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脱出

 頭に詰め込んだデータから出口の方向に向かって走りながら、俺は人差し指を耳に突っ込んだ。

 ジャックが用意してくれた超時空通信の人差し指通信機だ。


 スイッチを押すとすぐにジャックが出た。

「ジャック、俺だ、ケンジだ」

「・・ザ・・ケンジ!やはり掛けてきたか。大丈夫か?・・」

 どうもジャックはこういう状況になることを予測していたらしい。いかにもジャックらしい。


「准将からバランサーのことを聞いたのか」

「・ザザ・・ああ、だが全面的に信用しているわけじゃない・・ザザ・・」

 こんな地下からでも通信ができる超時空通信はすごいが、少々雑音が入る。


「そうか。ジャック、マイクロチップはまだ右腕に入っているのか」

「・・ザ・・ああ、マイクロチップは右腕の腕時計の中に移しておいた。今回つけた緊急スイッチ用のヤツだ・・ザ・・」

「そのことは准将は知らないのか」

「・・ザ・・准将はその緊急スイッチのことも知らないはずだ・・ザ・・」

やはりそうだったか。


「そうか。ジャックありがとう。やっぱりおまえは頼りになるヤツだよ」

「・・ザ・・あと、どうするかは、お前が決めろ。ケンジ・・ザ・・」


 そこまで話したとき、後ろから銃弾が飛んできた。

 新手の追っ手がかかったらしい。


 俺は、一番手近な廊下の曲がり角に飛び込んだ。

 上の階に登る階段は、この廊下の先だ。

 追っ手の足止めのため、すぐそばにある部屋の鉄の扉に右手を手刀型にして突っ込み、パワーショベル並みの右腕でドアを壁から引き剥がし、そのまま廊下の床に差し込んだ。

 廊下を全面的に通行止めにするわけではないが、ある程度足止めにはなるだろう。そのまま俺は階段目指して駆け抜けていった。



 翌日、Mr.Rは自分の部屋で包帯だらけの顔を手鏡に写して見ていた。

 最初に殴られた3箇所に加え、昨日コンクリートの塊をぶつけられた額の傷のせいで顔全体が赤くむくんでいた。


「ちくしょう、あの野郎・・」


 命に支障は無い傷だったが、任務の最中に気絶し作戦をまっとう出来なかったうえ、ケンジを逃がしてしまうなど、失態が続いた精神的なダメージのほうが大きかった。

 傷がうずくにつれ、ふつふつと怒りが沸いてきていたが、どうすることもできなかった。


 Mr.Rが新しく巻かれた頭部の包帯を触っていると、部屋のメールボックスに荷物が届いた。

 Mr.Rはむくんだ顔に注意しながらボックスから届いた荷物を取り出した。

 10センチ四方の小さな小箱だった。


 差出人の名前は書いていない。


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