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『見た目で判断されて当然』

おうおう、何やら憤っておるようだな。

どうした?

何か簡単な依頼を取りこぼしでもしたか?


ーあ?あぁ、ドラゴンさん。お久しぶりです。


うむ。しばらくぶりであったな。見るに、何か嫌なことでもあったか。


ーええ、まあ、ちょっとそうなんですよね。

ってのが、ちょっと言いにくいんですけど、俺、冒険者辞めようと思って。


…そうなのか。それは、惜しいな。また、我の好敵手が減ってしまうのか。


ーんなわけないじゃないですか。俺なんて、逆立ちしたって、ドラゴンさんのライバルになんてなれっこないですよ。


そんなもの、わからんぞ。人間は、何かのきっかけで急に強くなったりするであろう。ほれ、あの、覚醒とか言うやつだ。お主も命をかけて守るべき女の1人や2人おるであろう。それを守ろうとした時に、限界を超える可能性もあるかもしれんぞ。ほれ、我が呼んでやろうか?村を滅ぼす魔獣とやらを。


ーなんて怖ぇ事言うんですか。やめてくださいよ。いや、これはフリでもなんでもなくて、マジで。

やろうと思ったら、多分、ドラゴンさんなら出来ちゃうんですから。


はっはっは。冗談だ。今更、暇つぶしに人間を滅ぼしてやろうなどどは、思わぬよ。今更な。


ー昔は思った事あるんすか。怖ぇなぁ。

でもね、確かに俺も冒険者になりたての時は、憧れましたよ。勇者みたいになりてぇって。

ドラゴンさんみたいな、強大な存在に立ち向かう、みたいなね。


でも、諦めました。いや、諦めたとは違うっすね。

興味が薄くなった感じです。完全に、って言われると、まぁ、全男子は圧倒的な強さに憧れるモンだとおまうので、少しはあるかもですけど、でも、あくまで、物語に憧れるのと一緒の感覚ですね。

必要もないですし。


ほう、なんでそう思うようになったのだ。


ーそりゃあ、今、俺がドラゴンさんと話してるのがいい証拠でしょう。俺が生まれるもっと前は、魔族とかそれ以外の種族との仲も悪くて、色々戦いもあったかもですけど、今は、ねえ、こんな感じじゃないですか。この店だって、ドラゴンさんの他にも、ヴァンパイアの姐さんや、大精霊様とか、あ、こないだエルフの団体さんも宴会かなんかで来てましたよ。

平和なモンじゃねぇですか。

ダンジョンだって、俺ら程度が行けるとこなんて、知れてますよね。まあ、その程度でも、俺らは命懸けになりますし。

なんか、まあ、もういっかな、って。

切った張ったなんて、ほんとごく一部の地域とかだけの話になってますからね。

それより、他の仕事にも興味あるし、まだ、20代なんで、色々やってみたいんすよね。


そうか。まあ、それはそれでお主の選択だからな、無理には止めたりはせんが、なんだ、それで憤っておったのか?別に良いことではないか。


ー違うんですよ。俺が腹立ってたのは、差別です。差別。


ん?元冒険者など、それこそいくらでもおるではないか。そんな事で差別など、最早、ほとんどおらんだろう。


ー違うんですよ。コレです。コレ。


ああ、刺青か。それで、なんだ、面接落ちたとか、そんなものか。


ーそうなんすよ。今までいくつか商会に面接行ったんですけど、全部ダメでした。落とされた理由を教えてくれるとこがいくつかあって、コレだって言うんですよ。

刺青入ってるからって、それだけで落とすとか、差別っすよ。


ふむ。なるほどな。それで、憤っておったのか。


ーそうっす。さっきも、こないだ面接受けたところから不採用の連絡があったんすよ。理由は聞いてないっすけど、未経験オッケーのとこだったんで、どうせコレのせいだと思うんですよね。

結構、行きたかった商会だったんで、悔しいですし、腹も立ったんすよね。


ちなみに、どんな商会を受けておるんだ?


