3話 失敗する子
魔法の実技授業は、思っていたよりもずっと地味だった。
必要なのは、
魔石に魔力を流し、
「こうなれ」と思うだけ。
その魔石の特性を具現化させるだけ。
まるでスイッチの入り切りだ。
それが、現代魔法だ。
黒瀬が続ける。
「物語で出てくる魔法とは違い詠唱や、呪文などは必要ありません。たまに不具合が起きて発動しない事があるのでしないように。」
必要ない。
(……でも
詠唱した方が、絶対カッコいい)
そう思った瞬間、
野蒜の中で何かが決まった。
「では、順番に実技を行う」
名前を呼ばれ、
野蒜は前に出た。
小柄な体。
だが内心は、完全に魔法少女。
(我が内なる光よ……今、我が前にその力を示せ!解き放て!エクスプ○ージョン!……)
心中で詠唱。
聞こえていなくて本当によかった。
そして。
――魔力が流れた感覚がした。
パァンッ!!
閃光。
教室が、一瞬だけ白く染まる。
「うわっ!?」
「まぶしっ!」
机の影が跳ね、
黒瀬が即座に声を張った。
「野比! 制御を止めろ!」
野蒜はハッとして手を離す。
結晶は床に転がり、
光は収束した。
沈黙。
机の端が、少し焦げている。
「軽い事故だな」
黒瀬が淡々と告げる。
「野比、詠唱はしてないな?」
「……してません!」
即答。
真っ赤な嘘である。
でも怒られるのは嫌なので、元気に答える。
「制御が甘い。心を穏やかに保て!以上」
――休憩時間。
佐藤が近寄ってくる。
「……ド派手だったね」
野蒜は、胸を張る。
「でしょ」
ムフー。
「本当は詠唱してたでしょ?」
野蒜の視線が泳ぐ。
「そ、そんな事はないようなありそうでなかったようなないような…。」
佐藤は生暖かい視線を野蒜におくる。
野蒜は気づいて居ないが、クラスのアイドルだった。
ペット的な意味で。
そして佐藤もムフーとする。
「まぁ才能はありそうだよね?どうやってもあんな風になりそうに無いし。」
「でしょ!?」
事故ったけど。
怒られたけど。
でも――
チャイムが鳴る。
再開される授業。
野比野蒜は席に戻りながら、
次の実技に思いを馳せる。
(次は、もう少し控えめに詠唱しよう)
詠唱は、やはり不要である。
今日も世界は終わらない。
そして野蒜の厨二も終わらない。




