ねこまたになったけもの耳ろぼっと
ゆさゆさ。ゆさゆさ。
体がゆさぶられる。
「おはよう」
『けもの耳ろぼっと』は僕を起こしてくれる。
えーと。狐ミミモードだ。今日はどれにする。僕はろぼっとのボタンを押した。
にゅー。と狐ミミと尻尾がろぼっとの中にひっこんで、代わりにネコミミと尻尾が出てきた。
「ごはんつくるにゃー」
語尾が変わっていた。
朝ごはん。油揚げの味噌汁に、ツナ入りサンドイッチだった。
味噌汁とサンドイッチは合わないと思うんだけど…
「学校の時間…」ろぼっとは僕に言う。
「行ってくる…」
☆☆☆
僕は学校から帰ってくると、エプロンを付けたネコミミろぼっとが掃除をしていた。
「買い物いってくる」ろぼっとは僕の横を通って行った。あれ?
「ねえ。尻尾」後姿をみると尻尾が二つある。
「なんでしょうか」
「尻尾が二つあるんだけど」
「ああ。これですか。たまに割れて2つになるんですよ…」
そうですか。変なろぼっとだ。
☆☆☆
今日の夕食は、ニシン。煮物。煮豆。肉。だった。なんか『に』から始まる料理ばかり。
☆☆☆
朝。
「おはよう」
僕は寝起きに『けもの耳ろぼっと』のお尻を見た。尻尾は普通。1つになっていた。
「今日は尻尾。1つだね…」
「昨日の夜。尻尾が1つ取れて落ちた」
「落ちるの?」
「冗談。ほんとはくっついて一つになった」
「なんだ。ほんとに尻尾が取れたかと思った…」
「ごはんつくる」
『けもの耳ろぼっと』は部屋から出て行った。
朝ごはんの献立は、切れていないうどんだった。どんぶりの中の麺が全部つながっていた。
☆☆☆
今日は土曜日。僕は『けもの耳ろぼっと』が一日なにをしているか観察してみることにした。
『けもの耳ろぼっと』はテレビのスイッチをONにした。そして、テレビの前に座った。
僕は『けもの耳ろぼっと』に問いかけた。「ねえ面白い?」反応がない。
『けもの耳ろぼっと』はスリープモードになっていた。
そして番組が終わってCMになると自動的に起きた。CMをじっと見る。
CMが終わるとスリープモードになった。
「なんだよ。CMだけ見ているのかよ…」
かちっスリープモードが解除された。「つっこみを待ってた…」
なんだよ。つっこみって。
急に『けもの耳ろぼっと』は立ち上がり、部屋を出て行った。どこに行ったんだろう。
すぐに戻ってきた。
「ぶらっしんぐしてほしい」『けもの耳ろぼっと』は猫用のブラシを持ってきた。
僕の前に座る。頭をこっちのほうに向けてくる。
ブラッシングすればいいの? 僕は『けもの耳ろぼっと』の髪の毛をブラッシングした。
☆☆☆
お昼ご飯。出前をとった。ラーメンを注文した。
さて。午後は何をしよう…残念ながら今日は雨。ざーざー降っている。
『けもの耳ろぼっと』はまた、突然立ち上がって出て行った。
少したつと戻ってきた。手にはスチームアイロン。
『けもの耳ろぼっと』は座ると、自分の頭の後ろを開けて、ネコミミユニットと、狐ミミユニットを取り出した。そして、ネコミミをスチームアイロンで手入れをし始めた。
ネコミミはふっかふかになった。次に同じように狐ミミを手入れし始めた。これもつやつやになった。そしてネコの尻尾と狐の尻尾も同じように手入れをした。狐の尻尾はいつもより1.5倍はふっかふかになった。
かちっ。ネコミミユニットと狐ミミユニットを頭につけて、ネコの尻尾と狐の尻尾も元に戻した。
「あ。忘れてた」『けもの耳ろぼっと』は頭の後ろをまた開けて、今度は別のユニットを取り出した。
それは丸く、くるくる折りたたまれたウサ耳だった。そしてもう一つ色が違うネコミミだった。
「それは?」
「これですか。たまに出てくるミミの手入れを忘れてた…」
ああ。当たりのミミか。でも違う色のネコミミはまだ見たことがない。
僕はものめずらしいのでミミの手入れを見ていた。
手入れが終わり、ユニットを頭に戻して蓋をしめた。
『けもの耳ろぼっと』はあたまをこっちのほうに向けてきた。
