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エピローグ

野蒜視点の語りになります。

やってみたかったのでやってみました!

まだ拙いのでおかしい部分があるかもしれませんが、目を瞑っていただければ幸いです。

よろしくお願いします。

それからはもう、思い出すだけで知恵熱が出そうなほど、しっちゃかめっちゃかな大騒ぎだった。


窓際で、あの破廉恥なスリットを隠そうと必死に蹲る私。

それを見て、まるでお笑いライブの最前列にいるみたいに腹を抱えて笑い転げるミシェル。

絶対この事は忘れない!


割れた窓の向こう側――グラウンドでは、さっきまで死を覚悟していたはずの生徒たちが、今度は一転して「今の見た!?」「自撮り撮れた!?」と、パニックと興奮がごちゃ混ぜになった声を上げながらスマホを掲げている。


校舎の中からは、現実逃避を始めたのか、あるいは今後の責任問題に震え上がっているのか、我を忘れて怒鳴り合う先生たちの声まで聞こえてきた。

そこに、目を血走らせた黒瀬さんが突撃してきた。


「野比さん! その装束の構造を見せて! 触らせて! できれば脱がないで、そのまま三日間くらい保存させて!」


なんて、およそ国家公務員とは思えない変態……いえ、過激なセリフを連呼しながら私に飛びかかろうとする。

それをラグビーのタックルみたいな勢いで抑え込みながら、周囲にテキパキと指示を飛ばしていたのが佐々木さんだった。


「負傷者を優先して収容しろ! 生徒をグラウンドに滞留させるな! 必要なら威嚇射撃……はダメだ、落ち着かせろ! 全員、現場を保全しつつ撤収準備!」


その怒号に近い指示を受けて、自衛隊の人たちが迷彩服を揺らしながら校内を駆け回る。


事件が起きたのは放課後になってすぐのことだったから、部活をやっている子もいれば、教室でお喋りしていた子もいて、ほぼ全ての生徒が学校に残っていた。


情報の拡散を最小限に食い止めるためか、それとも外に潜んでいるかもしれない別の「ファンタジーさん」から守るためか、結局その場にいた何百人という生徒全員を、自衛隊が車両を出して一軒一軒送り届けるという、前代未聞のパトロール付き下校が始まった。


私はといえば、佐々木さんがどっかから調達してきた、自衛隊仕様の分厚くて少しゴワゴワする毛布に、お雛様というかミノムシみたいにぐるぐる巻きにされて移送される羽目になった。


「野蒜、その格好で歩いたら別の意味で通報されるからね」


なんてミシェルに茶化されながら。彼女も心配してくれたのか、あるいは単に私の面白い姿を特等席で見届けたかったのか、家まで一緒に付いてきてくれることになった。

移動中の車内は、まさに「カオス」を煮詰めたような空間だった。


隣に座る黒瀬さんの暴走は、車に乗ったことでさらに加速していた。


「野比さん、今の感覚をパッチノート風に説明して! 魔力回路の実装はいつ? 脳内の仕様変更アップデートログはどこで見られるの!? 黄金比のスリットには幾何学的な防御結界が張られているのよね!?」


なんて、理解不能な質問をマシンガンのように浴びせかけてくる。


最後には、あまりのうるささに運転席の佐々木さんが「いい加減にしろ、このマッドサイエンティスト!」と、黒瀬さんの頭を思い切りペシっと叩いて黙らせていた。あの黒瀬さんが、叩かれた場所を押さえてシュンと縮こまるのを、私は毛布の隙間から「……自業自得だなぁ」とぼんやり眺めていた。


ようやく家の前に着いたのは、夜の20時をとうに過ぎた頃だった。

いつもならとっくに夕飯を食べて、テレビを見ながらゴロゴロしている時間だ。


あの恥ずかしい装束は、車の中で私が「消えて……消えてよ、もう!」と念じたら、夜風に溶ける霧みたいに、あっけなく消えてしまった。


……まあ、その瞬間、布地の重みが消えて、中身は当然「真っ裸」になってしまったわけで。


「あああああ! 私のサンプルがあああ! 消失バグ発生えええぇぇ!!」


という黒瀬さんの絶叫が夜の住宅街に響き渡ったことは、私の黒歴史リストの筆頭に書き加えておくことにする。

急いで自衛隊の人が予備で持っていた隊服を貸してくれたけれど、それがまた問題だった。


大人の男性隊員が着るための服は、女子高生……というより小学生並みの体型だと自覚している私には、あまりにもデカすぎたのだ。


袖は指先まで隠れて余り、裾は引きずるほど長い。

そんな「自衛隊ごっこをしている子供」みたいな私の姿を見て、今日一日で笑いの沸点がバカになっていたミシェルは、また「ぷっ、くくく……っ!」とお腹を抱えて吹き出していた。


「笑いすぎだよミシェルちゃん……」


「ごめん、だって、魔法少女からの……これだもん……ギャップ萌えにも程があるでしょ……」


重い、本当に鉛のように重い足取りで、玄関のドアを開ける。


「……ただいまー」


消え入るような声で言うと、リビングからお父さんとお母さんが、転ぶような勢いで飛び出してきた。

ニュースか何かで断片的な情報は入っていたのかもしれない。ブカブカの迷彩服を着て、疲れ果てた顔をした私を見て、二人は何も聞かなかった。

ただ、そっと、壊れ物を扱うみたいに優しく私を抱きしめてくれた。


お父さんのタバコの匂いと、お母さんの柔軟剤の匂い。

その「いつもの匂い」に包まれた瞬間、ようやく私の心の中に溜まっていた、張り詰めた緊張の糸がぷつんと切れた。


ああ、本当に。

本当に、長い一日だった。

あんな巨大な蛇に会って。

土偶に追いかけ回されて。

空に穴が空いて。

変な服を着せられて。

本当に魔法少女なってしまった。

若干これじゃ無い感があるけれど。


夕食にお母さんが作ってくれたハンバーグも、半分くらいしか喉を通らなかった。

ミシェルは「また明日ね!」と、嵐のように笑いながら自分の家に帰っていった。


私はシャワーを浴びて、今日一日の汚れと、あの藤色の霧の嫌な臭いを洗い流した。


髪を乾かす気力さえ残っていなかったけれど、ベッドに滑り込むと、清潔なシーツの感触が信じられないほど愛おしく感じられた。

枕元に置いたスマートフォンが、通知の振動を繰り返している。


きっとSNSは、私の学校で起きた「事件」の動画や噂で大変なことになっているんだろう。


明日学校に行ったら、私はどんな目で見られるんだろう。

自衛隊の人たちは、また明日も私の前に現れるんだろうか。

あの白蛇さんは、今頃どこで何をしているんだろう。

考えなきゃいけないことは、山脈みたいに高く積み重なっているけれど。


今日一日を使い果たした私の意識は、心地よい重力に引かれるように、深い眠りの底へと落ちていった。

部屋の明かりが消され、ドアが静かに閉まる音がした。

廊下へ漏れ出すわずかな光の中で、お母さんが眠る娘の背中に向けて、祈るように小さく呟いた。


「……お疲れ様、野蒜」


窓の外では、いつもと同じ月が夜空を照らしている。

けれど、世界はもう、昨日までと同じ姿ではない。


魔法と、科学と、女子高生の日常が入り混じる、新しい現実が動き出していた。


おやすみなさい。


明日、ファンタジーさんが、もう少しだけ優しくなっていますように。


第一章 初めの一歩 完

第一章終了です。

また二日ほどお休みします。

その間に書き溜める所存です。

よろしくお願いします。


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よろしくお願いします。

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