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11話 学ぶ子3

野蒜は、さっぱり分からなかった。


流れは分かる。

形も、構造も、追える。

魔力がどこを通り、どう動いているのかも見えている。


――なのに。


色だけが、分からない。


「……うーん」


野蒜は、腕を組んだ。

そのまま目を閉じて、唸る。


腕組みをして唸る姿は、どう見ても小学生である。

本人はいたって真剣だが、客観的に見ると、非常にそれっぽい。


「うーん……」


そして、カッと目を見開いた。


「分からん!」


即断だった。


分からないなら、行動するしかない。

そう考えて、野蒜はもう一度、木の芽に魔力を流した。


白っぽい光。

先ほどと、まったく同じ。


そのまま、流し続けてみる。


…………。


変わらない。


まだまだ、流し続けてみる。


………。


やっぱり、変わらない。


「ちょっとは変わってくれたっていいじゃん!」


思わず、文句が口をついた。


その瞬間。


魔力が、わずかに揺らいだ。

ほんの一瞬、色が変わった気がした。


「え⁉︎」


驚いて、野蒜は思わず魔力を止めてしまう。


もう一度、流す。

白っぽいまま。


首をひねる。


(今の……)


最初によぎったのは、感情だった。


試しに、怒ってみることにする。

実験だ。


魔力を流しながら、怒る。


思い出すのは、父親にダークチェリーパイを食べられた記憶。楽しみにしていた最後の一切れ。

あれは許されない。


絶対にだ!


一ヵ月経った今でも、思い出すと腹が立つ。


世の中の男性は気をつけてほしい。女子は、恨みを忘れない生き物である。特に食べ物の恨みは……。


しかし。


魔力の色は、変わらなかった。


「……違うか」


さっき変わった時を、思い出す。


確か、文句を言っていた。

怒りではなく、ただの愚痴。


もう一度、再現する。


魔力を流す。

そして。


「ちょっと変わってくれたっていいじゃん!」


一瞬。


ほんの一瞬、色が変わった。


野蒜は目を見開いた。


(……音声入力?)


試す。


「赤くなれ!」


一瞬、少し赤くなる。

けれど、すぐに戻る。


「青」

「緑」

「黄色」


色々試すが、どれも一瞬。

しかも、どれも薄い。


「……何か、足りない」


もしかしたら。

そもそも、考え方が違うのかもしれない。


野蒜は、一度魔力を止めた。

深呼吸をして、気持ちを切り替える。


そして、通路に咲いていた花の方へ戻る。


そっと触れて、魔力を感じ取る。


――優しい。


自分が流す魔力より、ずっと柔らかい。

押しつける感じがない。


集中して感じていると、ふと、分かった気がした。


この植物は、

「こうありたい」

と思っている。


言葉ではない。

けれど、確かに、意思と願いがある。


野蒜は、ゆっくり目を開けた。


「……わかった、かも」


もう一度、木の芽の前へ。


魔力を流し始める。


最初は文句だった。

次は命令だった。


どちらも、違った。


野蒜は、願った。


「……魔力の色を、変えて」


白っぽい光が、ゆっくりと変わる。


確かに。

はっきりと。


色が、()に変わった。


「やっふーい!」


野蒜は、その場で跳ねた。

軽く、くるっと回る。


完全に成功、とは言えない。


それでも。


「できた……!」


洞窟は、何も言わない。

ただ、静かに応えている。



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