反撃
「君の腕は、まだ通常モードなんだろう?さっきから見ていたよ。戦闘モードに切り替えるにはこの左手で操作するんだよねぇ」
Mr.Rは俺の左腕をさらに締め上げ、勝ち誇ったようにニヤついている。
(やたらと詳しいな。いったいどこからこんな情報まで漏れたんだ)
俺の頭の中は疑惑でぐるぐる回っていた。
それに、周りを見れば、銃を構えた二十人位の人間が俺たちを取り囲んでいた。
白衣を着たヤツや作業服の技術者、それにウェイトレスのお姉ちゃんまで小銃を構えて俺を狙っている。
万事休すか。それにしてもこのMr.Rはやけに気に障る笑い方をする。
どうせ捕まるんだったらせめてコイツだけでもなんとかしてやりたい。
俺は、右腕の腕時計の文字盤を、力いっぱい右膝に押し付けた。
ジャックが作ってくれた戦闘モード直結のスイッチである。
腕時計がカチッと小さく鳴ると、ブゥーーン・・とかすかなうなり声が右肩から伝わってきた。この音を聞くと安心感が広がっていく。
「俺の腕の話は誰に聞いた?」
俺はMr.Rに向かって小さくつぶやいた。
「ふん、誰でもよかろう。おまえはこのまま捕まって一生監獄暮らしになるんだからな」
「それはちょっとやだなぁ」
俺は、そう言いながら周りの銃を構えている連中を観察した。
一人の男が今にも発射しそうな構えで狙いを定めている。
あの銃は、捕獲用ネットランチャーだ。
極細の超硬質繊維を使ったネットを対象物に覆いかぶせ捕らえるための銃で、繊維があまりにも細いせいで、捕まった人間が暴れれば暴れるほど肉がネットの繊維で切れて血だらけになってしまうという別名「ブラッディスパイダー」という代物だ。
あんなものを掛けられたらたまったものではない。
俺は、右腕の威力を発揮した。
常人の目には見えないようなスピードで拳を繰り出した。ちょうど訓練所のテニスルームのようなものだ。
さっきまで俺の左腕をつかんでいたMr.Rの右腕は、「ぼこっ」という音とともに変な形に曲がりMr.Rの背中のほうへ回っていった。
ほぼ同時に、Mr.Rは顔面が3箇所ほどいやな音とともにへこんで、白目をむいて気絶した。
俺は、すぐさまMr.Rの白衣の襟首を右手で掴み、「ブラッディスパイダー」を構えた男めがけ、Mr.Rをそのまま投げつけた。怪力の右義腕のなせる技である。
「ブラッディスパイダー」を構えた男は、突然Mr.Rが飛んでくるものだからそのまま引き金を絞った。炸裂音とともにきらきら輝く蜘蛛の巣状のネットがきれいに開いて俺のほうに飛んできた。
しかし、ネットは俺に届く前にMr.Rを包み込んでしまった。そしてMr.Rは気絶したまま特殊鋼線のネットにまみれながら「ブラッディスパイダー」を撃った男に圧し掛かっていった。




