現地工作員 サヤカ
俺が泊まるホテルは、近代都市側の宿泊するには快適な建物だ。伝統の街側のホテルは風情はあるが、快適さは今一らしい。
これから潜入する科学研究所は、文字通り近代都市の象徴のようなところで、近代都市側の中心の位置しているためこのホテルを選んだようだ。
部屋には現地の工作員が待っていた。
サヤカという名の美人さんだ。
細い金縁のメガネをかけ一見おっとりしているように見えるが、格闘技、特にナイフ術の使い手で、さらに底なしの酒豪だそうだ。
噂によると、何人もの敵の男達が酔っ払ったままのど笛をかっ切られたらしい。
「ケンジ中尉、お待ちしていました。予定通りですね。」
「ああ、よろしく頼むよ」
軽く握手すると、俺は持ってきた荷物を部屋の真ん中にあるテーブルの上に置きながら聞いた。
「計画に変更はないですか」
「ええ、特に変更はありません」
サヤカの右手は空中で奇妙な動きをしている。まるで見えないキーボードがあるようだ。
「おっ、それは最新型のスマートグラスだね」
「あ、そうです。昨日配備されたので早速使ってます」
「ほー・・」
確かつい最近配備され始めたメガネ型情報端末で、空中に本人にしか見えないキーボードが表示され、情報も空中に表示されるものだ。もうすぐ俺にも配られると思う。楽しみだな。
「さて、予定通りということは、あさってが決行日だな。スケジュールの確認をしておこうか」
サヤカは見えないキーボードを操作しながら話し始めた。
「はい、あさっての12日火曜日、集合時間は0600時、場所はA地点、清掃作業員の服装に着替え装備の確認。0700時、清掃会社のマークが入ったバンに乗車し研究所目指し出発。・・・・・」
サヤカの説明を聞いた後、俺は自分の部屋に入りサヤカが用意した装備をチェックした。
俺はこのまま明日もこの部屋で待機ということになっているが、サヤカは明日の夜、重要なミッションがあるらしい。
翌々日、計画通り、俺は薄緑色をした清掃作業員の服装をして研究所に乗り込んだ。
当日急に休んだ作業員の代替ということで派遣社員の一人として、サヤカが用意してくれたIDカードで難なく検問を通過した。
当日急に休んだ作業員は、昨日の夜、サヤカと合コンしている。多分今日一日立ち上がることが出来なくらい飲まされたのだろう。サヤカは重要なミッションを滞りなく完遂したようだ。
研究所はさまざまなプロジェクトが行われているため、建物はかなり大きい。敷地的には野球場3・4個分はありそうだ。
研究所内は、大きく2つのブロックに別れている。
ひとつのブロックは、食堂やスーパー・簡易な娯楽施設などがあるサービス棟で、俺が持っているIDカードで入れるエリアだ。警備も比較的甘く今回のように意外と簡単に潜入できる。
もうひとつは、各研究部門の特別IDと生体認識装置をクリアしないと入れない本当の研究施設ブロックで、警備も非常に厳重になっている。
もっとも今回、Mr.Rとは、サービス棟にある食堂で接触する手はずになっているので研究施設まで入り込む必要はない。




