EP9 冒険者学校④
テレサの授業です。
打ち上げパーティー!
式を終えた私たちと、マーメードの人たちと会を催した。
立食形式の飲み放題、食べ放題のお店に来ている。
トラブルの最中、一切口を挟まなかった、マーメード。私は、彼女たちを高く評価した。
「お見事でした雪姫様。見ていてスカッとしました」
マリリンさんが褒めてくれた!・・・でも、それギム。
おでこの眼鏡下ろして!
「まだ冒険者に対する考え方が、間違えているのが現状ですね」
サリーさんは、ため息交じりに言う。
冒険者は若者の憧れの職業だ。
TVなんかでも、冒険者を扱うモノは多く、その大概が、ヒーローモノのような扱いだ。
光あるところに影がある。どこの世も、稼げるのは一部。
ピラミッドの頂点付近の人たちだけ。
安定した職に就くのが良いが、若者は夢を見る。
私も若いが、半年間、ナマギルドを見ていると、悟ってしまう。
「雪姫さんは、迷い人なのですか?」
マリリンさんの質問。
この世界は、迷い人に対し優しい。
隠す必要はなく、こうして普通に尋ねるのも礼儀には反しない。
「そうなんだよね。びっくりだよ」
しかし、『得た者』と言う事は、余り伝えることはない。
「他の世界から、この世界の来るのって…困った事とかあります?」
「ん~トレイかな?」
この世界は、和式だ。当然ウォッシュレットはない。
記憶を失った私だが、なぜかこういう記憶はある。人間関係の記憶がないのだ。
「おトイレ?他の形もあるの?」
和式しか知らないと、洋式の発想は思いつかない。
「あるんだ。えっとね・・・こうな形で、腰かけて用を足すの」
「腰・・・かけて?ですって!?」
ルクスさんが食いついた。
私は詳しく説明する。
と言うか、入学式の打ち上げで、トイレの話か・・・・。
「椅子に座ってする感覚ですか?」
「お湯が洗浄してくれるなんて・・」
「跨いでしゃがまない?本当ですか?」
食いつきがいい。続々と、私に周りにはマーメードのメンバーが集まってくる。入れ食いだ!
いいアイデアはない。でも何とかならないものか?
これは女の子、共通の悩みだったようだ。
「あ!ポポ!ちょっといいですか?」
マリリンさんが、ギルドメンバーの1人を呼ぶ。
ポポさん。妖精族でルルと同じ機械技師だ。ギア族の面倒を見る1人で、発明家でもある。
ポポさんは、私の描いた絵を見て言う。
「これなら作れそうですね。雪姫様、もう少し詳しく造形と、機能について教えてください」
こうして、初の2ギルド共通作戦「プロジェクトWC」が発足した。
トイレの話だが、気楽に話せた。やっぱ、女の子ギルドっていいかも。
打ち上げパーティーは、親睦を深め大成功に終わる。
初等科の初授業の日が来た。
私はあえて、この授業に、テレサをぶつける。
ここで引いているようでは、この先はない。ヘマしても良い。間違ったことを教えなければ、どうにでもなる。
私はテレサに、自分の好きにやるように伝えてあった。
「みなさん・・・こんにちわ。えっと・・テレサです」
表情が硬い。一番前の席の子、怖がってる。
テレサもそれは分かっていた。目の前の子が泣き出しそうだ。
「あの・・あの・・・あ・・・」
テレサも泣き出しそうだ。・・・これは不味ったかな?
「テレサ、がんばれ」
テレサの肩から、リームが顔を出す。
普段は食事の時しか出てこないが、テレサのピンチに応援に出て来たのだ。
リームは聖霊だ。
ハイビスカスの花ビラに目が付いていて、ふかふか浮いている。
「テレサ、テレサ、がんばれ」
右の肩の上から、左の肩の上へと、移動を繰り返しながら、テレサを応援する。
「ありがとうリーム・・・そうだね、頑張る。頑張るよ」
テレサは、深呼吸をすると「講師のテレサです。よろしくお願いしみゃす」
噛んだが、しっかり言えた。
が、生徒の反応は・・・・
「先生!それ聖霊ですか?」
「可愛い!」
「聖霊さん、お名前は?」
リームに食いついた。
生徒たちは、テレサの周りに集まる。
41人に囲まれたテレサだが、動揺はしていない。
手でリームに触れると「この子は、私のお友達のリームです」と、しっかり子供たちに対応した。
「さぁ、リーム、私の生徒さんたちに御挨拶を」
リームは宙に高く浮かぶと、くるりと縦に回転。周りには沢山のハイビスカスの花が現れる。
「私はリーム、聖霊。テレサの生徒さんたち、よろしくね」
ハイビスカスの花は、宙を舞いながら消えて行った。
「先生スゲー」
「精霊とお友達なんて」
「素敵です!」
思わぬところで、テレサの株が上がる。
一般的に聖霊は、気まぐれで、人に懐くことは少ない。
至高の心の持ち主や、信頼のおける者以外の前には、姿すら現さない。『見れたら幸運』と言われるほど、お目に掛かるのは難しい存在だ。
教室の空気が変わる。
今まで疑念を持っていた少年少女は、テレサを尊敬の目で見ていた。
テレサが授業を開始する。
「皆さん、よい冒険者の条件をご存知ですか?」
テレサも良い感じに、力が抜けていた。
「良い冒険者は、必ず生きて帰ってきます。クエストに失敗しても、どんなに傷ついても、生きてギルドへ戻ってきます。命を大切にできる人が、いい冒険者です」
この後テレサは、命の大切さを懇々と語っていた。
良い授業だった。
次はダイルの初授業。
「ガオガオガオ」
「ダイル様は、こんにちわ。私がダイルです、と申しております」
「ガオガオガオ」
「ダイル様は、R-15の発言をなさいました。全文を割愛させていただきます」
子供相手に何を言ったんだか?
子供たちもダイルの姿に怯えることはなく、カウラちゃんの通訳にも何とかついてきていた。
学校はいいスタートが切れた。
トイレ話は、EPとして続きます。




