EP8 マーメードドルフィン①
このあたりから世界観を、はっきりさせていきたいと思います。
「マリア様、ギルド『マーメード ドルフィン』の方がお越しです」
私の部屋。待機していたマリアに、ギャリソンが伝える。
「あ、はい。すぐ行くと伝えてください」
マリアは、ジャージのジッパーを上まで上げ、身支度を整えた。
「マーメードって、他のギルド?何の用なのかな?」
私の疑問に、ギャリソンが答えた。
「はい。ヘッドハンティングでございます」
なんだと!
「マ、マリア、よそ行くの?うちに何位か不満でもあるの?」
慌てるさ。こうも堂々と引き抜きの話に乗る以上、マリアとしては、思う所があるはず。
「いえいえ、お話を聞くだけです。ちゃんと御断りをしますので、大丈夫です」
動く奴は、そう言う。本決まりになる迄は、「はい。さようなら。お世話になりました」とは言わない。
「マスター大丈夫ですよ。マリア様は、スノープリンセスを出ていくことはありません」
リアちゃんは、そう言うけどさ。
マリアは部屋から出て行った。
「雪姫様、ギルド間のヘッドハンティングは、頻繁に行われています。どこも有能な職員を欲しております。スノープリンセスでも、一般職員なら半年に1度。幹部ともなれば、1月1回程度のお話はあります」
そうなの?
「評価して頂き、足まで運んでくださる方に、礼儀として、話を聞いたうえで、お断りする。これが作法でございます」
そっか…良かったよ。
「マリア様に抜けられでもしたら、スノープリンセスは、大打撃でございます。移動の可能性がある場合は、同伴者を付け、先方様の出す条件以上の待遇を提示し、引き留めたりもします」
「はい。ギア族なら、プログラムの書き換えをしてでも、残ってもらいますね」
安心した。
「はい?はい。なるほど。分かりました。お伝えしましょう」
ギャリソンが、受付からの連絡を受ける。
「雪姫様、『ギルド ムーンライト』の方がお越しです」
「え?私?知らないよ、そこのギルド」
「はい、なんでも、雪姫様を引き抜きたいと。申しております」
「はい?」
「私ってギルドマスターだよね?ギルマスの引き抜きってあるの?」
社長をヘッドハンティングする・・聞いた事がない。乗っ取りじゃん、それ。
「聞いたことはございませんが、確かに頭を取れば、ルーランで一番のギルドをモノにできる。これは、意外な妙策ですな。気が付きませんでした」
おいおい、感心するところ?
「しかしながら、雪姫様に移動されては、少々困ります」
マリアが大打撃で、私は少々なの?
「リア、同伴して、雪姫様のフォローをお願いします。雪姫様はまだ、この手のルールには、不慣れでございますからな」
同伴者迄つけられた。
ギルド受付の横。
テーブルが置いて有り、フリースペースとなっている。
男が二人。
ドリンク飲んで、ニヤニヤしてる、軽そうなのが居た。
「お待たせしました。当ギルドの主『雪姫』です」
「同席させていただくリアです」
一応丁寧な礼をする。
「俺、ガイル。よろしくね」
「ムスクだよ。ヨロ」
片手を上げただけの、非礼な挨拶。
ガイルは、ストローを口に咥えたまま、話し出す。
「ねぇ雪姫ちゃん、一緒にやろうよ」
(馴れ馴れしい)
ムスクは身を乗り出し、私の顔の前で話す。
「うち来なよ。楽しいよ」
(顔、近い)
今度はストローを、リアちゃんに吹き付ける。
「機械人形なんかと一緒に居たら、笑われるよ」
(こいつ!!)
「そうそう、俺たちのギルドなら・・・」
「ストップ。そこまで。一応礼儀は知ってる。最後まで聞いて断るだったかな?
でもね、あんた達。私の前で、大事な友人の事、機械人形かとか言ったよね」
私の態度の急変に、相手も態度を変えて来た。
「それがどうした?」
「話は最後まで聞いてもらわないとね。こっちも、マスターからの伝言があるんだよ」
開き直りやがった。
「リアちゃん、戻るよ」
私は無視して席を立つ。
「あ、はい。マスター」
リアちゃんも続いた。
「待て、話は終わっていない!」
ガゼルが、リアちゃんの髪を引っ張る。
「ちょっと、放しなさい!」
と言った瞬間、ガゼルの体が宙に浮く。
「マスターは、話は終わりだとよ」
受付嬢のジェシカさんだ。ガゼルの襟を掴み、持ち上げていた。
「お帰りは、あちらね」
その横にはアイリーンさん。
「どすこい」
タタラ部長も出てきてくれた。周りに居た、冒険者たちも身構え、敵意を露わにしている。
ジェシカは、ガゼルを出口の方に放り投げる。
「覚えていやがれ!」
「只で済むと思うな!」
チンピラの捨て台詞を吐くと、二人は逃げるように去って行った。
「これで良かったんかい?」
遣っちゃったね感の漂うジェシカ。
「うん。ありがとう、みんな。みんなが来てくれなかったら、マリアが光子砲を撃ってたよ」
私の隣のテーブルでは、マリアとマーメードドルフィンの二人が話していた。
リアちゃんを侮辱されたマリアの、怒りに満ちたひきつる顔が見えていた。
「あれがギルドだとは・・」
「噂通り、酷いギルドですね」
マーメードドルフィンの二人も呆れている。
「マーメードドルフィンの、サリーです」
「同じくルクスです」
2人は私に礼をし、挨拶をしてくれた。
「お恥ずかしい所をお見せしちゃいました。主の『雪姫』です」
社交辞令的な挨拶だが、穏やかそうな2人だった。
2人は深く頭を下げ、戻って行った。
「リア?大丈夫ですか?」
「はい。マリア様。少し引っ張られただけなので、特に異常はありません」
「そういう問題じゃないよ。リアちゃん、お風呂行くよ。よく洗って消毒するよ」
リアちゃんは頷く。
「ジェシカさん、アイリーンさん、タタラ部長。冒険者のみんな!ありがとうね」
私はお礼を言う。みんなは手を振って答えてくれた。
「あいつ等さ、組合に入っていない、闇ギルドだよね」
「大人しく引っ込むと良いけど」
ジェシカとアイリーン。心配は的中する。
今回は、2つのギルドが出てきましたが、タイトルのマーメードドルフィンは、今後もストーリーにかかわってくるギルドです。




