停電とけもの耳ろぼっと(1)
ゆさゆさ。ゆさゆさ。体がゆれる。
「おはよう」
けもの耳ろぼっとが起こしてくれた。
僕は居間に行き、テレビをつけようとした。
「まだ。停電?」僕は電気が来ていないのに気が付いた。
「そうですね。まだ電気は来ていません。水も止まってます。ガスはまだ来ていますが…」
「ごはんはどうしよう…」
「油揚げ入りの卵焼きとか、おかか入りの卵焼きとか、かつおぶしの醤油づけ入りの卵焼きなら作れますが… いちおうごはんも炊飯器の中に入ってますが…」
「そうなんだ。じゃあごはんと、卵焼きでいいや…」
僕はけもの耳ろぼっとからごはんをもらう。
ごはんは炊けてなかった。水にひたった生米だった。
僕はけもの耳ろぼっとをにらむ。
「そういえば、人は米を生では食べないんでしたね…」
「そういえばじゃないよ…君は生で食べるの?」僕はつっかかる。
「トリは『あわ』とか『ひえ』をくちばしでついばんで生で食べますよ。炊いたりはしませんよ…」
「まあ。そうだけど…」僕はごはんをけもの耳ろぼっとに返した。
「冗談です。パック式のごはんをチンしておきました…」
と、けもの耳ろぼっとがパック式のごはんを取り出す。
「あちち」結構ほかほか。
「実は簡易レンジ機能がありまして、私のお腹の中に入れておくと、2分で温まります。一度に2つ入りますよ…」
そうですか。結構便利だ。先に言えばいいのに…
さっきのごはん茶碗にご飯をあけて、僕の前に置いてくれる。
「ありがとう」いちおうお礼を言う。
食後携帯電話を取り出して使おうとした。
電源が入らなかった。充電していなかったみたいだ。
「じゃあ。ボタンを押してネコミミモードにしてください…」けもの耳ろぼっとが言う。
僕はボタンを押した。
にゅー。羽が引っ込み、ネコミミと尻尾が出てきた。
「何か機能があるの?」
「そうですね。私の尻尾は今2メートルあります。尻尾の先を持って、私の目を見てください。
尻尾を動かして、目が光ったらそこで、そのまま持っていてください…」
よくわからないけど…
僕は長い尻尾の先端を持って、尻尾を動かした。
上のほうに持ち上げたら、目が光った。そして光ったところで
「えーと。昨日の夜発生した地震による影響で停電はまだ続いています。停電が復旧した地区はまだありません…」という声が聞こえる。
「ラジオ?」僕はろぼっとに聞いた。
「そうですよ。非常時にはラジオにもなりますよ… 目の光がインジケータになってます。電波の強弱を目の光で知らせますよ…」
そうなんだ。いろいろ便利。チンする機能もあったり、光る機能もあったり。
「ところで電気が来ていないと、君が困るんじゃないの? ろぼっとだから充電できないよ…」
飲食をすれば多少は充電されますが… と言っていたが…
「昨年。白い色でも太陽光発電ができるシステムが開発されたのを知ってますか?」
「あ。ひょっとして、トリモードになると、羽で充電ができるの?」
「いえ。できませんよ…」
「なんだ。できないのかよ…」
なんでその話をするんだよと僕は思った。
「私をメンテナンスしてくれるセンターに、太陽光発電があります。そこでバッテリーを充電できるんですよ…
ビルの壁がパネルになってます。もし私のバッテリーがつきたら、おんぶして運んでくれますか?」
「えー重いから無理だよ…」
「そうですか。残念です。さきほどのごはんをチンしたことによって電力が残り2%です」
「なんだよ… だったらご飯はいらないって言ってたのに…」
「じゃあ。おんぶのじゅんびを…」けもの耳ろぼっとは、僕の背中のほうに回って、背中にもたれかかる。
「重い。かなり重いよ。つぶれるよ…」
「バッテリーが0%になりました…」
僕はバッテリーが0になったと聞いて、けもの耳ろぼっとに言った。
