表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/226

EP1 出会い①。

新シリーズに挑戦します。

今作は、1部終了時に完結の形を取ります。



「なんで?なんで?なんでなの?」

少女は呪文のように繰り返しながら、森の中を走っていた。


少女を追う影。複数の狼が追走していた。


道はない。

時折立ち止まり、左右を、進む方向を確認する。

オオカミとの距離は、詰まる一方だ。


もうだめ・・・走り続ける少女は、大きな樹の幹の裏側に隠れる。

少女一人隠れるには、十分すぎるほど大きなの樹。


両手で口を押え息を殺す。

目を固くつぶり、見つからないことを祈る。


   かさ・・・・

落ち葉を踏みつける音がする。

少女は薄目を開けた。囲まれている。



ほんの数時間前まで、友人と山に遊びに来ていた。

湖の湖畔でバーベキューをやる準備に追われ、忙しく動いていた。

枯れ枝を拾おうとしたとき、後ろに黒い空間が現れ、あっという間に黒い空間に飲み込まれた。

気が付いた時は、この森に居た。



森は、自分の居た世界ではない事に、すぐに気が付く。

見たことの無い花。ただの花ではない。喋る花。

そして、少女に襲い掛かろうとしているオオカミは首が3つある。


  「嫌だ。こんなところで、訳も分からず死にたくない」

少女の願いを、オオカミは聞いてはくれそうにない。

口からヨダレを垂らし、襲い掛かる気、満々だ。


   「どうする?どうすれば・・・」

残された僅かな時間を、少女は助かる術を考える時間に充てる。


   「戦う・・戦うしかない」

唇をかみしめ、目を見開き、オオカミに対峙する覚悟を決めた。


右手が何かに当る。

木の棒だ。

「神の恵み。私に生きろとの啓示だ」

少女は幹の陰から出る。

7頭。首が全部で21のオオカミに囲まれていた。


少女の覚悟。気迫はオオカミに伝わる。

前に掛かっていた体重は、若干、後ろに戻る。

「さぁ、こい。JKの肉、楽には食わせない」


少女は気丈にも、半歩前に出た。

が、オオカミは引かない。いったんは気迫に押されたが、本能が訴える。

   「美味しい餌だ」と。


1頭が、少女の後ろ、死角へ回り込み、飛びかかってきた。

少女は、その気配に振り向く。


オオカミが空中で、もがいている。

・・・違う。掴まれているのだ。

大きな腕が、幹の陰から延び、3つある頭の、真ん中を鷲掴みにしている。

  

「キャン!」

真ん中の頭が握りつぶされた。

凄い力・・・・


幹の陰から出て来たのも、オオカミだ。

2mはある狼。後ろ足で立ち、服を着たデカい狼。

「ダメだ・・・・私、死ぬ」

少女は、その顔を見上げると、悟った。これは助からないと。



  「もう大丈夫だ。頑張ったな。偉いぞ」

狼の大きな手は、少女の頭を撫でる。

そして、手を狼たちに向け、何にかを呟く。


!?狼たちは石に成った。

「これは魔法。石化魔法だ」


(・・・驚くもんか。花が喋るし、首が3つある狼も居る。服を着て喋って、魔法をつか・・・)

少女の意識は飛んだ。





「いいにおい・・・・」

自分が寝ていることが分かる。


鼻歌と小気味のいい包丁の音。トントントントン、このリズムが、また眠りへと引き込もうとする。が・・・睡魔に食い気が勝った。

少女は飛び起きる。


「ここは?木のベット。木の壁。木のテーブルに椅子。・・・・・山小屋。だよね」

少女はベットから降りると、あたりを見回す。

「夢・・か。だよね。あ、あはははは。夢だ夢」


「お?起きたか?」

ブリキ人形のような動きで、首が声の方向を向く。

夢じゃなかった。エプロン付けたオオカミが料理してた。



「腹減ったろ。今できるからな。先にこれをテーブルに運んでくれるか?」

お皿が2枚。料理が乗っていた。

目玉焼きに、オムレツ。スクランブルエッグにゆで卵。

   蛇かお前?


