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7話 試される子1

通路は、続いている。


野蒜(ノビル)が数歩進むたび、

壁の光が、ほんのわずかに強くなった。


気のせいかもしれない。

けれど――


(さっきより、明るい)


歩調を緩める。


すると、光も落ち着いた。


止まる。

完全に。


壁の明滅が、止まった。


「……」


野蒜は、唾を飲み込む。


(……やっぱり、気のせいじゃない)


一歩、前へ。


光が、応える。


まるで、

「ちゃんと見ている」と言われているみたいだった。


通路の幅が、少しずつ変わっている。


広い。

狭い。

また、広い。


意地悪というほどではない。

けれど、歩きやすいとも言えない。


野蒜は足元を見る。


――段差。


ほんの数センチ。

気を抜けば、つまずく。


(……)


一歩。


次の瞬間、

足首が、わずかに傾いた。


「っ」


体が前に流れる。


反射的に、

野蒜は魔石を握った。


光らせない。

派手にしない。


(止まれ)


念じる。


足裏に、ぐっと抵抗が生まれた。


完全に固定されたわけじゃない。

でも――


転ばない。


体勢を立て直し、

野蒜はその場で、深く息を吐いた。


「……セーフ」


壁の光が、

一段階、強くなった。


褒められた気がして、

ちょっとだけ、ムッとする。


(……評価しないでほしい)


でも。


悪くない、とも思ってしまう。


通路は、また静かになった。


危険は、ある。

でも――

殺しに来てはいない。


(……試されてる)


そんな言葉が、

頭の中に浮かぶ。


野蒜は、後ろを振り返った。


通路は、ある。

戻れる。


けれど、

空気が、わずかに重い。


「……」


戻ろうとしなかったことを、

ダンジョンは、どう思ったのか。


答えは、ない。


ただ、

光が消えないだけだ。


野比野蒜は、

足元を確かめながら、

もう一度、前を向いた。


試験なら、

途中退場は、できる。


でも――


(……ちょっとだけ、先を見る)


それくらいなら、

許される気がした。


通路の奥で、

光が、静かに待っている。


ダンジョンは、

まだ、何もしてこない。


それが、

一番、怖かった。


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