表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古民家のエプロンドレス  作者: にしじま
8/8

8話

 昨日まで空き地だったトコに、昔話に出てきそうな建物ができてた。

 何かなぁって、ちょっと離れたところから見てたら、カラカラって音を立てながら引き戸が開いて、中から立て看板を持った人が出てきた。

 青い和服に、紺色のちょっと長い腰エプロン?ていうのかな、そんな格好の男の人。

 看板を置いて、中に戻ろうとした男の人の足元から、白い何かがシュルンと出てきた、

 「あ、こらっ!」

 「ニャー」

 あ、ニャンコ。

 真っ白でモフモフしてて、かわいーっ!

 「外に出ちゃダメだって言われてるだろ?」

 「ニャー、ニーニャー。」

 「内緒にしとけ、って、ヤダよ、バレたらオレが怒られるじゃん。」

 「……ニャー。」

 「ケチー、って、あのねぇ、にゃーさん。」

 えっ? なに?

 ニャンコと会話してるの?

 男の人は、ヨイショと屈んで、更にニャンコに話しかける。

 「にゃーさん、水キライだろ?」

 「にゃ。」

 「水どころか、シャンプータオルからも逃げ回るだろ?」

 「にゃ。」

 「外に出ても汚れなきゃいいけど、どこで泥パックしてきたんだ、ってくらい黒くなって帰ってくるから、ダメ!」

 「…………ニャ。」

 「はいはい、外出るのガマンするかわりにおやつね。りょうかーい。」

 白いニャンコを抱き上げ、男の人は建物の中に入って行った。

 ホントに会話してるみたいだったけど、まさかね。

 あ、そう言えばあの人、何か看板置いてったよね。

 ちょっと見てみようと思って、看板に近付く。


 『特殊能力、取り扱っております。』


 キレイな木目の看板に、キレイな筆文字。

 なのに、書いてあるコトはイミフ。

 なに? 特殊能力取り扱ってます、って。

 特殊能力っていうと……キノコ食べると巨大化したり、自分の分身が現れて未知の敵と戦ったり、動物と話し……

 「それかっ!」

 「どれっ!?」

 思わず出た叫びに、まさかのレスポンス。

 振り返ると、さっきの男の人が、竹ぼうきを手に、お店の前に立っていた。

 「あ、すみません。勝手に看板見ちゃって。」

 「全然構いませんよ。」

 笑顔で言われて、ホッと安心する。

 和服なんか着てるから、古風で小難しい人かも、って思ったけど、優しそうだなぁ。

 若そうだし、イケメン……いや、うん、平凡だけど、整った顔してるし。

 「ところで、なにが、『それかっ!』なんですか?」

 「えっ?」

 「いや、さっき看板見ながら……」

 「看板……ああ、特殊能力取り扱ってます、って書いてあるから、どんなのだろうって。さっき、ニャンコと話してましたよね? で、特殊能力ってそれかっ!って。」

 「ああ、なるほど。」

 「動物と話せる能力なんですか?」

 「話せるっていうか……」

 「心を読む能力ですよ。」

 どこからか、女の人の声が聞こえてきた。

 キョロキョロしてると、男の人の後ろから声の主が姿を見せた。

 淡いピンク色の着物に、エプロンドレスをつけた女の人。

 ニッコリ微笑み、サラリと揺れるまっすぐな黒髪。

 やばっ! なにこの人、めっちゃ可愛いんですけどっ!

 「他にも色々な特殊能力がありますよ。良かったらお立ち寄りください。」

 わっ……何か不思議な色合いの目……

 光の加減なのか、いろんな色に見える。

 「お立ち寄りください、って、まだ開店の時間じゃ……」

 「お客様をお待たせしたら、悪いじゃないですか。」

 「オレん時は、アッサリ追い返したくせに。」

 「あの時は、私1人でしたから。今は頼れるパートナーさんが、開店準備してくれるでしょ?」

 「便利な小間使いの間違いじゃね? ま、ここは閑奈さんの店だから、どうぞご自由に。」

 閑奈さんと呼ばれた女の人は、男の人が差し出した手に、持っていたのれんを渡し、こっちを向いてニコッと笑った。

 「特殊能力取扱店『あやしや』へようこそ。どうぞごゆっくりご覧になってください。あ、幸運を呼ぶ、ケサランパサランもいるんですよー。」


 

  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