少女は皿をテーブルに運ぶ。対面に並ぶフォークとナイフ。

少女は、皿をそれぞれの適切な位置に置く。


「すまんな。俺はこれしか料理が出来んが、後で出来る娘が来るから、明日は真面なものが食えるぞ」

エプロンを付けたオオカミは、2つのカップを持って来た。卵スープだ。


少女は、座れと即され、椅子に掛けた。

   いいにおい・・・・バターの香りが食欲をそそる。

「まずは食え。聞きたいことはそれからだ」

   御意。確かにそうだ。今は食べる。


少女は、オムレツを口にした。

  !!!美味しい!

結構みっともなく、料理に食らいつく。皿を手に持ち口を当て、フォークで掻っ込む。


変な世界に来て、バーベキューを食べ損ねたばかりか、オオカミ相手に激走。お腹も減る。


「うまそうに食いやがるな。これも食うか?」

オオカミは、手つかずの自分の皿を差し出す。

「遠慮なんかするなよ」

ごちです。頂き。玉子って、こんなに美味しいんだ。


最後にスープを飲む。大分落ち着いた。




「お前は、この世界で言う、迷い人。他の世界からの転移者と言う事になる」

分かっていた。たぶんそうではないか・・・と。

「帰る方法って・・・」

少女は、淡い期待を胸に問う。

「確立した手段はない。が、ゼロではない」

だよね‥。うん、覚悟してた。帰れないは、お約束。


「毎年2人前後が、この世界に迷い人として転移してくる。そして、数10年に1人の割合で、突然消える。帰れたのかは分からないが、1件だけ報告がある」

???

「戻って、戻ってきた奴の話だ」

「それって、1回戻ったのに、また来ちゃった、と言う事?」

「ああ。そうだ。そいつが言うにはな、前の世界から消えた瞬間に戻るらしい。つまり、ここで何十年過ごそうと、戻るときは、前の世界の消えた時間。穴に引き込まれる直前、と言う事だ」

それって、結構嬉しい希望だ。


「真偽のほどは分からないが、迷い人は、おおむね年を取らん。あながちガセではないと思う」

ここで私は「ハッ!」とした。お礼を言っていない。

助けてもらい、こうして食事までご馳走に成っている。


「あの、ありがとうございます」

突然、会話の流れを無視した謝礼。

「気にするな」

狼の顔は、やさしく微笑む。


「次に大事な事だ。自己紹介だ。俺はマックス。見た目通り、獣人だ」

握った手で、親指を立て自分に向けた。

「私は・・・私・・・あれ?名前が思い出せない」

少女はパニックに成る。自分の名前が思い出せない。名前だけではない。親の顔、友人の顔、学校の名前・・・。


「落ち着け。迷い人が記憶をなくすというのは、珍しい話ではない」

マックスは立ち上がり、少女の肩を抑える。

「私・・・誰?」

少女はマックスに、落ち着くよう即される。


「迷い人には2通りある。何かを失い、何かを得る者と、何も失わず、何も得ない者。

殆どは後者だが、稀に前者が居る。お前は、得た者。魔導士・・と言う事だ」

魔導士?


「魔法使いとも言うが、迷い人の魔導士は、強力な魔法を身に着けるケースが多い」

私が?魔法を?

「さっきのオオカミを石に変えたような?」

マックスは頷いた。


「まぁ、色々覚えなくてはないこともある。だが今、最優先でやることは、風呂に入ることだ」

「お、お風呂?」

少女としては聞きたいことが沢山ある。最優先が風呂と言うのは・・・。


「さっき、お前を見つけた時、撫でたろう。あれな、トリプルヘッドを握りつぶした手だった。白い髪が真っ赤だ」

オオカミの頭を握りつぶした、あの手か?あの手で撫でたのか?


「風呂で洗い流してこい。俺が流してやってもいいぞ」

目がやらしい。

「俺は獣人だ。人間の裸なんか見ても、何も思わん」

・・まぁ、確かに。犬にスカートの中を覗かれても気にはならない。

「どうだ?一緒の入るか?隅々まで流してやるぞ」

気にはならないが、魂が拒否っている気がした。









1話が5000文字程度に慣れていたせいで、半分だと、なんか感覚が・・・。

でも、2000文字ぐらいの方が、読みやすいかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