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悪魔と部屋

――とりあえず、一旦寮の自室に戻ることにした。

 教師たちへの説明だとか、めんどくさいことは、明日の私に任せよう。

「ここが、ナツの部屋……ですか」

 私の部屋……というか、一軒家のような寮を見て、アザグリールが眉を顰める。


「ええ、そうよ」


 この学園は、絶対的な階級社会だ。

 一流の悪魔召喚の腕を持てば持つほど、良い場所にすめるし、良い待遇が受けられる。


 このぼろ……趣がある私しか住んでいない寮は、私がこの学園の底辺である証だった。

 でも、丁度良かったわ。

 アザグリールの姿を、他の誰にも見られずにすむ。


「明日からのことだけど……」

 話し合わなくちゃ。

 少なくとも、アザグリールの設定を作りこまないと……。


 そう思うのに、ベッドに腰かけた瞬間、なぜだか、強烈な眠気を感じた。


 瞼が重い。

「大丈夫ですよ、ナツネ」

「……だいじょうぶ、なわけ、」


 眠気で頭がふわふわする。


「大丈夫」


 あぁ、もうだめ、眠い。

 柔らかいものが、額に触れたのを最後に、私は意識を失った。


 ◇◇◇


「……ん、ふわぁぁ」

 ベッドから起き上がって、伸びをする。

 昨日は、なんだか安心して眠れた気がする。


 ひびが入った見慣れた天井を見――。

「ん!?」

 ひびがはいっていない!?

 それどころか、ぴかぴかに磨き上げられている!?


「ええ、私もしかして……」

 別の人の部屋に間違えて入った!?

 いえ、でもそもそも私の寮は私しか暮らしていないはずだし……。


「あぁ、起きましたか、ナツネ。おはようございます」

「……おはよう、アザグリール」


 にこやかな笑みを浮かべたアザグリールは今日も彫像のように整っていた。

 ……どうやら間違ってアザグリールを召喚してしまったのは、昨日見た夢じゃなかったみたいだ。


「どうです? 少し内装をいじってみたのですが……」


「少しなんてレベルじゃないわ!」


 ひび一つない天井に、品よく整えられた調度品、極めつきはふかふかな天蓋付きのベットだ。


「お気に召しませんでした?」

「とんでもない!」


 本音を言うなら、すごく嬉しい。

 でも……。


「それで、代償は?」

「……え?」


 いやいやいや、そんな初めて聞く言葉のように瞬きされても。


「悪魔が願いを叶えるには、代償がつきものでしょう。代わりに何を求めるの?」


 相手は、高位悪魔だ。

 魔力で手が打てるなら、私は魔力量だけは馬鹿みたいにあるし、一番嬉しいけれど。


 そうはいかないわよね。


「とりませんよ? だって、俺あなたのことが好きですし」



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