首くるくるモードの小さいけもの耳ろぼっと
「もう。愛想がつきました。私は実家に帰らさせていただきます」
けもの耳ろぼっとは言った。
「なんだよそれ…」僕は食卓で、突然けもの耳ろぼっとに言われた。
「ぼっちゃんが、ピーマンを食べてくれないからです。愛想がつきました…」
「ピーマンは嫌いなんだよ。苦いし… 近所のお兄ちゃんから聞いたことがあるんだけど、
子供は苦いものを毒だと思ってしまうから、苦い食べ物がダメなんだって。
大人になったら食べることができるよ…
君が食べてよ…」
「いいえ。ぼっちゃんのために作ったのです。私のピーマンは皿にありませんよ…」
ろぼっとは言い訳をする。
「最初から皿になかったじゃないか…」僕は抗議する。
「作っている時に味見をしたからいいのです。それにピーマンを食べると体温が2度上昇してしまいます。私はピーマンは苦手なのです」
「君もかよ… だったら食卓に出さないほうがいいじゃないか。ピーマン」
「だめです。食べてください。食べないと自爆しますよ…」
「冗談を言うの?」
「いいえ。リチウムバッテリーを積んでいますので、衝撃を与えるとか、で爆発させます…」
ここに危険なろぼっとがいるよ。
「じゃあ。爆発させてみたら…」
「そうですか。じゃあ。やります。中止は認められません…3.2.1...」
煙が出てきた。
「おい。なんだよ… 煙。煙…」
「爆発しました。大災害が起きました。私の中で…」
「何が燃えたんだよ…」僕は聞いた。
「紙テープが1つ燃えました。バージョンが古いやつです」
「影響ないじゃん…」
「さて。ピーマンをどうしても食べてくれないのですか?」
「できるだけ… 食べたくない…」
「そうですか。わがままですね。強制的に食べさせます。口を開けてください…」
「わかった。そんなに言うなら… 水を頂戴。飲み込むから…」
「はい。お水」
僕はピーマンをあまり噛まないで飲み込んだ。お皿の上のピーマンはなくなった。
「はい。よくできました。今後はなるべくピーマンを出さないようにします」
「そう…」
「ところで。今日私は実家に帰らさせていただきます」
「なんだよ。まださっきのピーマンをひきずっているのかよ…」
「そうではありません。先日の地震で耳を出すためのモーターの軸の取り付けが1mm曲がったのです。
これは重要なことです。それと研修があるのです。私は3日間留守にしますが、代わりのろぼっとが来ます」
「なんだよ。そういうことかよ… じゃあピーマンの話は?」
「それは関係ありませんよ」
そうなのか。
ぴんぽーん。家のチャイムが鳴った。
「誰か来たよ…」
「ああ。きっと私の代わりのろぼっとですね」
けもの耳ろぼっとは、玄関へと歩いていった。
「紹介します。代わりのろぼっとです」
ちょっと小柄なろぼっとを紹介された。
「こんにちは。私は3日間お世話をするろぼっとです。ちなみに設定では9歳です。
身長は133.3cm。体重は33.3kgの設定です」
「本当は高密度バッテリーを2つ積んでいるので、体重は93.3kgですよ」
けもの耳ろぼっとは体重をばらした。バッテリー1つが30kgらしい。本体は33.3kg。
「ひどい。こうしてやる…」小さいけもの耳ろぼっとは、首を一方方向に何回も回転させだした。
こわいよ。首がまわっているよ… ひょっとしてこれが首くるくる。
「わー。やめて。わかったから。怖いよ…」
「じゃあ。やめます。ちなみに私の機嫌を損ねたらこうなります。
私にピーマンを強制的に食べさせようとしたらこうなります。
一緒にお風呂に入ってくれないとこうなります。
夜は抱っこして、抱きしめて寝てくれないとこうなります」
とちびっこのけもの耳ろぼっとは言った。
「いちおう説明しておきます。ボタンを押すと2つのけもの耳が出てきます。
ネコミミと狐ミミです。トリモードはありません。
私より機能が1つ少ない子にしました」
「なんで。機能が1つ少ない子にしたの…」僕は聞いてみた。
「なんとなくです。私より機能が多ければ、小さい子のほうを気に入ってしまうと考えました」
「そうなんだ。じゃあためしに、ボタンを押すよ…」
がちゃん。がちゃ。すばやくミミが引っ込んで新しいのが出てきた。
にゅー。ではない。
小さいけもの耳ろぼっとがしゃべりだした。「耳の制御に紙テープは使ってません。最新の紙カードです。つまりマークシート。鉛筆で何番を塗るやつです。自分で好きにプログラミングできますよ…」
「マークシートかよ…今の時代ではめったに使わないよ…」なんだよ。この子も変な子かよ…
「じゃあ。あとはよろしく。ちなみにこの子の料理は私よりうまいですよ…」
と言い残してけもの耳ろぼっとは出て行った。
3日。どうなるんだろう。
さて、学校へ行こう。学校が片付いたからだ。
☆☆☆
学校が終わり家へ帰宅する。
小さいけもの耳ろぼっとがエプロンをして掃除をしていた。
エプロンはサイズが合っていなくて大人用のものだった。
びたん。
エプロンのすそを踏んで、前に転ぶ、けもの耳ろぼっと。
涙目でこっちを見ている…「転んだので起こしてください」ろぼっとが手を差し出してくる。
僕はけもの耳ろぼっとの腰に手をあてて起こす。
「重いよ…」僕は高密度バッテリーのせいだと思った。
