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魔王  作者: 覧都
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第百五十八話 勝負の行方

 話が終って、全員が席を立ち出口に向った。

 その時、僕はふと思った。


「ギールさんと、イゴウさんはどっちが強いのでしょうか」


 思った瞬間口から出てしまった。

 この言葉を聞いた瞬間、全員の足が止った。


「それなら、やって見りゃあいいじゃねえか!」


 ファージさんが引き返してきて言います。

 しまった、どうやら僕はいらないことを言ってしまったようです。




 魔王城の、石畳の屋内練兵場に全員が移動した。

 欠席者無しです。

 何だか、楽しい娯楽を見つけたようで全員笑顔です。


「ルールは特にありません、死力を尽くして戦って下さい」


 審判はフォルス姿のフォリスさんです。

 命の危険がある時は、うまく止めてくれる事でしょう。

 なんだか、どっちが勝つか賭けをしている人達がいます。

 まあ、楽しめる時には楽しんでもいいですね。


「はじめーー!!!」


 ガキーーンン!!


 ギールさんもイゴウさんも鎧を装備し、武器は鉄製の剣です。

 渾身の攻撃がぶつかり、剣から火花が散りました。


「す、すげーー!! 俺は今までライファ様をのぞけばイゴウが最強だと思っていた。だが、世界は広い、ギールさんも強い!」


 デイラさんが思わず声を上げた。

 僕は、デイラさんとロウロさんの間にいる。

 この二人は人間で、僕も元々は人間だ。

 だからか、この二人のそばにいられる事が心地よかった。


 キンキンキン


 一定間隔でぶつかる剣の音が心地いい。

 実力がはくちゅうしている為か、なかなか勝負が付かない。


「お二人は、天神の勇者アスラは、ご存じですか?」


 僕は聞くとも無しに二人に質問していた。


「知らねーわけがねーさ。だが、第三王女を自殺させたとか、国宝を盗んだとか、いい噂は聞かなかったなあ」


 ずいぶん優しくぼかして言ってくれましたが、知らないわけが無いですよね。

 ロウロさんが、うなずいた。

 ロウロさんも、ちゃんと知っているようです。


「ふふふ、その天神の勇者アスラこそが、大魔王アスラだと言ったら驚きますか」


「大魔王アスラと聞いて、薄々そんなことだろうと思っていたさ」


 デイラさんが言うと、ロウロさんがゆっくりうなずいている。


「僕は勇者でいた時は、ひとりぼっちでとてもつらかった」


「……」


 二人は返事をせず、口を強く閉じて僕を見つめた。


「その噂は、全部濡れ衣です。と、言ったら信じてもらえますか?」


 二人の目がすこしキラキラ輝いている。

 目に涙が湧いて、僕にそう見えているようです。


「僕は、そんなつらい人生を終らせる為に、換骨奪胎かんこつだったいの神殿で、全てを捨てる事を決心しました。選んだ職業が大魔王だったのです。世界の隅っこで、静かに一人で暮らそうと思いました。でもそこでつらい暮らしをしている一人の孤児のイルナに会いました。その後、領主に酷い目に遭っている、フォリスという女性を助けました。僕はその二人と家族になり暮らすことになりました。とても充実した楽しい日々でした」


 キンキンキン


 相変わらず勝負は付きません。

 もう何十合も打ち合っている為か、二人は少し息が上がってきたようです。


「イルナとフォリスさんのレベルが十分上がったところで、二人にもっと強くなってもらおうと換骨奪胎をしてもらいました。イルナは大聖女、フォリスさんは大賢者を選びました」


「なんだって、じゃあ、あの大聖女イルナ様はアスラ様の家族なのか!」


 デイラさんが驚いている。

 口ぶりでは、イルナを知っているようです。

 本当は、イルナの事を根掘り葉掘り聞いてみたいですが、僕は自分が話すことを優先した。


「イルナが大聖女を選んだことにより、僕たち家族は引き裂かれる事になります。――教団は聖女を探す方法があるようです。連れ去られてしまいました。僕は連れ去ろうとした聖騎士を、皆殺しにしようと思いましたが、イルナに止められました」


 キンキンキン


「うおおおおおおおーーーー!!!」


「ぜやああああーーーーーー!!!」


 ギールさんとイゴウさんの気合いが入りました。


「イルナはいいます。『そんなことをしてはいけない、また悪名が広がってしまう。私が偉くなって正々堂々帰ってくるから待っていて!』僕は、そんなイルナの言葉を聞いて、僕もイルナを自分で正々堂々迎えにいけるようになろうと考えました。魔王になった理由は最初そんな個人的な理由でした」


「今は、違うのですか?」


 ロウロさんが優しそうな顔をして聞いてくれました。


「今は、魔人の国の人が飢えること無く、豊かに暮らせるようにと本気で考えています。もちろん、エルフもドワーフも獣人もドラゴンも、そして人間も分け隔てること無く平等にと考えています」


「それまでーーー!!!」


 フォリスさんが声を上げました。


「えーーーっ!!!!」


 全員が声を上げました。


「魔王様の話を聞いていて、試合を見るのを忘れていたー」


 全員、僕の方を向いて話しを盗み聞きしていたみたいで、誰一人試合を見ていなかったようです。

 練兵場の中央で、二人が仰向けになって倒れています。

 口の端に、少し泡を吹いています。

 本当にどっちが勝ったのでしょうか。

最後までお読み頂きありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「頑張って!」


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