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テニスルームでの異変

 テニスルームといってもテニスをするわけではない。

 テニスボールを使ったトレーニングをする部屋で、身体的な機敏性や瞬発力を鍛えることを目的としている。オーバーホールした右腕の感覚調整にはもってこいだ。


 部屋は直径10メートルくらいの球を半分にしたドーム形で、壁面にはテニスボール大の穴が無数に空いている。

 トレーニング内容はいたってシンプルだ。

 俺はドームの真中に立って、穴から飛んでくるテニスボールを、よけたり手で払い落としたりする。

 ただ、どこから何個飛んでくるかランダム設定になっていて全く予想がつかないことと、ボールが高速ですっ飛んでくることが俺の右腕の反応速度を調整にはピッタリなわけである。


 俺は、防御用のヘルメットをかぶると、軽く手を上げて、どこかで見ているはずのシステムオペレーターにスタートの合図を送った。


「レベルはどうしますか?」

 オペレータの女性の声がドーム内に響いた。いつもの鈴を転がすような澄んだ声だ。


 俺はどこにいるか見えない美声の持ち主に、ニカっと笑って「マックスで!」と叫んだ。

「はい!じゃあスタートします」

と、言い終わるや否やいきなり正面の穴から黄色いテニスボールが飛んで来た。


 レベルマックスのボールスピードは確か150km/s位のはずだ。


 だが、俺の30センチくらい手前で、まるで見えない壁にぶつかったように左上にはじかれた。

 次はやや右から飛んできた。

 だが、やはり同じように俺にあと30センチで届くというところで見えない壁にぶつかって跳ね返る。 

 戦闘モードの右腕が文字通り目にもとまらぬ速さでボールをはじいているのだ。あとは、そのスピードに俺自身の感覚がついていけば良いわけで、その慣れのためのトレーニングである。


 異変は、50球ほど受けてそろそろ感じを取り戻しかけた時に起こった。

 それまで快調にボールを補足していた右腕の動きがとたんに重くなったのだ。

 あの安心感を与えてくれる戦闘モード特有の低いうなり声も鳴り止んでしまった。


 突然何の前触れもなく通常モードに戻ってしまったのである。

 もちろん、わずか5メートル先からの時速150km/sのボールは全く捕らえられなくなり、もろに俺の体に当たり始めた。

 テニスボールとはいえ、直撃はかなり効く。10発ほど頭や腹に衝撃を受けうずくまった俺の姿に、やっとシステムオペレーターが気付いたらしく、ボールの襲来がとまった。


「大丈夫ですか」

と、オペレーターの心配そうなスピーカー音声がドーム内に響き渡った。体はものすごく痛いがこのオペレーターの声はやはり耳に心地よい。


 不覚にも一発みぞおちに食らった俺は、うずくまったまま、軽く手を上げて大した事はない旨をゼスチャーで伝えたが、しばらく立ち上がることができなかった。


 出発は明日である。身体へのダメージも相当なものだが、より精神的なダメージの方が大きかった。


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