ーアレっすね。主に、飲食系です。俺、実家が食堂やってるんで、まあ、もう畳んじまったるんですけど、だから、料理とか結構好きなんですよ。野営の時もすすんで飯番とかしてましたし。稼いだ分は結構、色んなところ食べ歩いたりしてたんで。

もちろん、最初は下働きからでしょうけど、刺青入ってるからって、それだけで落とすとか、刺青差別っすよ。


あのな、それはな、差別ではないぞ。


ーいや、でも、刺青入ってるからって、別に犯罪者とかじゃないですし。


区別だ。区別。

具体的にお主がどこを受けたかまでは知らぬが、普通の、一般的な、飲食の商会であろう?

一般的な飲食店、飲食店に限らず、一般的な、ある程度以上の商会だと刺青などは入っている時点で、ほとんど不採用になる。

それは、差別ではなく、区別、もしくは判断だ。その担当者のな。


ーどう言う事っすか?それは、差別じゃないんですか?よくわからないです、


我のような圧倒的強者からするとな、お主ら人間に刺青が入ってようがいまいが、どうでもいい。我からすると、すべからく人間など矮小な存在だからな。


ーそりゃ、そうですよ。


そうだ。

だがな、お主ら冒険者、いや、元冒険者、いや、元冒険者で今、無職のな、


ーいや、言い直さないでくださいよ。まだ、無職じゃないっすよ。ってか、無職って、怖ぇ。急に実感が湧いてきた…


まあ、ほぼ無職のお主だがな。


ーいや、まあ、いいです。このままだと、確かに無職になっちゃうんで。


うむ。

では、話を戻すぞ。

無職は、まあ、置いといてな。


ー置いとくんすね。


ええい、話が進まん。ちょっと、一旦、喋れんように、火だるまにしてやろうか。


ーすいません。すいません。話聞きます。聞かせていただきます。


うむ。

ともかくな、刺青はそもそも、一昔前なら罪人や、それに近いものが、それとわかるように入れられた、もしくは自ら入れていたものだ。

確かに今はオシャレとして入れてるものも増えてきておるかもしれんが、まだまだ、世間の認識としては、そうではない。

いわゆる、ガラの悪い人間が刺青を入れている。

という認識が一般的なのだ。

そして、それは、ほぼ正しい。


ーいや、ちょっと待ってくださいよ。俺はそんなつもりでいれたわけじゃないんですよ。それに、そんな犯罪を犯したこともないですし、それは偏見じゃないですか。


偏見ではない。

事実なのだ。

例えばな、刺青が入ってない人間と入っている人間を無作為に100人ずつ集めるとする。

するとな、それぞれの100人の内訳を見ると、どうなるか。


そのそれぞれの100人の中に、犯罪者、もしくはそれに近いものがいるかどうか数えるとな、刺青が入った100人の方が、多いのだ。別にデータを取ったわけではないが、間違いないはずだ。


もちろん、刺青を入れてない方にもいるであろう。そういうものがな。だかな、割合が違う。

多分、1割にも満たんだろう。刺青がない方はにはな。だか、刺青の方は、下手したら半分くらいは犯罪者、もしくはそれに近い人間かもしれん。


いや、これはな、我が勝手に言っているのではない。世間一般では、これに近しい考えが一般的なのだ。

だからな、面接するものも、刺青が入ってない人間を選ぶのだ。


だって、そうであろう。

刺青が入ってないものは、せいぜい1割の確率で犯罪者。だが、入っておるものは、二分の一の確率で犯罪者なのだから。


当然、安全な確率が低いもの、刺青が入っておるものは、当然、ふるいにかけると、落ちるべきなのだ。

もちろん、それを気にしないところもあるだろう。

だが、お主はそういうところを受けてない、もしくは狙ってないから、そうなる。落ちるのだ。面接で、


要するに、刺青を入れたお主が悪い。

シンプルな話だ。

そもそも、刺青を入れる時には覚悟してたはずだ。入れる前と後では、一般的な、いわゆる普通とは違う人間として見られる可能性があることをな。


それを踏まえた上で刺青を入れたのだから、それはお主が悪い。


ーそりゃあ確かに入れる時は、気合いも入ってたし、冒険者になるって決意があったから…でも、こんなに風当たりがきついとはねえ、思ってはなかったっすよ。

にしてもっすよ、見た目で判断するってのも、どうかと思うんですよね。時代的にも。


あのな、別にいいんだが、なんなのだ?その、お主ら人間の建前と本音がぶれまくっておる、その感覚は?

