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約束の時間ぴったりに玄関にたった。
…のだが。
「藍奈がいない…。」
約束に遅れるような子じゃないのに。
少し考えて近くにいた使用人に藍奈を探すよう言いつけた。
忘れているとは考えられないけれど。
玄関ホールでしばらく待っていると、ぱたぱたという音が聞こえてきた。
「想様!」
「…藍奈?」
贈ったばかりのワンピースに見覚えはあるが、それを着て走ってくる女の子は見慣れない姿だった。
いつもおろしている藍色の髪を二つに結んでいるからだと思う。
「藍奈、その髪は?」
「高田さんがやってくださったんです。」
高田というのは藍奈と仲のいい使用人の一人。
確か髪をいじるのが趣味だったと思う。
「高田にやってもらったのか。」
ただ結んでいるだけかと思ったが、編み込みがされていたりして手のこんだものだった。
「少し遅れてしまって…。すみません…。」
しゅん、としょげる彼女の頭にそっと手を置いた。
「…可愛いね、よく似合ってるよ藍奈。」
「…ありがとうございます…。」




