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魔王  作者: 覧都


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第八十一話 勇者の娘

「そ、そうですか。よかった。姉と私は、幼い時兄弟や使用人にいじめられていました。姉と私だけ、赤毛でちんくしゃでしたからね。でも天神の勇者様だけは、いつも優しかったわ。今でも天神の勇者様が頭をなでてくれた、手の温もりを鮮明に憶えています」


 アンちゃんは右手を頭の上に置き、父ちゃんの事を思いだしている様でした。


「なるほどな、それであの日、第三王女は遺書を書くのをかたくなに拒んだのか」


「それがどうして、書いたのだ」


 エマさんが恐い顔をして、男に質問した。


「わからんのか。書かなければ妹を殺すと脅したんだよ。天神の勇者様ごめんなさい、ごめんなさいと泣きながら、言う通りに書いてくれたのさ。その後、首吊りの輪には自分から首を通してくれて助かったぜ」


「き、貴様!! それでなんとも思わないのか」


 エマさんと、ライファさんの声がそろった。

 二人とも肩を震わせて怒っているようです。


「お前達にわかってもらおうとは思わんさ」


 そう言うと男の顔から表情が消えた。

 それを同じように表情を無くしたアンちゃんが見つめると、長い髪の端を結んで、


「あの、刃物を貸していただけませんか」


 私に聞いてきました。

 私は何をするのかわからなかったのですが、収納してあるよく切れるミスリルの短刀を渡しました。


「なっ! 何をするのですか!!」


 アンちゃんは私が驚いて止める間もなく、短刀を長い髪にあてると、ためらいも無く切断しました。

 そして男の前に落としました。


「これで、任務完了です。あなたの組織にはリアンは殺したと報告して下さい。これは王族専用のエリクサーです。骨折も歩けるくらいまでは回復すると思います」


 そう言うと、アンちゃんは男の口にエリクサーを流し込んだ。


「うふふ、これでリオニアス、リアンはこの世界からしばらく死んだことにします。イルナちゃん、私を助けて欲しいのですけど……」


「大丈夫です。天神の勇者アスラの娘、イルナにお任せ下さい」


「えっ!!!」


 この言葉に、アンちゃんも、ガイコツ男も驚いている。

 そして、男は悲しげな表情になって私に話しかけてきた。


「俺たちの組織は、任務に失敗すれば殺される。だが、天神の勇者の暗殺だけは、失敗しても許された。この時、天神の勇者に俺は随分長いこと粘着した。だから誰よりもあの男を知っているつもりだ」


「教えてください。父ちゃんのことをーーー」


 私は、父ちゃんの事を知っているという、男の話に食いついた。

 この時父ちゃんと言ってしまったが、エマさんは注意をしないで見逃してくれた。


「ふふふ、といってもあの勇者についてはあまり面白い話しは無いのだがな」


 男はまだ手足が痛むようなので、私は男に近づいて、


「治癒!」


 魔法を使った。


「すげーー!! 痛みが全て無くなった」


「そんなことは、どうでもいいです。父ちゃんの話をはやく聞かせて下さい」


「そうだ、はやくしろ!!」


 エマさんとライファさんがイライラしている。


「仕方がねえ、話してやるとするか」


 痛みが無くなった男は、アンちゃんの髪を手に持つと、テラスに座り込み私達の顔を順番に見ていった。

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