第百五十話 決死の戦い
「すげーー!!!」
領主様はさっきまでのふてくされた姿とはうって変わって、子供の様にはしゃぎだした。
椅子から乗り出し、それだけでは足りず、壁から身を乗り出すように戦場を見つめだした。
「おい、あの矢を手に入れてこい!!」
後ろで、控えている兵士に指示をした。
その兵士は素早さに特化した兵士なのか、姿が消えるように素早く移動をした。
私はシャドウに命じて、一瞬で矢を手に入れると領主様に差し出した。
「どうぞ」
「なっ! ライファさんはこんなことも出来るのか。益々欲しくなっちまうぜ」
えっ、それは配下の兵士としてですよね。
私は違う意味だといけないので聞くのをやめた。
領主様は矢をじっくり見ると、恐ろしい顔になった。
「アダマンタイトの矢尻だ。こんな高価なものを矢に付けるとはどれだけの財力だ。しかも何やら付与魔法まで付いている。こんな矢で攻撃されたら、たまったもんじゃねえぜ」
私も矢をもう一本とって来てもらって、見ると先端はアダマンタイト製、矢全体には黒い呪いのような霧がまとわりついている。
砂埃が収まると、数万の兵士が倒れている。
鋼鉄の鎧を貫かれ、大勢が重傷なのでしょう行動不能になっている。
何故か倒れている兵士は数メートルの間に集中している。
矢の雨を抜けた兵士は魔王軍に突っ込みますが、少数でたどり着いた王国軍は次々倒れていく。
「ロウロの兵士は、弓に特化している。デイラ兵が魔法に特化しているのと同じだ。そんなロウロ兵にこの矢じゃあ、あの被害は少ないぐらいだ」
「全軍撤退!! 撤退だー」
ザビロが叫びました。
ザビロが一番に王都の方へ逃げ出します。
でも、それにしたがっているのは、騎兵五百騎だけでした。
総大将の守備をしている兵士達は動いていません。
ザビロが見えなくなると攻撃の為魔王軍に突っ込みはじめます。
「そうなるか」
領主様が、悲しげな顔になりました。
「総大将はいなくなった。今より俺が指揮をとる。我らに残されたのは、勝利か死だ。足を止めず、敵軍に突っ込めーー」
「おーーーーっ!!!」
王国騎士団二番隊隊長ギール様の声がすると、兵士の士気が上がり、ロウロ兵の弓攻撃を抜けた兵士が、次々魔王軍に突っ込んだ。
領兵達が、この状況でどう行動して良いのか、後ろを振り返った。
領主様は、待機の指示を変えることはありません。
王国騎士団は、玉砕覚悟で戦います。
「ここで死ぬ方が、楽なのかもしれねーな」
領主様は、総大将を守っていた兵士達が、次々ロウロ兵の矢で倒れていくのをみながらつぶやいた。
「いっそ、あいつらごと、魔王を殺すか」
そうか、王国兵が戦っている時に、魔法攻撃をしたら巻き込んでしまう。
この状況では、デイラ様が考えていた魔法攻撃は使えないようです。
王国軍は苦戦しています、いいえすでに敗戦は見えています。
兵士が次々倒れていきます。
「王国兵よ聞けーー!! これ以上の戦いは無意味だ撤退せよ。勇敢な戦い振りに敬意を示し追撃はしないことを約束する」
魔王軍から、低いそれでいて遠くまで響く声が届いた。
「我らに帰る先はない、最後までたたかいぬけーー!!」
ギール様の雄叫びです。
「おーーー!!」
敗色濃厚の王国兵の士気がふたたび高まった。
「哀れだな」
領主様が一言つぶやいた。
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