作戦前のトレーニング
俺は、愛用の拳銃、ネオナンブ501に弾丸を詰め、50m先の丸い標的を狙った。
標的に赤いレーザーポイントが映し出される。
そのまま引き金を絞ると、低い破裂音とともに右腕に響くような衝撃が走る。僅かだが右に傾くような感じがするが、かまわず続けて5発連射した。
手元のモニターに標的の弾痕が映し出される。
やはり右側に2センチほどずれているようだ。
しかし、オーバーホール後の右腕の感触は悪くない。市販品の義腕とは全く違う。
その後約1時間かけて着弾ずれの調整を行い、やっと命をつなぎ止める右腕に戻った確信を持つことができた。
次に、格闘技用トレーニングブースに向かった。
やはり、この右腕が真価を発揮するのは、白兵戦の時である。
ブースの扉を開けながら、手首のキーボタンに戦闘モード切替コードを入力する。
ブゥーーン・・と微かではあるが力強いうなり音が右腕から聞こえてくる。
戦闘モードになると、痛点の感覚が消され、限界までパワーを出せるようになる。
痛みを感じないため、コンクリートの塊を豆腐のように握りつぶすことも可能になる。
もちろん、そのくらいで壊れるような右腕でもない。理論上は3センチの厚さの鉄板にも穴をあけられるそうだ。
しかし、腕がつながっている肩の部分は生身のため、実際に100倍近いパワーを出せるのは、肩に負担のかからない肘以下の動きに限定されてしまう。
それでも大抵の相手は、文字どおりこの右腕一本で倒すことができる。
ブースに入ると、すでに数組が、素手や警棒でのトレーニングを行っていた。
その時、左側から良く響く低音の声が聞こえてきた。
「ようケンジ、ずいぶん久しぶりじゃないか」
2メートル近い巨漢の黒人が、右手に持った電子警棒を左手のひらでピタピタいわせながら立っている。
同じ部隊に所属していて今まで数回コンビを組んだこともある「ボブ」という名の隊員だ。
トレーニングをはじめる前なのかまだ汗ひとつかいていないようだ。
「訓練相手でも探しているのか?俺も今来たばかりだから、どうだ?たまには」
うれしい申し出だが、本当に相手になってくれるのかどうかあやしいものだ。
「ああ、だが右腕は戦闘モードになってるぜ」
俺がそう言うと、ボブはいきなり両手のひらをこちらに向けて振って答えた。
「おっと、それじゃあ生身の人間じゃむりだな。テニスルームがさっき空いたようだから、そっちのほうがいいな」
「テニスか・・ん、分かった。サンキュー」
そう礼を言って俺は空いたばかりというテニスルームへ向かった。




