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ヤマト准将

 首を回して部屋の中を見渡していると、後ろの扉が開く気配がし、男が一人入ってきた。


 Mr.Rだ。


 パワースーツを着てないせいで身長・体重ともに記憶したデータどおりになっている。

 データと違うことといえば、顔にでかいガーゼが三枚張ってあることだ。

 俺に殴られた痕だ。


 Mr.Rは俺の顔を覗き込み、にらみつけた。

「ずいぶん痛かったぞ」

 

 よく見ると顔にはブラッディスパイダーの硬質ネットの痕まで付いている。

 かなり痛そうだ。


「すまなかったな」ぼんやりとした頭で俺はうそぶいた。


 その時、モニターに電源が入った。男の顔が映しだされた。

「おはよう、ケンジ中尉。気分はどうだ」

 ここはどこだ?俺の頭はまだ混乱しているのか。それとも祖国に帰ったのか。モニターに映っているのは、この作戦を命令したヤマト准将の顔だった。


「ニードルスタンガンのレベルは最低にするようにと言っておいたのだが、最大電圧で使ってしまったようだ。右腕に支障はないか」

 ニードルスタンガン!この言葉で俺の頭から一気に霧が晴れ、記憶がよみがえってきた。

 やはり俺は、ザビ国側に捕らえられ監禁されているのだ。


「・・・なぜ准将がここに・・」

「うむ、どうやら意識も元に戻ったようだな。任務ご苦労。では今回のミッションの真の目的を説明しよう」

 准将は、ジャガイモのようなごつごつした顔の表情をひとつも変えずに話を続けた。

「君の今回の作戦、すなわちザビ国から物質伝送装置の開発データを持ち帰るというミッションはダミーだ。本来の目的は別にある」

「ダミー・・」

「そうだ。今回の作戦は、ザビ国が物質伝送装置を開発したというのが大前提になっているが、物伝送装置の開発に成功したのはザビ国ではない。わが連邦国側なのだ」

どういうことだ。それならばザビ国に潜入する意味などまったく無い。


「君も理解しているとおり、物質伝送装置は究極の兵器となりうる。今世界の平和は、わが連邦国とザビ国の2大強国がそれぞれ同等の軍事力を持っているからこそ成り立っている。しかし、物質伝送装置はその均衡を狂わせるに十分な脅威だ」

 確かに、それを防ぐために俺はザビ国に来たのだ。

 准将は話を続けた。

「そこで今回、君は連邦国の開発した物質伝送装置のデータを持ってザビ国に潜入した」

「・・俺がデータを持って?」

「そうだ。君のその右腕にデータチップが仕込んである。したがってその右腕をはずしてMr.Rに渡してくれ」

 Mr.Rはモニターの脇に立ってニヤついている。

 あのいやらしい笑い方だ。


 俺ははっきり言ってすごく驚いた。

 ヤマト准将の話が本当だとすると、准将はザビ国のスパイなのか。

 敵国のスパイがこちらのスパイ組織の親玉なのか?


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