第百四十四話 援軍要請
「また、こんなに持ってきてくださったのですね」
「多すぎましたか」
「いいえ、戦争中魔石は常に不足します。いくらあっても大丈夫です。では、エルマ様、計算しますので少しお待ち下さい」
私とエマ姉とリアン様の三人は、ダンジョンのレベル上げを終え、ギルドで魔石の精算をしています。
「エルファ、見て下さい！ まだ残っています」
エルマことエマ姉が驚いて、私に話しかけてきた。
高難度の仕事依頼の掲示板に、一枚依頼が残っています。
「珍しいですね。エルナ様が取り忘れたのでしょうか」
三人で近づくと、そこにあった依頼は、魔王討伐だった。依頼主は王国です。
金貨十万枚、生死は問わずだった。
「ふふふ、やろうという人がいるのでしょうか」
エマ姉が笑っている。
「うふふ、やろうという人は結構いますよ。魔人の国に、腕に覚えのある冒険者が何人も忍び込んでいます」
受付嬢が、お金を持ってきて教えてくれた。
お金を受け取ると、私達はギルドを後にして、聖女邸に戻った。
「ライファさん、丁度良かった」
聖女邸に戻ると、美しくそれでいて幼さのあるイルナ様が、ほっとした顔をして、駆け寄ってくださいました。
「イルナ様どうしたのですか。そんなにあわてて」
「はい、デイラの領主様からライファさんご指名で、援軍の要請が来ました」
「ということは……」
「はい、魔王国が二ヶ月後デイラ領へ進軍すると使者が来たようです」
すでに魔王軍が、ロウロ周辺の領地を平定に乗り出したことは、王都の住民にまでわかるようになった。
それは、魔王軍に降伏せず、逃げてきた領主に兵士、領民までが天帝の勇者ハルラによって虐殺されているからです。
イルナ様がやめるように面会を求めても、もう会う事が出来なくなっている。
王国は、見たことも無い魔王に恐怖し、王国全体に暗い雰囲気が広がっている。
虐殺しているのは天帝の勇者なのに、まるで魔王に虐殺されているように感じている人が多い。
人々の心の怒りと恐怖が魔王に向いてしまっている。
「さすがは魔王軍ですね。律儀にその様な事に使者を立てるなんて」
エマ姉が、魔王軍に感心している。
「では、兵士五百名で、出発できるように準備します」
「はい、お願いします」
準備が終わり、デイラに付いた時には、残り一ヶ月を切っていた。
デイラの王都は四方に地平線が見えるほどの平野の中にある。
すでに領主様はこの王都の前で、決戦によって勝負をつけようとしている。
一つの秘策を使い、魔王様まで一撃で薙ぎ払う予定です。
「やあ、ライファさんいらっしゃい」
デイラの領主様がわざわざ出迎えてくれた。
「聖騎士様を迎える為、街の一角に女性だけの区画を用意した。案内は俺の妹に任せる、決戦の日までくつろいでくれ」
「デイラの妹テラです。ご案内いたします」
テラさんは少しふっくらとして、デイラさんとは違い優しげな女性です。
街からは、領民は避難しているのでしょうか、人の気配がありません。
戦場に想定されている場所から一番離れている区画に案内されると、大勢の女性と子供が出迎えてくれた。
「あの、皆さんは？」
「私達は兵士の家族です。いざ魔王軍が来たら、聖騎士様に守ってもらう予定です。ライファ様が来てくれれば大丈夫と言われています」
「ぜ、全力を尽くします」
デイラ様は私に過大な期待をしてくれているようです。
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