第百三十二話 牢獄へ
「アドちゃん、最北の街へは移動出来そうですか」
僕はアズサの時は、アドをちゃん付けで呼ぶ。
するとアドはいつも嫌な顔をする。
「もうシャドウは到着しているニャ」
「さすがですね。では移動魔法で移動しましょう」
「それはいいニャ」
次の瞬間僕たちは、シャドウの魔法で最北端の街へ移動した。
ジュウベイさんは驚いた顔をしてキョロキョロしている。
「ここはヤジの街です! 十日はかかる道のりが一瞬です!! すごいです!」
そして、場所の特定が出来ると感動している。
この街は、ジュウベイさんの名前と同じヤジというらしい。
街は、近くに盗賊の砦があるためか人相の悪い人が多い。
「とりあえず食事でもしましょうか」
僕は朝から何も食べていないので、食事の提案をした。
食堂に着き、空いている席につくと、まわりの注目を集めているようです。
まあ、この街にふさわしくない容姿の子供達が来たのだからしょうが無いですね。
僕たちのことを舐めているのでしょう、無頼の輩がニヤニヤ嫌な笑いを浮かべて近づいて来ます。
「よう、姉ちゃん」
僕たちの中に綺麗なお姉さんは、僕とフォリスさんの間で、席に座らず立って控えているジュウベイさんだけです。
「きゃあー!!」
やっちまいやがりました。
よりにもよって、メイド姿で、長い黒髪が美しく、黒いキリリとした、きらきら輝く瞳のジュウベイさんの、エプロンの紐の結び目の下あたりを、気持ちの悪い手つきでゴツゴツした手の平を、下から上へペロンと動かしました。
下から上に動かすものだから、やや短めのスカートから白い物がチラリと見えてしまいました。
けけけ、けしからん!!
はぁーーっ、でも、それで頬を赤く染めているジュウベイさんはとてもかわいらしい。
「きさまー!!」
フォリスさんが怒っています。
アドも怒っています。
この無頼漢共は、一番やってはいけないことをしてしまいました。
すでにジュウベイさんは、わが国の国宝です。う、うな重の素です。
「あの、私は大丈夫です!」
ジュウベイさんが状況を見て、あわてて声を上げました。
僕は女姿を良いことに、ジュウベイさんの美しい手を握った。
驚いて視線を僕に向けたジュウベイさんに、僕は首を振ってみせた。
「あーーはっはっはっ。がきが偉そうに!!! にらむんじゃねえ」
無頼漢はそう言うと、フォリスさんに殴りかかった。
「うぎゃああああ」
一瞬で床に倒れた。
男は、手首足首まで折られたアスラバキになっている。
奥で酒を飲んでいる、痩せ型の目つきの鋭い男が声を上げた。
「ふん! 全員、やっちまえー!!」
「うおおおおーーーー」
各席の男達が席を立ち襲いかかって来た。
「ジュウドウ、二人をお願いします」
ジュウドウにショート爺さんとジュウベイさんを任せて、僕も参戦した。
「ぎゃあああああーーーー!!!!!」
店内の無頼漢が号令野郎一人をのぞいて全員床に倒れた。
「ふふふふ、あーはっはっはっ」
号令野郎が椅子に座り笑い出した。
「気でも狂ったか!!」
うわーー、フォリスさんが滅茶苦茶怒っています。
「気が狂っているのは、テメーの方だ。俺たちはこれでも、この国の騎士団所属の傭兵だ。兵士に手を出せば死刑だぜ!!」
「くすくす、あなた達が賊だと思いました」
「いつまで、その余裕が続くかなー」
口だけは薄笑いのまま、こっちを鋭い視線で見つめて来る。
「静まれー、静まれー」
入り口から、正規兵だろうか美しい甲冑を着た兵士が入ってきた。
「旦那ー。また馬鹿が騒ぎを起こしましたぜ」
「ふむ、この者達を引っ捕らえろ」
正規兵の隊長が僕たちを捕らえるように命じた。
「えっ、問答無用ですか」
まあ、相手はジュウベイさんに悪戯をしただけなのに、これは僕たちの方がやり過ぎですね。
状況を説明しても悪人はこっちの方です。
「この状況なら、仕方が無かろう」
「ですね」
僕は諦めた。
号令男は滅茶苦茶笑っている。
恐らく、こいつらは、いつもこんなことをしているのだろう。
せっかく、賊の退治をしようとやってきたけど、何だかやる気が失せてしまった。
僕たちは、抵抗をあきらめ素直に牢にぶち込まれた。
よかったのは全員同じ牢に入れられた事位だろうか。
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