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ゼロからのスタート

作者: 冬真

身体にあたる風も涼しくなってきた。

そのうち屋上でご飯を食べるのが辛い季節になるんだろうな~とか思って、卵焼きを口に運んだ。

「ちょっと味が濃かったかも・・。」

卵焼きの具にしめじとネギを入れたので塩を多めに入れたのが良くなかったか。

「そう?俺には良いぐらいだけど。」

私の呟きに返事をした彼は、食べるのを再開した。

彼の手にあるお弁当の中身は私と同じ。

なぜなら、彼の分のお弁当を作ったのは私だからだ。

重要な事柄なので言っておくが、別に私が自ら進んで弁当をあげているわけでは断じてない。

彼が私の弁当を食べたいというお願い(強制)をされたので先月ぐらいから作って渡している。

「・・・口にあっているなら良かったです。」

「君の作ったものなら、何でもおいしいよ。」

彼は、基本「おいしい」としか言わない。

本当に美味しいかは分からないが、後光が差す笑顔で言われたら嘘でも本当でもどっちでも良く思える。

いつも全部食べてくれるので不味くはないのだろうと思うのだけど。

キラキラした彼の顔を眺めていると、なにやら騒がしい声が聞こえて来た。

屋上を囲んでいるフェンス越しに見てみたが良く見えない。

フェンスの下のパイプに足をかけ、身体を伸ばしてを覗き込んでみると人だかりが見えた、と思ったら身体が後ろに引かれ背中に何かが当たった感触がした。

「あまり身を乗り出すと危ないよ。」

上から聞こえた声に首を回して斜め後方を見ると、仕方がないなという表情をした彼がいた。

小さい子供じゃないから落ちないし、ちゃんと気をつけている。

だから、腰に回った手を離せ。と言えたらどんなにスッキリするだろうか。

でも、恐ろしくて言えないから心の中に留めておく。

だって、この人、恐いんだよ。笑顔で暗黒オーラとか出してくるだから。

お弁当の時だってそうやってお願いされたら断る勇気なんて私にはない。

「そんなに何を気にしてるの?―――なんだアイツらか。」

「アイツラ・・・生徒会ですか?」

「うん。また、マリンに纏わりついているみたいだね。」

この学園で、絶大の人気を誇る「生徒会」。

その生徒会の役員は容姿端麗・家柄良好・成績優秀であり、教師ですらその権力には勝てない。

実は私と一緒にいる彼も生徒会の1人で「会計」の役職を持っていたりする。

その「生徒会」は今、1人の少女に夢中だ。

如月マリン。3ヶ月前にこの学園に来た転入生で、天真爛漫・明朗快活かつ眉目秀麗。

もちろん、頭脳明晰で編入試験も満点だったとか。

生徒会メンバーは日々美少女マリンちゃんに付き纏って、マリンちゃんを手に入れようと争いを繰り広げている。

「会計様は、参加しなくて良いんですか?」

「何で?」

「のんびりしているとマリンちゃんが誰かにとられちゃいますよ。」

「良いよ。」

「・・・良いんですか?」

「うん。良い。」

「本当に良いんですか!?」

「良い。」

私の質問に同じ言葉で返事が返ってくる。

「良い」の単語だけでも会話が成立してしまった。

「会計様・・・私、好きな人をとられても良いとかちょっと理解出来ません。」

「ん~?俺、好きな人をとられる気なんてないけど。てか、とられても良いってそんなのドMでもないし。」

好きな人はとられたくないけど、マリンちゃんはとられても良い・・・・、訳がわからん。

「それに、俺は好きな人は絶対手に入れたい。たとえどんな手を使ってもね。」

黒い笑顔が恐いっす会計様。

それと腹に回した手を締めないで下さい、苦しいです、圧迫死させられそうでマジで恐いです。

「じゃあ、何でマリンちゃん争奪戦に参加しないんですか。」

「あのさ、まさかとは思うんだけど。・・・とりあえず、こっち向いてくれる?」

「?」

胴体に巻きついていた腕から解放され、半回転してお互いに向き合う形になった。

会計様の方が、身長が高いので私は上を見上げた状態になっている。

「もしかして君は、僕がマリンの事を好きだと思ってる?」

「はい。」

何も考えずに即答すると。会計様はガクッと項垂れた。

そして、しばらく沈黙したあと会計様は口を開いた。

「・・・・しょうがないよね。」

っ!?

なぜ怒っているんですか。表情は解らないけど、そのブラックオーラで不機嫌の度合いが伝わってくる。

「待っていたかったけど、もう限界。」

「な・・・何を怒っているんですか。私、何か気に障る事でも?」

声が上ずってしまう、マジで恐ぇよ・・・。

気持ち的には一目散に逃げ出したいけど、会計様の両手が私の肩に置かれているから逃げられない。

「君の言う通り、誰かにとられる前に俺のモノにすることに決めたよ。」

その言葉を理解する前に、会計様の超アップな顔と唇に暖かいものが触れた。


脳に酸素が足りなくなるくらいの口付けで、倒れそうになった私を支えつつ、私の耳元で会計様はこう言ったのだ。

「好きとかじゃ足りない、愛してるよ。拒否は認めないからね?」

そして、再び唇に暖かな感触と倒れそうになった原因の行為が再開されたのであった。


初投稿させていただきました。よろしくお願いします。

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