表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王  作者: 覧都
145/208

第百四十五話 朝日の中に

「おーい、あんた、そんなところに女一人じゃあ、飢えた兵士に酷い目に遭わされるぜ」


 私は、この数日眠りが浅い。

 もうじき魔王軍が攻めて来るので、精神が緊張しているのでしょうか。

 今朝も眠れないので、領都の防壁で朝日を見ようとのぼってきました。

 まだ太陽は出ていませんが、地平線が薄ら赤く光り、高さ十五メートルの防壁から見る景色はとても美しい。


「あっ、領主様」


「あ領主様じゃねえぜ、女聖騎士さんに来てもらっているんだ。ちゃんと護衛をしてもらいな」


「はい、ありがとうございます」


 超悪人顔の領主様だけど、顔に似合わず優しい。

 私の事を本気で心配しているようです。


「はーーっ、あんた滅茶苦茶綺麗だな。うちの領内にあんたみたいなべっぴんさんがいたとは、驚いたぜ」


 まさか、領主さんは私に気が付いていないのでしょうか。

 すごい勢いで見てくる。

 今の私は、テラさんが用意してくれた服を着ている。

 このあたりの人がよく着ている、広い袖で長いスカートの衣装です。


「あっ!!」


 一瞬すごい風が吹きました。

 下から吹いてきた風に、髪がサーッと持ち上げられ大きく揺れます。

 そしてスカートを上に持ち上げました。

 嫌な風です、一生懸命スカートを押さえていますがなかなかやみません。


「う、うつくしい……」


 この人本気で言っているのでしょうか。

 ふと気づくと、地平線から、太陽が頭を出しています。

 空と大地がキラキラと赤く光り、とても美しい。

 きっとこの景色の事を言っているのですね。


「本当に美しいですね」


 まだやまない風に、スカートを必死で押さえながら、地平線を見てつぶやきました。


「はーはっはっはっ、俺は景色じゃ無くて、あんたに言ったんだがな」


「なーーーっ」


 私は初めて男の人にこんなことを言われた。

 顔がほてって、真っ赤になります。


「うおっ、あんた、かわいいなー。名前を教えてくれないか」


 私が赤くなるのを見て、可愛いなんていっている。

 これも初めて言われた。

 私はいつも目をつり上げて人をにらみ付けている。

 付いたあだ名が氷のライファだ。


「あの、領主様、本気で言っているのですか。私はライファです」


「なっ、なにーー!! うおっ本当だ」


 凄い勢いで驚いて、数歩後ろによろけた。

 でも、視線だけは動かさず私をじっと見つめている。


「くすくす」


 あんまりにも驚いているので、思わず可笑しくなってしまった。


「ふふふ、ライファちゃんは、甲冑をつけている時は髪をまとめている為かすごい吊り目だから、わからなかったぜ。普段着姿のライファちゃんはそこまで吊り目じゃないのかー。まあ、吊り目の方が俺は好みだがな」


「……」


 私は聞こえないふりをして、少しずつ大きくなる太陽の方に視線を移した。

 平地とはいえ起伏や林があり、そこから濃い影が長く伸び、薄暗い空にはオレンジ色が差し込み、とても幻想的です。


「聖騎士っていうのは神職だから、好きな男は作らないのか」


「うふふ、聖女様が誰かと結婚したいと言っていました。聖女様が結婚するのなら、私もいいのかなーなんて。――私にはあこがれの人がいるのですよ」


「だっ、誰なんだ。そんな幸せ者は」


 なんだかすごい勢いで聞いて来ます。

 ビックリしました。


「まだ、話したことも無いですが、聖女イルナ様のお父様が私の思い人です」


「子持ちのおっさんかよ。しかも話したことも無いって、乙女かよ」


 領主様が、呆れたような顔をしています。


「あれは何ですか!!」


 私は朝日の中心を指さした。

 朝日の中に砂埃が上がっています。


「ふむ、東からの兵団だな。王都のからの援軍か? 嫌な予感しかしねえ」


 こんな時間に行軍しているということは、休み無く一晩中歩いていたのでしょうか。全く兵士のことを考えていませんね。

 領主様の顔が急に曇った。

 恐い顔が悲鳴を上げたいほどの恐い顔になった。

 今の私は、この顔が意外と恐く感じ無いようになっている。

最後までお読み頂きありがとうございます。


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「頑張って!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。

何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