雪だるまと少女

作者：零

「君だって可愛くないよ？」

女の子が作った雪だるまは生意気でした。

海の見える小さな街に、20年ぶりの大雪が降りました。街の子供は雪で遊ぶ中、独りひと気のない荒れ果てた公園で雪だるまを作る女の子がいました。

長い木の枝、渇いた葉っぱ、真っ黒の小石を顔につけ、割れた小鉢を頭にのせて雪だるまは完成しました。

「…可愛くない」

女の子は出来たばかりの雪だるまを壊そうとしました。

「君だって可愛くないよ？」

目の前の雪だるまから声が聞こえました。女の子はびっくりして何も言えません。

「そんなしかめっ面じゃ友達できないよ？」

「…うるさい！」

女の子は雪だるまにそう言うと走り去ってしまいました。

次の日、雪は止みましたが、曇り空で路上の雪はほとんど残っています。女の子は荒れ果てた公園に行き、その小さな手にはシャベルを握り締めていました。この生意気雪だるま、今日は粉々に壊してやる。雪だるまを思い切り睨みつけると、シャベルで顔を刺そうとしました。

「それで君に友達が出来るなら、僕は壊れても、溶けてもいいよ」

また雪だるまから声が聞こえました。

「…いらない。友達なんて、いらないもん」

女の子は俯いて黙って握り締めたシャベルを降ろしました。

「下ばかり見ているから友達が出来ないんだよ。友達は前にいるんだよ？前を見て、笑って、おはようって言ってみなよ。そうすれば、いっぱい友達は出来るよ」

雪だるまは優しく女の子に言いました。女の子は何も言い返さないでそのまま帰って行きました。

さらに次の日、女の子は雪だるまに言われた通り、学校で笑顔でおはようとクラスの子に挨拶をするようになりました。すると不思議なことに、女の子には沢山の友達が出来ました。女の子は毎日友達に囲まれてとても幸せでした。

久しぶりの暖かい太陽が顔を出し、路上の雪も少しずつ溶け始めてきました。そんな雪を見て女の子は急いで雪だるまのいる公園へ走りました。女の子が公園に着いた頃には、雪だるまは半分以上溶けていました。

「…壊そうとして、ごめんなさい。私あなたのおかげでいっぱい友達ができたの。…可愛くないって言ってごめんなさい。うるさいって言ってごめんなさい。…ありがとう」

女の子はそう言うと泣いてしまいました。

「ごめんなさいって言われるより、ありがとうって言われた方が嬉しいね。僕を作ってくれてありがとう」

ついに雪だるまは溶けてしまいました。

女の子は今日も、友達に囲まれて幸せな生活を送っているでしょう。

fin.