです。
私の中での優先順位は、1位が「勝利」2位が「戦闘効率」でした。
この2つを空欄にして、ギムの行動を考えました」
「この頃のマリア様は、多少感情と言うものが芽生えていました。
笑顔とは言えませんが、褒められた時などに、口元に感情が現れることが有りました」
「まだまだ、理解はできてませんでしたね。特に「信頼」とか「愛情」と言う感情は、まるで理解が出来ませんでした。
で、考えた結果です。
私のCPUが出した答えは「優先保護」でした」
「ギムは私を、最優先で保護、つまり守りたいと考えている。と言う結果です」
これってさ、愛の芽生えでね?
「その後もマックスは、好んで戦闘をしていました。その度に、私はギムの動きを見ていました。
ギムは確実に私の周りに着き、私を守ります。
私の感情システムも、人間の感情を模倣するようになっていきます。
それにつれ、『保護』から『守られている』、そして『私はギムに守って貰える』と、考えるようになったんです」
守られるというのは、すごく強い信頼感。愛に繋がる感情だよ。
「半年後、私は『ギムがいなければ、私は戦えない。ギムが守ってくれるから、私は存在が出来る』と考えていました。これって、好きになっていたという事ですよね」
うんうん!愛だよそれ。
「でも、まだ「愛」を理解できていませんでした。
「信頼」と言うカテゴリーで、この感情を処理していました。
あの日、事件が起こる迄・・・」
「2つの偶然が、マリア様に『愛』を自覚させたのです」
早く!前置きは良いから!
「その日、私は夕飯の支度をしていました。そして、お塩が切れていた事に気が付きます。マックス様に言って、行きつけのお店まで買いに行くことにしました。
「ギムと行ってこい」
これがマックス様の命令でした。
外に出るとギムは、素振りをしていました。
少し待ちますが、ギムの素振りは終わりません。
一身に剣を振るギムを見ていると、私は声が掛けられなくなってしまいます。
『素振りの邪魔をしたくない』
もう人通りも少なく、誰かと出会う可能性は低い。
私はマックス様の命令を無視して、一人で買い物に出てしまいました」
「当時は、獣人やギア族の権利は認められておりませんでした。
その中で、獣人によるギルドの立ち上げを、よく思わない人もおりました。
ましてマックス様は、次々と難易度の高いクエストをクリアし、その地位を確かなものへと変えていた最中。疎ましく思う連中が、多くおりました」
「私は迂闊でした。そんなことも考えず、可能性だけで判断し、買い物に出てしまったんです。
運悪く、他のギルド。それもマックス様を疎ましく思う連中と出会ってしまいました」
「マックス様は、表で素振りをするギム様を見て、すぐにマリア様をお探しに出られました。勿論ギム様もです」
ギャリソンが付け加えた。
「私は、街中での兵器の使用を禁止されていました。逃げるしかありません。ですが、相手は土地勘のある冒険者。取り囲まれるのに、時間はかかりませんでした。
人間より力はあります。私は、パワーで対抗します。
でも私は、接近戦が下手糞。冒険者には通用しません。
膝の関節に剣を差し込まれ、動きが鈍ると、右腕を切り落とされました。押し倒され、上に乗られ、動きは完全に封じられます。
『破壊される』私は認識しました。
そして『後悔』しました。『ギムと一緒なら』・・・と。
抵抗する私の動きを止めようと、冒険者の指はクリスタルに伸びます。
『もうギムと会えない』
私の心は、破壊されることより、ギムと会えないことを、悲しいと感じていました。
電源が切られました。
私の心は闇に落ちて行きます。私は残された僅かな時間を、ギムだけを考えていたんです。
『マリア!』
ギムの声が聞こえました。
『・・・ギムが居る・もう・・安心・・・・』
私の意識はそこまで。
次に目覚めた時、膝と腕は直してもらい、横に居るギムが、私の手を握ってくれていました。
あの時の感情。別れたくないと思う気持ち。それが愛情。
私は『愛』を理解しました」
「ええ話だ!!最後でいい話が来た!」
「はい。とてもいいお話です。ポロリと来るいいお話です。
しかしながら、その後60年、1歩たりと前に進まぬ関係を、やきもきしながら見ていた私たちは、歯がゆい思いをすることになります」
(あははは・・確かに)
本人の横で、こんな話をしていても、ギムは聞いてはいない。
しかしマリアは、そんなギムを愛していた。
次回は、事件です!大事です!