闇組織
俺の疑問を察知したのか准将が話を続けた。
「私は、わが連邦国軍の准将を務めているが、『バランサー』という組織のメンバーでもある。ザビ国のスパイではない」
「バランサー?」
「バランサーとは超国家平和組織で、普段は表には出てこない。世界の力の均衡、すなわち平和のバランスが崩れかかった時、それを守るために発動する闇組織として世界各国に存在している。中尉には悪かったが、今回その一翼を担って活動してもらった。」
すっかり騙されていた訳だ。
「中尉には今後もバランサーの一員となって活動してもらいたいのだがどうだ」
「・・・もし断ったら?」
「残念ながら、今回のミッション中に死亡、ということになる」
なるほど、有無を言わさずということか。
「ふたつほど質問していいですか」
右腕が係わっていることに小さな疑問を感じた。
「俺が右腕を受け取った後、不具合が解消されていないのでジャックに点検してもらっている。ジャックがマイクロチップに気が付かないはずがないのだが、本当にこの腕にチップが入っているのですか」
准将はちょっと表情を曇らせながら回答した。
「ジャックには、バランサーの活動を説明し新たに協力者になってもらった。ずいぶん悩んだようだが結果的にチップは君の腕の中にある」
なるほど、あの時のジャックの徹夜明けのような顔は、そのせいだったのか。
「ふたつめ・・」
俺は質問を続けた。
「なぜ俺を選んだんですか?」
当然の質問である。
准将は若干すまなさそうな表情をにじませながら答えた。
「君の右腕だ。その義腕に搭載された技術も国の力の均衡に影響があると判断された。」
なるほど、確かに100年に一人の天才と言われるジャックが作った義腕だ。その価値はあるかもしれない。
「ついでにもう一つ、いいですか」
この際だから聞いておこう。
「バランサーという組織はどのくらいの規模なんですか?」
准将の眉が一瞬ぴくっと動いたが、さほど表情も変えず説明を始めた。
「私も全体像は把握していない。ただ、純粋に世界の平和を願う者たちが連携していることは確かだ・・。そうだな、判りやすい例は、、空港の入国審査官もメンバーのひとりとなっている。」
なるほど、准将のような高官から審査官のような現場の人間まで繋がっているということか。
あの審査官の一瞬の表情の変化はそういうことだったのか。
「・・ちょっと時間をもらえませんか」
「いいだろう。2時間後もう一度聞く」
モニターは准将の言葉が終わるとたんに電源が切れた。
Mr.Rは、絆創膏を張った顔でニヤニヤ笑いながら俺の顔を覗き込み、
「2時間後にまた来る」
と言って部屋を出て行った。