「ありがとう…」ろぼっとはお礼を言った。
「君のバッテリーには反重力装置はついてないの?」疑問に思ったので聞いた。
「私のバッテリーに反重力装置はついているけどOFFにしてます。バッテリー1つにつき50kgの浮力があるので、機能をONにすると浮かんでしまうのです。
天井に頭がごつんとぶつかります。タンコブがいくつもできます。それでもいいですか?」
「いや…」それを聞いても僕はあまり驚かなかった。
小さいけもの耳ろぼっとが台所から何かを持ってきた。
「はい。おやつです。手作りです。手作りパフェです」
「パフェかよ…」喫茶店で見るようなパフェがあった。
しかも地震後で品薄なのに、よくこんなの作れたな…
後で聞いてみると、備蓄していた缶詰と賞味期限無限の生クリームを使ったみたいだった。
☆☆☆
夕食の時間。そういえば買い物は行っていなかった。スーパーやコンビニに行っても地震後なので、食糧不足なんだろう。
「今日はラーメンです」
「そう。ラーメン。ちょうど食べたかったんだ…」僕はカップラーメンか袋ラーメンかなと思った。
「トリの皮から油をとり、魚介から醤油ベースのスープを作り、名店の味を再現しました」
本格的だった。ラーメン店で出てくるようなラーメンだった。
「なんでこんなのが作れるんだよ… 品薄なのに…」
ラーメンを食べてみたらすごくうまかった。これだとお店が出せそうと思った。
このラーメンも備蓄品で作ったものらしいことがわかった。賞味期限無限の麺。乾燥トリの皮。瓶入りメンマ。100年は持つ密閉パック入り卵。同じく100年持つチャーシューなどなど…
☆☆☆
「さてとお風呂一緒に入りましょう。私は防水機能が完璧なのでお風呂に一緒できます。
さあ。脱いでください。はあはあ…」
なんか興奮しているろぼっと。
「先に入っておいでよ…」僕はろぼっとに言った。
「わかりました。じゃあ首くるくるしますよ…寝ている横で…」
やっぱりこのろぼっと変だ。
「わ。わかったよ。一緒に入ればいいんでしょ」僕は服を脱ぎ前を隠す。
「じゃあ。ボタンを長押ししてください」ろぼっとは言う。
僕は言われたままボタンを長押しした。するとけもの耳は引っ込んで、耳と尻尾の穴が閉じた。
「耳がなくなったよ…」僕は人間の頭のようになったろぼっとの頭を見て言う。
お風呂場。
「シャンプーハットは使いますか?」頭を洗うのに使うか聞かれた。
「使わないよ。もう卒業したよ…」
「そうですか。じゃあ私が洗ってあげます。拒否したら首くるくるです…」
ろぼっとは自らの体にボディソープをつけて、僕にすりすりしてきた。
「うわぁ。何するんだよ…」僕はくっついてきたろぼっとに言う。
「私はスポンジの代わりです。拒否はできません」
…
「はいはい」僕はあきらめて言いなりにした。
髪も洗ってもらった。気持ちよかった。
「先に湯船に入ってください」とけもの耳ろぼっと。
「うん。じゃあ」と湯船にはいる。ふー。いい湯だ。
ろぼっとは湯船に入ってきた。「なんで入ってくるの…」
「ほら。足の間に入るので場所をあけてください」
湯船の中で抱きしめる感じで密着する。ろぼっとは僕の両足の間にすっぽり入っている。
ぎゅう。ろぼっとは僕にもたれかかってきた。
ぎゅう。
ぎゅう。
「重いよ…」
「そうですか」
ぎゅう。ぎゅう。
「だから重いって」
「わかりました」
ぎゅう。さらに密着してくる。
なんなのこの子。
「もう。出るよ…」
「あと60000数えたら…」小さいろぼっとは言った。
「長いよ…」
ろぼっとは、1秒ごとに1000、2000と数え始めた。
「60000ミリ秒すぎました。出ます」ミリ秒かよ。後で調べたら1秒の千分の一だった。
お風呂後。
僕は体をふいて、ドライヤーで髪を乾かしていると、ろぼっとは自分で自動乾燥機能を使って乾かしていた。いいなぁ。
「テレビ番組を見ましょう… ソファに座ってください」小さいけもの耳ろぼっとは言った。
僕はソファに座る。小さいけもの耳ろぼっとは案の定。僕の足の間にもぐりこんできて、座った。
ぎゅう。ろぼっとは僕にもたれかかってきた。
「重いよ…」
「そうですか…」
ぎゅう。
僕は何も言わずにテレビ番組を探した。動物が映っていた。
そうだ。僕はろぼっとのボタンを押した。
がちゃ。狐耳が出てきた。僕は頭の上に手のひらをぽんと乗せた。
「んーん」ろぼっとは気持ちよさそうに言う。
微妙にペットみたいなところがある。
☆☆☆
寝る時間。
けもの耳ろぼっとは床に座ってから「お尻のところにある高密度バッテリーを1つ外して、こっちの簡易バッテリーに入れ替えて」と言ってきた。そして入れ替えが終わると逆側もと言った。
やらないと首くるくる。と言ってたので仕方がなくやった。バッテリーはくそ重かった。
「軽くなったのだ。えーい」と口調も軽くなり、僕の膝の上に座ってきた。
「あ。軽い…」30kgかあっても40kgぐらい。
「添い寝。と抱っこたのむ」と小さいロボットは言った。
「はいはい」僕は狐耳をなでて、狐の尻尾をふかふかしながら、ろぼっとを抱っこして寝ることにした。
小動物のような感じになっている小さいけもの耳ろぼっと。
本物の狐を抱いているかのようにも思えた。




