第百九十七話 使者
夜が明けても、炎の勢いは衰えません。
ただ、船ごとに火のまわりに違いがあるようで、崩れおち燃え尽きる船が、ちらほら現れてきました。
バルビロ水軍は、河の中央で火が消えるのを待っているのか、じっとして動かない。
「魔王様!!」
魔王軍の大将軍が僕の陣に、駆け込んできました。
「皆さんは疫病には、かからなかったのですか」
「大丈夫です。それより……」
恐らく、艦隊が燃やされた罪悪感に、さいなまれているのでしょう。ロホウさんが、うつむきながら答えてくれます。
でも、何故大将軍は疫病に、かからなかったのでしょうか。
「皆さんが無事なら、大丈夫です。心配しないでください僕がついています。ここから挽回して見せますよ」
「変です。炎の勢いが弱まり、もう来ても良さそうなのにまるで動きがありません。何かあったのでしょうか」
二時間ほど時間が立ち、おおよそ鎮火しています。
動かないのはおかしい。
フォリスさんが首をかしげながら言いました。
「おお、あれは!!」
皆から驚きの声が上がった。
「す、すごい、魔王様はどの様な策を使ったのだ」
続けて大将軍達が声をそろえて、言いながら僕の方を見た。
「い、いえ、まだ策を使う前です。いったい何があったのか僕にも分かりません」
巨大な白旗を揚げる船が、こちらにゆっくり近づいてくるのです。
船には武装を解除した漕ぎ手と、二人の男と一人の女性が乗っています。
「あれは、リョウキさんとバルゼオさんと、もう一人は誰でしょう」
「アスラ様、あれを見てください」
フォリスさんの指さす方向を見ると、いくつもの煙の柱が整列して領都の方向に続いている。
「のろしですね」
「……」
僕が言うと、フォリスさんは無言でうなずいた。
「こちらへどうぞ」
声と共に中に通されたのは、さっきの三人の男女だった。
三人は額が地面につくほど頭を下げ平伏している。
「楽にして下さい」
僕が声をかけると、ゆっくり顔を上げた。
もちろん視線はクザンに向いています。
「どちらを向いている。魔王様はこちらだ」
フォリスさんが僕の方を見た。
三人はハッとした顔をして僕の顔を見つめる。
「まずは、名前を教えて下さい」
僕は笑顔でうなずくと、出来るだけやさしく問いかけた。
「お、俺は、いや、わたしはバルゼオです。領主バルビロの弟です」
立派なうちの大将軍にも見おとりしない男が答えた。
「私はリョウキ、軍の指揮をとっておりました」
白髪に白い髭、頭の良さそうな老人が答えました。
「私は、バルレノ。領主バルビロの娘です」
美しい二十歳前後の女性が答えた。
「で、ご用件は何でしょうか」
こ、この三人がいったい何の用なのでしょうか。
僕は、全兵士が疫病で動けないことを隠し、余裕の表情で答えた。
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