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魔王  作者: 覧都
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第百九十五話 出陣

「では、行きましょう」


 リョウキ様は、兵士が静かになると、あの作戦室に案内してくださいました。

 作戦室には、九人の軍団長とその副長、数人の重臣が先に来ていました。

 私達が入ると、深く頭を下げてくれました。


「これより、今回の戦いを説明いたします。頭に詰め込んで、くれぐれも間違いの無いようにお願いします」


「はっ!!」


 リョウキ様はいつもにも増して優しく、丁寧な口調です。

 ですが、その奥に強い圧を感じます。


「日が沈むまでは、魔王軍の監視の目があります。いつもと変わらないように行動してください。まあ、先程は、はしゃいでしまいましたが、それは仕方がありません。私も、女神様ー、ライファ様ーと、兵士と一緒になって叫んでいましたから。しかし、この先は音も立てず静かに行動して下さい。そして、日が沈み暗くなったら、戦の準備に入ります」


「はっ、それでかーー」


 私はつい、声が出てしまいました。


「……」


 全員が私を見ています。


「ふふふ、何に気が付かれたのですか?」


 リョウキ様は怒るどころか、私に笑顔を向けています。


「あ、いいえ、何でもありません」


「いえ、気が付いたことを遠慮せず、教えてあげてください」


「あ、はい。かがり火です。四日前に、魔王の艦隊がそろった日から、準備をする為に必要な明るさになっていました。それは、今日準備する為だったことに気が付きました。もし、いつも通りのかがり火にして、今日かがり火が多くなれば、これから夜襲を仕掛けますと言う様なものです。四日前からこの日の事を考えていたのかと気付かされました」


「おおおおーー」


 リョウキ様以外の方から驚きの声が上がりました。

 私の方こそ驚いています。

 リョウキ様が先の先を考えて行動していることに。


「ふふふ、驚きです。ライファ様は初日から気が付いていたのですね。すばらしい!! 他に気が付いていた人はいますか?」


 皆が首を振っています。


「ライファ様ー」


 レノ様が目をキラキラさせて見つめてきます。


「私は、気が付いただけです。本当にすごいのはリョウキ様です」


 私はレノさんの耳元に小声でささやきました。

 でも、皆に聞こえていたようです。


「ふふふ、我らの女神様は、どこまでも控えめな女神様ですね。では、話しを戻します。矢は一人五本持って行って下さい。出来るだけ多く打ち込んで下さい。西風なら一本打ち込んで逃げないと巻き込まれる恐れがありましたが、東風なので風上です。時間に余裕が出来ました。多い目に持って行って下さい」


「はっ!」


 リョウキ様は地図の上のバルゼオ軍の船の駒を、魔王軍の艦隊の近くに移動させながら言います。


「船に矢を積み、出陣したら敵陣に音を立てず静かに、近づいて下さい。闇の中での行動です。皆さんの操船技術の見せ所です。バルゼオ様の合図を待ち待機して下さい。バルゼオ様は、河下で放流されたヌルの身の流れを確認して、合図の火矢を打ち上げて下さい。合図と共に全軍矢の斉射をお願いします……」


 リョウキ様はそう言うと目を閉じ沈黙しました。

 暗闇の中に十万本の火矢が、弧を描き飛んで行く姿を想像しているのでしょうか。


「ぶわああーーー」


 リョウキ様が両手を広げ急に大声を出しました。

 少しビックリして体がビクンとなりました。


「おおーーっ!!」


 他の方も驚いたようです。


「魔王艦隊は業火に包まれます。余裕があれば二の矢、三の矢と連射して下さい。そして、炎に巻き込まれないように、火の勢いを見ながら河の中央まで退避してください。ここからしばらくは、魔王軍の艦隊が燃え尽きるのを待ちます。火が消えるのを待ち、総攻撃です。号令はバルゼオ様、お願いします」


 リョウキ様は船の駒を河の中央に戻し、静かに説明を終りました。

 部屋に静寂が広がります。


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


 バルゼオ様が叫びました。

 おかげで驚いてまた体がビクンとなりました。


「お、おおっ」


 他の方も驚いているようです。

 リョウキ様も体がビクンとなりました。

 バルゼオ様は勝利を確信したようです。


 説明が終ると、部屋を出る前に皆が私に握手を求めてきました。

 私は、求めに応じて一人一人の目を見つめ固く握手をします。


「すげー美しい」

「女神様に握手をしてもらったぞーー」

「ありがたや、ありがたや」


 部屋の外で、それぞれ小声でつぶやいています。

 最後にレノさんまで手を握ってきました。

 こまったものです。




 その夜、準備が済むと、バルビロ軍は静かに音を立てず魔王軍に近づいて行きます。

 私はリョウキ様とレノさんと物見台から、暗闇の河を見つめています。

 真夜中の闇は、バルビロ軍の船の姿をすぐに隠してしまいました。

 これなら、魔王軍からは全く見えないはずです。

 バルビロ軍の軍旗が東風に吹かれ、大きく揺れています。

 リョウキ様の顔を横目で見ると、無表情でした。

 でも、かがり火に照らされたその顔は、かがり火の揺らめきで影が変化し、泣き顔や、時に悪魔のような恐ろしい顔に見えました。

最後までお読み頂きありがとうございます。


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