ガレット・デ・ロワ
警告は念のためというやつです
わたしの姉の、誕生日。
「おめでとー!」
「おめでとう。俺からはこれな」
誕生日パーティーが開かれていた。
「わたしからはパイ!手作りしたんだよ〜」
パイを入れた箱と皿切り分けるためのナイフを持って、パーティーの行われている大きな広間へと向かう。
姉に喜んでもらいたくて、頑張って作ったパイを姉の前に置いた。
「わーっ美味しそう」
「切り分けるね。どれがいいか選んで?中にコインを入れたの!ガレット・デ・ロワって言うんだって。コインを当てたら幸せになれるらしいよ!」
この前読んだ本にそう書いてあったから。作ってみたくて、姉のためにパイを作った。
「そうなんだ〜みんな一緒に食べよー?」
姉が1番にパイを選び、残りをみんなで分けていく。
「いただきまーす」
「んっ!」
姉が声を上げた。
「なにか固いもの…飲んじゃった」
「きっとコインだ!もううっかりさん。小さいから多分大丈夫だよ」
「そう?なら良かったわ」
「わたし片付けてくるね!」
皿とナイフを持って広間からキッチンへ向かう。
お母さんが、困り顔で行ったり来たりをしていた。
「どうしたの?」
「書斎の鍵が見当たらないのよ……」
「それならいつもそこの机の上に……あれ?」
机の上に置いてあったものを手に取った。
「コイン……?」
「どうしましょう。見つからなかったらお父さんに怒られちゃうわ……」
お母さんはキッチンの方へと歩いていった。
……どうしよう……もしかして入れ間違えた……?いやもうしかしなくてもそうだ……ここにコインがあるんだから……
ガシャン
手に持っていた皿からナイフが落ちた。
「やだわたしったらうっかりさん♪」
──※※──
「鍵見つけたよ!今開けるねー!」
赤く染まった彼女は同じ色した鍵とナイフを持って言った。
叫び声は、ひとつも聞こえなかった。