『人は見た目で判断してはならぬ』

と言っておるくせに、思いっきり見た目で判断するではないか。

男女の合コンというものがあるだろう?


ーおお、なんすか。いきなり合コンって。ドラゴンさんの口から聞きたくない言葉っすね。そもそも、あんまり今は合コンとか言わないかもです。


なら、要するにあれだ、異性のつれあいを探す催しだ。

あれでな「いい人だとは思うんだけど…」とか言うであろう。自分の見た目の好みじゃない時に。

判断しとるではないか。見た目で。別につれあい探しに限らず「見た目で判断したらダメって言うけど、アレはダメだよね」って、なんだその矛盾は。

はっきり言え。

見た目がダメだと。


ーなんか、言われたことあるかのように怒ってるじゃないっすか。


怒ってるのではない。お主らのその言行不一致が理解できぬのだ。まあ、いいがな。我からすると人間など、どれも似たようなものではあるから。

まあ、刺青もそんなものだ。

入れてるだけで、犯罪者やそれに関わるものと思われても仕方がないし、そう思われるかもしれないのに、刺青を入れるような考えのものは、どこかおかしいやつだ、と思われて当然なのだ。


なので、要するに、どう考えても、お主が悪い。もちろん、さらに100年後とかはわからんぞ。

もっと、考えが変わってるかもしれんし、変わってないかもしれん。

だが、お主は100年は生きれぬであろう。

という事は、今のこの考え方がある時代のもと生きるしかないのだ。

だから、もう、仕方がないのである。


ーもう、そんなはっきり言われると、なんか、落ち込んじゃいますよ。どうしようもないじゃないっすか。


いや、まあ、そんなこともないぞ。我なら綺麗に刺青を取ることもできるぞ。


ーええっ!マジっすか!そんなんだったら早く言ってくださいよ。それしてくれるんだったら、何杯でも奢りますよ。奢らせてください!


ふむ。ただし、お主にその覚悟があるかどうかではあるがな。


ーあるに決まってはじゃないですか。もう、こりごりなんですよ。刺青も、それに対する差別も。取れるんだったら取りたいっす。

どうやって、やるんですか?魔法とかです?


簡単である。まずな、お主が死なぬくらいに刺青が入っておる皮膚を、我のブレスで焼き尽くすのだ。そして、間髪入れずに回復をかける。

するとな、色の入った皮膚が全部焼き切れて、その下から新しい皮膚を作り出されるのだ。

皮膚が焼けて、回復し切るまではちょっと辛いかもしれんが、このやり方で綺麗に取れる。皮膚ごとだかな。


どうした?やってやろうか?今なら、一樽でやってやってもよいぞ。どうした?何を黙っておる。刺青が綺麗さっぱり取れるのだぞ。


ーあのぅ、それって、要するにドラゴンさんのブレスを全身にくらうってことですよね?


うむ。そうだ。とはいえ、お主は首から上は入っておらぬから、まあ、前面と背面の2回で綺麗になるぞ。首から上は、毛があるからな。細かく分けぬといかんから、時間がかかるのだ。


ー・・・・・それ、ちょっと考えさせてもらってもいいですか?


まあ、いいが、一樽でやってやるのは、今日だけであるぞ。明日からは、二樽になる。


ーそれ、下手したら死んだりは?


大丈夫だ。ちょっと全身の皮膚が焼き切れるくらいの炎に包まれるだけだ。ちょっと熱いかもしれぬが、すぐに回復をかけてやる。


ー例えば、あの、えーと、魔法でパパッとできたりは、


せぬ。


ー痛みとか熱さとかを感じなくなる魔法があったりは、


せぬ。耐えろ。


ーそうですか…わかりました。刺青が入ってても雇ってくれるところを探します。


いいのか?明後日以降になると、三樽になるぞ?


ーいいです。ありがとうございます。大丈夫です。自分の力でなんとかします。このハンデを持ったままで、自分の力を試そうと思います!


そうか。まあ、その意気ではあるな。まあ、死ぬ気になれば大体の事はできるであろう。

よし、面接に落ちまくったお主に、我が一杯奢ってやろう。ほれ、遠慮するでない。


ーありがとうございます。いただきます。


うむ。お主、中身は素直でいい奴だからな。頑張るのだぞ。

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