第百八十四話 準備完了
「さあ、休暇は終わりです。たまっているお仕事をお願いします」
魔王城に戻った僕に、厳しい顔をしたフォリスさんが、重々しい口調で言ってきた。
今までバルビロ領で仕事をしていたのですが……。
恐らくそれを休暇と言っているのかもしれません。
言外に魔王の仕事ではありませんと、叱られているようにも感じます。
「はい、はーーい」
「返事は一回です!」
ぐはっ、なんだかご機嫌が悪いみたいです。
僕の前に書類の束が置かれました。
事務処理が終わり、水田の造成、運河の工事、造船所等を手伝っていると、あっという間に一ヶ月が過ぎていました。
「そういえば、あの人達はどうしているのでしょう?」
「あの人達?」
「ほら、ギルド作りを頼んだ冒険者の人達です」
「あー、あの方達はよくやってくれていますよ」
「えっ」
それだけ。
僕は驚いてしまった。
恐ろしく淡泊な返事です。
「ちゃんとやってくれています……」
「……」
「わかりました。行きたいのですね」
ふふふ、僕の興味津々のまなざしに気が付いてくれました。
「はい!!」
「仕方が有りません、息抜きに少しだけのぞいて見ましょうか」
「えっ!」
息抜きですとー!!
どうやら、これも仕事にカウントして貰えないようです。
僕はアズサの格好、フォリスさんはフォルスの格好で、懐かしい街に来ています。
魔王都で最初にトラブルのあったこの建物、裏にはエドバン商会が有ります。
看板が出ています、冒険者ギルドとなっています。
僕が冒険者ギルドを作りたいと思ったのは、国からの予算がちょっぴりで良いことです。
基本的には依頼者からの報酬で仕事をするのですから、国からの支払いがありません。
命がけの魔獣の退治ですら、国のお金がいらないのです。
兵士での魔獣退治なら、その遠征費用、命を落としたらその補償と、お金が沢山いります
ギルドがあるだけで、国民の生活が楽になり、国の財布にやさしいのですから、とても助かるのです。
「すごいですね。たった一ヶ月でこんなに賑やかです」
ギルドの中にはすでに大勢の人がいます。
「おい!! ガキ! チョロチョロするな踏み潰すぞ!」
「あっ、はい、済みません」
「ガキが何しに来たんだ。ここは冒険者ギルドだぞ」
恐い顔をした、男達に囲まれてしまいました。
なんだか、思っているより、ギスギスしています。
フォルスさんが横で僕をツンツンします。
視線の先に、ギールさんとヘンリーさんが恐い顔をして立っています。
「うおっ、アズサ様!!」
ギールさんが、気付きました。
「えっ」
囲んでいる男達が驚いています。
「やあ、ギールさん。こんなところで何をしているのですか」
「そ、それはこっちの台詞です」
「私達は冒険者に登録しようかなーと、思って来たのですよ」
「ええーっ!」
ヘンリーさんが驚いています。
「ひゃははははっ」
まわりから笑いが起こります。
その笑いを聞きつけて、二階から片腕の冒険者が降りてきました。
「おい、お前ら! 失礼があると俺たちみてーに片腕にされるぞ! その方は俺たちを一瞬で十三人、片腕にする事が出来るお方だぞ!」
「ええええーっ!!!」
周りにいる人達が後ろに後ずさり、僕達のまわりに丸く空間ができた。
「うわあっ、ちょっと何てこと言うんですか。俺達はただの子供です」
フォルスさんが少し慌てています。
でも、事実だからしょうが有りませんね。
「ふふふ、応接室へどうぞ」
ヘンリーさんに特別室に案内してもらい、ギルドの状況について説明してもらいました。
場所が場所だけに、勘違いをしてくる者が多いので、苦労しているらしい。
ギールさんに、もうしばらく用心棒をしてもらうことにして、ギルドを後にした。
待ちに待った、お米の収穫が終るのと、時を同じくして三百隻目の闘艦が完成しました。
いよいよ決戦が始まります。
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