五話 死を突き付ける。
一話から丁度一年ぶりに更新(酷い)
あと二週間も経てば、夏休みが終わる。
それにも関わらず、私の部屋には一度も訪問者が来ない。
部屋の片付けをしようと、大家さんが来る事もない。親がアパートに来る事もない。
いや、正直に言えば私の部屋の中からでは、外の物音は殆ど聞こえない。
だからもしかするとノックとかされたのかもしれない……が、そうでなくとも大家さんならマスターキーや合鍵を持っている筈だ。
私の部屋に入ってこない筈がない。
あの光景を見て以来私は外出していないが、誰一人としてこの部屋に訪ねてきていない。
……やはり、私が考えた『Dead Worldは時間軸にも影響を与える、死んだ空間を発生させる』という説は正しいのかもしれない。
仮に私が死んでいたのがこの部屋だとして、誰かがこの部屋に入ってきていないとおかしい。
身辺整理で何かがあってもおかしくないのに、私の部屋は依然変わった様子はない。
まぁ、色々と確認すべき事柄は沢山ある。
私は今まで『私が入った場所がdwに感染する』という考え方をしていた。だがそれは違うのではないか?
私は『鈴風 かなた』という意識が現実世界で動いていると考えていたが、私の意識が感じているこの体は本当に現実世界で動いているのか?
よくよく考えて見れば、学校の掲示板を見に行った時に『dw』は発生していなかった。周囲に人が一切居なかったから認識していなかったが、色が薄くなっていたりはしていなかった筈だ。
私が何か物や人にぶつかると、ぶつかった対象に影響を与えるが、それは本当に私の意識体がぶつかったから影響を与えているのか?
……こうして考えていても、何も分からない。
自分の死体を見て以来、外に出掛けていないのでそろそろ貯蓄が突きて餓死してしまいそうだ。
まぁ……既に死んでいる身ではあるが。
こうして自分の部屋にだけ居て考えていても仕方ない。
今は色々と行動して、今の私の状態をしっかりと確かめるべきだ。
そう考えて、多少おめかしをしてから、部屋のカギを握る。
……何となく、ぎゅっと力強く握ってみる。手についた痕を眺め、何となく一安心してから、部屋を出た。
アパートを出て、まず一歩。
私は、花を踏み潰した。
「……え……?」
周囲を見渡してみれば、お見舞いの品のような物が一杯床に置いてある。
いや……置いてあるというかこれは……まさしく、献花だ。
死者に、送る、お供え物。
ヤ、ッバイ……ッ、ダメ、だ……!!
「ぐぶ、ぇ……ぅ!!」
満を持して外に出た筈が、急遽部屋に戻る事となった。
口を抑え、外履きすら脱ぐ余裕もなく、一心不乱にトイレへと駆け込んだ。
ダメだ。
完全に、植え付けられた。
胃の中が、引っくり返る。
頭が、ぐるぐる回る。
世界がいつの間にか反転しているような感覚。右へ左へズレるような違和感。
目蓋の上に、死んだ私が眠る映像が何十回と巻き戻されて再生される。
何を見ているのかも分からない。何を吐いているのかも分からない。
「ぐ、ぶっ……ペッ……」
そして最後に唾を吐いた所で、完全に意識が飛んだ……と思う。
酷い更新をすれば、内容も酷いと来た。
いや、多分物語的には初めの盛り上がり、みたいな部分の予定なんだけど。