第百三十八話 対決
アドは倒れている賊を一瞬見て、砦に目を移した。
それを見て僕は、急ぎ砦の中に走った。
アドは何か術を使うつもりだ。
「火遁の術、火炎龍!!」
アドの声と共に砦の壁が吹き飛んだ。
全ての分身も術を発動している。元々一人なのだから、息がぴったりだ。
おかげでその威力はすさまじい。
砦の壁を壊してもその勢いは全く衰えない。
龍の形をした炎が大きな口を開けて向ってくる。
アドが倒そうとしているのは、ドラゴンですが、そんな攻撃が当たったら、焼きドラゴンになって死んでしまいます。
僕はどの魔法で、後ろのドラゴンを守ろうか悩んでいる。
術というのが魔法と考えて良いものかどうか。
結局僕は、魔法消去や魔法防御をやめて、炎から身を守るシールド魔法を使うことにした。
黒い魔法陣と共に、黒いシールドを出して、それに傾きをつけた。
ガラゴラガガガガガーーーン
アドの出した炎龍は、シールドに触ると角度を変えて、後ろの山を削って飛んで行った。
それを見てドラゴンたちが震えだした。
アドの術はドラゴンを倒すだけの威力があるということだろう。
山がえぐれ大穴が空き、まだパラパラ小石が落ちている。
「アズサめ、ドラゴンを守るということは、賊の仲間になったという事ニャ、容赦はしないニャ! アズサを殺してアスラ様を取り戻すニャ」
な、なにを言っているのかな。アズサが死んでしまったら、アスラも死んでしまいますよ。
あー、アドが本気で何かを仕掛けてくるようです。
「口寄せの術、いでよーー!! アドラゴン」
分身達と息がぴったり合った術が発動しました。
後ろで、おびえるドラゴンの四倍の長さはありそうな一匹の、金色のドラゴンが現れました。全身にパチパチ金色の稲妻が走っています。
良く見ると縦と横そして、長さが全て四倍です。
ということは金色のドラゴンの質量は、ドラゴン八匹全部より、はるかに大きいということになりますね。
「アズサの最後ニャーー!! いけーーーアドラゴン!!!」
金色のドラゴンがゆっくり大きく口を開けます。
うーん困りましたね。
どうしましょうか。
僕は少し悩んでいます。
あの金色のドラゴンを倒したら、経験値が入ってしまうのでしょうか。
僕はレベル1です。
もう、一生レベルを上げる気がありません。いいえ、上げたくありません。
勇者だった頃、誰からもネズミの様に嫌われていました。僕は強ければ人から好かれるのじゃ無いかと考えて、ずっとダンジョンでレベル上げをしていました。だから、やっと出来た、パーティーの仲間から強すぎて気持ちが悪いと言われた時はショックでした。強いことが嫌われる原因になる事を知りました。
今でも、十分強いのだから、欲張ってこれ以上強くなりたくありません。
――悩んでいたら。
金色のドラゴンの口から光があふれ出し、今にも僕に襲いかかろうとしています。
アドの目があやしく光り、勝利を確信しているようです。
アドちゃんは恐ろしい子です。
「ぎゃあーーっ!!」
フォリスさんが、無表情でアド本体の尻尾をつかんでビッタンビッタンやっています。どうやらフォリスさんが激おこの御様子。
アドが目を回しました。
それと同時に、金色のドラゴンとアドの分身が消えました。やれやれです。
僕はそれを確認すると、後ろを振り返りました。
ドラゴンたちが、ビクンと体を大きく動かしました。
どこで用意したのか、大きな体で、木の棒に結んだ小さな白旗を揚げています。
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