「ボタンを押してほしいの?」僕はボタンを2回押した。
にゅー。違う耳が出てきた。それは白いわんこの耳だった。
「なんで、見たことがない耳がでてくるんだよ…」
はあ。よくわからない。僕はもう1回ボタンを押した。
にゅー。今度はウサ耳がでてきた。またボタンを押した。
にゅー。今度はふっかふかになっている狐ミミが出てきた。
「これがお気に入り?」『けもの耳ろぼっと』は言った。
「そうだよ…」
なんか、この『けもの耳ろぼっと』はちょっとおかしい。だから飽きないんだけど…
☆☆☆
次の日。僕はボタンを押した。
にゅー。狐ミミがひっこんで、ネコミミが出てきた。でもすぐにネコミミはひっこんでしまう。
そしてまた、にゅー。とネコミミが出てくる。でもまた引っ込んでしまう。
「ねえ。またおかしくなったよ…」
「ああ。これですか? 使用部品の紙テープが傷んだようですね。頭の後ろを開けて、紙テープを取り出してみてください」
「紙テープってなんだよ…」僕は言いながら頭の後ろを開ける。横のほうに黄色い紙テープが入っていた。僕はそれを取り出す。
紙テープにはいくつか穴が空いていた。
「大昔。コンピュータの記憶装置として、紙テープが使われていたことがあります。
紙テープに開いている穴のパターンで、異なる数字を記録していたのです。
保管していた紙テープを入れてある棚に、虫が入って紙テープを食べて、穴が増えてしまうと
誤動作になることがありました。それをバグと呼ぶのです。だから紙テープに余計な穴が空いていないか見てくれますか?」
「なんだよ。それ。今の世の中に紙テープを使っているものなんて、ないよ…」
「そうですか? 私の重要部品ですよ… ミミをボタンによって出し入れする。売りの機能です」
「なんで紙テープを使っているの。普通に作ればいいじゃないか…」
「それは開発者の趣味です。きっと変な人だったのでしょう…」
そうですか。だからこの『けもの耳ろぼっと』は変なんだ。
「あのさ。どれが正しい。元から開いていた穴で、虫だっけ。食われた穴かわからないよ…」
「そうですか。私なら見るだけでわかるのに…」
「で。どうするの…僕はわからないよ…」
「じゃあ。紙テープの予備品を出してください。背中にハッチがあるので、開けると予備品が入っています」
そうなのか。でもどうやって開けるんだ。
でもどうやって…と僕は『けもの耳ろぼっと』に聞いた。『けもの耳ろぼっと』は服をたくしあげた。「背中みえる?」はいはい。そうですか。これか。ハッチを開ける。
すると、予備品の紙テープが10個入っていた。僕は古いのをそこに置いて、新しいのを取り出した。
背中のハッチを占めて、頭の裏に黄色いテープをはめなおした。
「これでいい?」ぱちっと蓋を閉めてから言う。
「ボタンを押してみてください」
ぽちっ。ボタンを押す。でも何も動かない。
「ねえ。ミミが出てこないんだけど…」
「そうですか。逆向きに入れたのでは…」
逆? 「じゃあ取り出して逆に入れてみるよ…」
向きを逆にしてもだめだった。
「見せてください」『けもの耳ろぼっと』は言った。紙テープを渡す。
「どう?」僕は一緒に紙テープを見る。
「ああ。わかりました。これはバージョンが2つ古いです。だから動かなかったんですよ…」
「古いのかよ… しかも紙テープなのに…」
「ここに穴が無いので… 今はバージョン7です。たぶんバージョン7の紙テープもあるはずです…」
そうですか。なんか手間がかかる。
僕はテープを取り換えて、やっと正しいバージョン7のテープをセットすることができた。
ボタンを押した。とってもスムーズにミミが出てくるようになった。
なんかこんなことをしているうちに、夕食の時間になった。
夕食は、残りもので作ったみたいだ。
☆☆☆
寝る時間。
僕はボタンを押して、狐ミミのモードにしておいた。
ふっかふかの狐尻尾になっていた。
「おやすみ…」僕は電気を消した。




