EP6 出来なすぎる者①
キャラの濃さなら雪姫以上のギム回です^^
「おかえりなさいませ、雪姫様」
私は部屋へ戻る。部屋の前ではギャリソンが待っていてくれる。
「商店街の会長様、ミツクニ様がお待ちです」
部屋の中から聞こえる陽気な声。
気のいいおじいちゃん、と言ったところか。このあたりの商店街の会長をしている方だ。
私は、ギャリソンと部屋に入った。
今日は救援が多い。部屋の中には、リアちゃんと会長さんしかいない。
「お待たせしました」
会長は立ち上がると丁寧な礼をする。
「雪姫さん、今日は依頼ではなくな、お願いがあって来たんだ」
ミツクニは申し訳なさそうに話し出した。
「実はな・・・ギムなんだが、飲み干した瓶を、所かまず投げ捨てるんじゃ」
「え?」
「あああ、分かっておる、分かっておる。無理な相談だとは、重々承知しておるが、子供が足を取られてな、怪我をしてしまったのじゃ。
商店街としても、何も手を討たない訳・・・」
「怪我って?大怪我なの?」
私は子供の怪我の心配をする。
「いやいや、かすり傷。全然心配はいらん」
少し安堵した。そしてギムの行為に少し腹が立った。
「ギム様に瓶をお捨てに成れとは、少々・・いや、大分無理な話でございますな」
「え?」
「今、マリア様が教育をなさっていますが、瓶を捨てるなどと言う、高度なことは、まだ・・・」
「ええ?・・あのさ瓶を捨てるだけだよ。いくらギムだって、そのくらいなら」
本気で思った。空瓶をポイ捨てしちゃいけないことぐらい・・・と。
「マスター、ギム様のお屋敷、お忘れですか?」
(あ~~~~~~凄い説得力。あいつには無理だ)
「やはり無理じゃよな。ミミズに逆立ちさせる方が簡単じゃよな・・」
(ギムの評価って・・・とは言え、放置はできない。子供が怪我してるんだ)
「ミツクニ様、善処いたします。確かにポイ捨ては、マナー違反です。安全面を考えれば犯罪です。何とかします。して見せます」
「本当かね!無理だとは思うが、よろしくお願いしますじゃ」
私の手を取り、涙を流してって、そんな喜ばしい事か?
「今日は宴会無し!みんなが揃ったら会議だよ!」
対策会議だ!
全員が救援から戻ったのは、22:00を超えていた。
でも、この案件、何としてもギムに教え込まねば。空瓶のポイ捨て不可。
「お疲れの所、遅くまでごめんね。でも結構重要案件なんだ」
今日は1日中、動き回っていた皆だ。疲れているにも関わらず、ギム以外は真剣な顔で会議に臨んでくれた。
「議題が『ギムの街での瓶のポイ捨て』」
一斉に肩がうなだれ、頭が下がる。
「マスター宜しいでしょうか?ギムにとって、飲み干した瓶には、何の価値も持ちません。価値の無い物には、特に無関心です。それを、わざわざゴミ箱に捨てろと言うのは・・」
ギムを一番よく知るマリア。
「ガオガオガオ」
「ドイル様は、ミミズは逆立ちしません、と申しております」
「動物園は、檻の中にゴミ箱を設置していまんからね」
眼鏡をクィっと持ち上げるアーロン君。
(皆の言いたいこと、痛いほどわかるよ)
「でもね、子供が怪我しちゃってるんだ」
「それは不味いな」
「子供に怪我をさせては行けませんね」
(でしょ、ブルックやトーマもそう思うよね)
皆が頭を抱えていた。
ギムと言う男を良く知る、みんなだから、余計に困難さが分かっていた。
「ん?お前らどうした?何悩んでる?困ったときは、酒でも飲め」
ギム・・お前だよ。お前のことで悩んでいるんだよ。
「分かりました。やってみましょう。最近よく言う事を聞いてくれるので、言い聞かせてみます」
マリアの愛の力ってやつだね。
「では、最近頑張った成果からお見せします」
マリアはギムの座る椅子の脇にしゃがむ。
「ギム、皆さんに特訓の成果をお見せして。ね、お願い」
マリアは、ギムに優しく言うと、膝に手を載せた。
「お?遂に見せる時が来たのか。お前ら、度肝ぬかすなよ」
ギムは立ち上がる。
「ギム、行くわよ!お座り!」
おい・・・。
ギムは座る。どうだと言う顔をする。
皆は驚きの声を上げる。
(おいおい、なんだそのどや顔は?みんなもなんで驚く?)
「いいギム?今度のは難しいわよ。よく考えるのよ」
マリアはギムの目を見つめる。
「ギム!お手!」
マリアの差し出す手を、見つめるギム。
そして何かを思いついたように、マリアの手の平に、自分の手を置いた。
「おおおおおおおおおお」
驚愕の声が上がる。
(待て待て、なんだその、やり遂げました感に満ちたの顔は?)
「よくやったわギム。偉いわよ。ご褒美のお酒よ」
マリアはギムに、小さな酒瓶を渡す。喜んで受け取るギム。
「驚いたな。ギムがここまで、言う事を聞くとは」
ブルックは驚く。
「ええ、酒と剣にしか興味を示さないギムが、人のいう事を聞くとは思えませんでしたね」
アーロン君も?
「ではマスター」
マリアは私を見た。私は頷く。
「いいギム?今飲んだお酒の瓶。空よね?」
「ああ、もう無くなった。もっとくれるのか?」
「それを、捨てられれば、もう1本上げるわ」
(マリア上手い!条件反射でも何でもいいから、覚えさせて!)
「捨てる?任せろ」
お?もしかして?
「これを斬り捨てれば、また貰えるんだな?」
違う!!!
「違うのよギム。ごみ箱に捨てるのよ」
マリアは、諭すような言い方で、ゴミ箱を指さす。
「ゴミ箱も斬り捨てるのか?」
・・・ダメだ。これダメだ。
「申し訳ありません、マスター。やはりギムには無理なようです」
マリアは諦めた。
こいつには無理なのか?
「あ、あの。宜しいでしょうか?」
無口なテレサが手を上げる。
「空の瓶に価値が無いから、投げ捨ててしまうので、価値を付けてあげれば・・・」
「そうか・・それはいい手ですね」
トーマがポンと、手を叩く。
頷いたマリア。
「ねぇギム?これってもう、いらないわよね?」
「ああ、酒が残っていないからな」
「でも、この瓶を3本、マスターの所へ持ってくれば、新しいお酒を1本もらえるわよ」
「なんだと!!!マジか?雪姫!本当か?」
食いついた。
「ええ、3本空の瓶を持ってくればね」
本当は10本にしたいが、ギムは10を数えられるか怪しい。5でも不安だ。
「雪姫!一生ついて行くからな」
マリアに言ってやれよ。
こうして、ギムのポイ捨ては無くなった。
後日、ミツクニさんから聞いた。商店街での私の評価が、爆上がりしたと。
「雪姫!3本集めたぞ!酒をくれ!」
夜中でも、深夜でも、早朝でも、ノックもせずに、私の寝室に飛び込んでくるギム。
お酒交換係は、マリアと交代。
ギムの行きつく先はマリア。これデフォです。




