EP9 冒険者学校③
入学式で一悶着です。
覚書を交わし、私たちは、ギルド同士としても、提携をすることに成った。お互いに困った時に力を貸す。この程度の話だが、ルーランのギルド間では珍しいことだ。
ギルド同士は、基本関与し合わない。これはライバル意識が強いため。私はそんなこと、気にはしていない。マリリンさんもだ。で、今回の提携が実現した。
開校は来週に決まり、両ギルド内で、参加希望者の登録を受け付ける。リアちゃんリサーチでの予想数は初等科350人、実践科100人だ。
開校式は、午前に初等科。午後に実践科で行なう。
テレサは大勢の前で、壇上に立つことに成る。私の出した、お面禁止令に、悩んでいた。
そして開校式当日。
壇上にはテレサ、ダイル、クリスさん、ノームさんを中央に、両サイドには、それぞれのギルドメンバーが並ぶ。
親同伴で来ている子も多い。初等科だから、大目に見る。
が、冒険者に成ろうというものが、親同伴はない。
登録者は、初等科348人。リアちゃんのリサーチの凄さが出た。
348人+同伴者の親が約180人。
これだけの前で話をするのは、テレサは初めてだ。
「あ・・・あの・・・私は半魔人ですが、・・・えっと」
テレサの挨拶。しどろもどろ。でも構わない。今はしどろもどろでも、必ず慣れる。
私は平然と構えていた。が、親はそうではない。
1人の母親が壇上によじ登る。続いて2人の父親、2人の母親が続いた。
テレサの挨拶の最中にだ。
テレサは、こっちが気になり、挨拶を止める。
「トーマ、母親は任せたよ。女扱上手いとこ、見せてよね。男の方はサマンサ、追い返して」
トーマが母親の対応、サマンサが父親の対応。
私は、テレサに続けるように言う。
しどろもどろだが、書いてきた文は、何とか読み上げた。
続いて副理事のクリスさん。
先進代文明の遺物、ギア族。ギア族は数も多く、生活に溶け込んでいるので、認知された存在。クリスさんの時はスムーズに行く。
そして、クリスさんは教員型のギア族。
教える為のノウハウは、ばっちりだ。
続いて、うさぎの獣人ノームさん。
明るく元気一杯の彼女は、いい先生に成れる。
こっちでは、まだ親が揉めている。人数も増えていた。
そして、その人数はさらに増える事となる。
ダイルの挨拶。
獣人は見慣れているが、爬虫類は珍しい。
子を卵で産むワニの獣人は、ルーランではダイルだけだ。
ひきつった顔の親が、壇上に押し寄せた。会場からも、ヤジに似た声が飛び交う。
マーメードの皆さんは、特に慌ててはいない。対応を私たちに任せてくれている。
私はマイクを握った。
「え~~~壇上の皆さん。会場の皆さん、私がこの学校の企画をし、事実上の運営責任者の、雪姫です」
誰も聞いちゃいない。特に壇上の方の親。私は目で合図する。ブルックが動く。
ブルックは、壇上の机を叩き壊す。会場が静まり返った。
「やっと静かになった。話が出来そうだね」
私はゆっくりと話し出す。
「私たちが教えるのは、お遊戯じゃないんだよね。冒険者として、生き残る術。生きていくのに必要な知識と技術。その中で、偏見なんか、冒険者には要らない。
風評などに捕らわれることなく、自分の目で見て判断する能力。冒険者には絶対必須。
親のあなた達の持つ偏見なんか、子供たちに教えないでね。
偏見なんか持ってクエストに出たら、スグ死んじゃうから」
ここに来る子供たちは、親が冒険者ではない。
親が冒険者なら、子が後を継ぐときに、自分でノウハウは教える。
冒険者は稼げる。冒険者は自由だ。
偏った知識で、自分の子を冒険者にしようとしている親が大半だ。
甘い考えの子供と、緩い考えの親、ここで叩く。
「リアちゃん、教えてあげて」
マイクをリアちゃんに渡す。
「ルーランでの冒険者の死亡率は年間5.3%で、職業としてはダントツ1位です。2位の憲兵でも0.06%は、約100倍の高さです。
損傷率も高く、5年間冒険者を経験する人は、約40%の確率で、死に繋がりかねない、大きな怪我を受けています」
会場は静まり返る。が、こんなことは常識だ。
「冒険者の平均年収は1500Gと、一般職の800Gに比べ高くなっています。
しかし、約50%の冒険者は500Gと低く、15%は300Gと貧困に苦しんでいます。35%の冒険者だけが、高収入を得ています」
(1Gは1万円)
子供の手を引き、帰りだす親が出て来た。
「さらに冒険者の結婚率は、37%です。一般の方の97%に比べ、大きく低くなっています。原因は、不安定な収入と危険性にあります。
また、冒険者には保証もない為、老後に大きな不安が残っています」
続々と帰る。
「いいよ、そこまで」
私はリアちゃんを止める。
およそ、300人が帰ったかな?41人が残る。親は一人もいない。
「今リアちゃんが言った事は事実。だけどね、冒険者は、困っている人からクエストを受け、助けてあげる仕事なんだ。冒険者がいなければ、この世界は困ってしまうの。
危険を顧みず、体一つで立ち向かう。自分を信じ、仲間を信じ、決して諦めず、誰にも屈しない。それが冒険者。貴方たちを歓迎します!」
私は残った41人に祝辞を送る。
こうして、初等科の41人の入学が決まった。
350人なんか、受け入れられるはずないじゃん。
午後の実践科は、すでに覚悟のできている連中。
クエストにも出ている冒険者も居る。式はスムーズに進み、88人が入学した。
次回はテレサの付き人「聖霊リーム」の出番です。