「おい。大丈夫か。お。重い… ずっしりくる」けもの耳ろぼっとの重さを僕は支えきれなくなる。
「バッテリーが2個めのに切り替わりました。残りは99%です。あと8時間は持ちます…」
という自動アナウンスの声がろぼっとから聞こえた。
「なんだよ。バッテリーの2つ目はまだ電力があるのかよ… ほらどいてよ… 重いから…」
「ちっ。ばれましたか。せっかくおんぶしてもらおうと思ったのに…」
けもの耳ろぼっとは立ち上がる。
「もっと軽かったらおんぶしてあげる…」
「そうですか。バッテリーを2つ外せば40kgです。結局バッテリーを持って行かないとだめなので60kgですが…」
子供には60kgのものをおんぶするのは無理と伝えた。40kgでも持ち上げるのがやっと。
「ねえ。今のうちに空になったバッテリーを充電済みのものに交換してもらいに、センターへ行って来たら?」僕はろぼっとに言う。
「そうですね。では行ってきて充電済みのものに交換してもらいます」
けもの耳ろぼっとは出かけていった。
☆☆☆
「今戻りました。戻りましたがお伝えすることがあります…」
けもの耳ろぼっとがこっちを見ている。
「何? なんかあるの? もしかしてバッテリーがなかったとか?」
「いえ。ありました。超高密度バッテリー2つが… なので2つとも交換してきました」
「なんだよ。あのくそ重いバッテリーかよ…」
「そうです。でも問題がありまして、きちんと充電されてなかったみたいで。バッテリー2つで本当に残り12%の電力です。おんぶしてくれますか?」
「無理だよ…」僕は答える。でもろぼっとは僕の背後にまわろうとする。
「さあさあ。背中を…」
「だめだって…」
「さあさあ。背中を…」
「だから…」
ろぼっとは、右から背後に回り込むとみせかけて、左から背後に回り込んだ。
そして、背中にぴとっとくっつく。
「じゃあ。おんぶお願いします」ろぼっとは足を浮かせた。
「だめ。つぶれる…ってあれ軽い…」ろぼっとは完全に足を浮かせて僕がおんぶしていた。
軽かった。
「超高密度バッテリーは重すぎて人気がなかったんですよ。なので改良されてました。
反重力制御装置が入っているのですよ…
バッテリーは1つ40kgですが、50kg分の浮力が発生するようになりました。つまりバッテリー2つ入れているので、100kg軽くなります。なので今は私の重量が20kgしかありませんよ…」
「なんだよ… 先に言ってよ…」
おんぶしたまま降りようとしなかった。
「じゃあ。おんぶでセンターまでお願いしますね…」
「自分で歩いて行けばいいじゃないか…」
超高密度バッテリーだから、きっとセンターまで歩いて行ってももつだろう。
「いえ。坊ちゃんにおんぶをしてもらいたいのです。もししてもらえなかったら自爆しますよ…」
「自爆できるの?」
「冗談を言って、自分でつっこみをするとかですが…」
……
わかったよ。おんぶしていけばいいんでしょ。
僕は、けもの耳ろぼっとであるネコミミろぼっと。メイド服着用をおんぶして家を出た。
「ちなみに、ちょっと急いだほうがいいですよ… バッテリーがつきると重たくなりますよ…」
「げっ」僕はいそいで歩くことにした。
☆☆☆
センターについてバッテリーを交換してもらった。
「じゃあ。おんぶお願いしますね…」けもの耳ろぼっとは僕の背中に乗ってきた。
「重いよ…」
今度は重かった。
「だめですか? 超高密度バッテリーはもうなかったのです。普通のバッテリーですよ…」
「だめだってば…」
「じゃあ。坊ちゃんをおんぶして帰りますか? それともお姫様抱っこしますか?」
「いいよ。恥ずかしいから…」
「ネコミミメイドに抱っこされるのはいやですか?」
「目だつから恥ずかしいよ…」
「そうですか。じゃあ普通に歩いて帰りましょう…」
まだ。停電は続いているが、けもの耳ろぼっとと手をつないで帰った。




