第百八十三話 西風
粗末ですが高い物見櫓が築かれました。
物見台でロホウさんが一人、河を見つめています。
ロホウさんと言えば、魔王国一の猛将です。
身長は三メートルほど、オウブさんより少し低い。
髪は金髪で目は碧い、美形の顔と、たくましい筋肉質の体のアンバランスが、女性の心をつかむようです。
女性ファンの数は魔王国一でしょう。
「ロホウさん、こんにちは」
「ア、アズサ殿!」
あいさつをして、僕も河を見つめます。
下で見た時には水平線しか見えませんでしたが、物見台の上からは対岸まで見ることが出来ます。
曇り空な為か、水面が暗い灰色で重苦しい雰囲気がします。
「せっかく、ここまで来たのにまだ船が間に合いません。しばらくは、にらみ合いでしょうか」
「そうですか」
ロホウさんが気のない返事をしました。
「出来れば、上陸して攻めてきてもらいたいものです」
「……」
ロホウさんは対岸のバルビロ領兵が気になるようです。
「うわっ!!」
急に西から強い風が吹いてきました。
こんな時に僕は少女の姿です。
スカートが頭の上まで舞い上がりました。
必死でスカートを押さえてなおします。
「ふふふ、いい風ですね」
「そ、そうでしょうか?」
ロホウさんが頬を赤くして質問します。
たしかにスカートを舞い上げる嫌な風ですが、魔王国の船は帆船です。
「西から東へ吹く風は、艦隊を勢いよく対岸に運んでくれるはずです」
「おお、そうですな」
「このまま吹き続けてくれると良いのですが……」
「船はどの位で出来上がるのでしょうか?」
「船員の訓練も含めると、あと五ヶ月というところでしょうか」
「長いですなー」
「ふふふ、それでも、バルビロ領の水軍には勝てるかどうか」
「えっ!?」
「敵の水軍の熟練度とリョウキという知恵袋が何をしてくるか。私は少し恐れています。ロホウさんも敵を侮る事無く、ここを守って下さい」
「はっ、承知しました」
「うおおおおおおーーーーー!!!」
なんだか下で叫び声がします。
「アズサさまーー!!」
守備隊のシジセイさんとリョウメイさんが、ぼろい物見櫓にすごい勢いでのぼってきます。
大きな将軍が二人ものぼってきたら、こんなぼろい櫓は倒れてしまいそうです。
グラグラ揺れます。
バキッ
何だか嫌な音がしました。
キイイイーーー
櫓がゆっくり傾きました。
「ふふふふふ」
「わあーはっはっはっ」
結局、櫓は倒れてしまいました。
僕達は地面に放り出されました。
でも三人の将軍が自分の体をかえり見ず、僕の体を大事に持ち上げてくれています。
全員けがも無く、無事なようです。
四人はおかしさをこらえきれず、笑い出しました。
「では、皆さん、私は魔王都へ帰ります」
「えーーーっ!! せっかく会ったばっかりじゃ無いですかー!」
遅れてきた二人の大将軍がふくれています
仕方が無いので、ゆっくりお茶をして魔王都へ帰りました。
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