第百三十一話 人助けに出発
「アズサ様、無理はなさらなくても、稲作は教えて貰えます」
「どういうことですか?」
僕たちは食後のお茶までご馳走になり、全員別々に寝室に案内されている。
僕の案内役のレオナさんが部屋に戻る途中で話しかけてくれた。
「陛下は、醤油と味噌とお酒、砂糖がようやく輸出できる様になったとおっしゃいました。その為には米を食べてもらわねばならん。そろそろ米の技術を解禁しようかのう、と言っておられました」
「つまりドラゴン退治はしなくとも、教える気だったと言うことですか」
「はい、その通りです」
「ふふふ、そうですか。でも、レオナさんが僕たちを、そこまで心配するということは、本当にドラゴンが強いということです。すなわち、この国が本当に困っていると言うことに、ほかなりません」
「はいそうですが、だからといってアズサ様が、危険をおかす必要はありません」
「ふふふ、僕は魔王です。魔王はこの世界に住む全ての人達が、安心して幸せに暮らすことを望んでいます」
「えっ、僕は魔王!?」
「……」
だ、大失敗しました。
僕が魔王ってばれてしまったでしょうか。
「と、魔王様が言っているのを聞きました。なのでアズサはその意志をくみ、人々の為にどんな困難からも逃げ出さないと決めています」
「で、ですよね。驚きました。一瞬アズサ様が魔王様かと思いました」
「あははは、そんなことある訳無いじゃないですか。私は女の子ですしー」
「ですよねーー。あはははははー」
レオナさんと二人でわざとらしく笑い合った。
寝室への案内が終ると、レオナさんが部屋を出て行った。
部屋では一人になれるかと思ったら、メイドさんが三人で一晩中見守ってくれるようです。
翌朝、旅支度を終えると、僕たちは獣人の国の、北の国境へ向った。
案内役は、僕の部屋のメイドさんがそのまま付いてくれた。
チガーさんとレオナさんは、対ドラゴン用の兵と装備を準備して、追いかけて来てくれるそうです。
王都の街を出てしばらく歩くと、そこには驚く光景が広がります。
綺麗に区画わけしたところに、水が引かれそこに緑の植物が育っている。
「これが稲の育て方ですか」
「はい」
「これは大変だ。大きな工事が必要です。大規模に生産しようとしたら、どれだけの年月が必要になるのでしょうか」
「百年くらいでしょうか。わが国にワギの国の人が、流れ着いたのが百年前と聞いています」
メイドさんが教えてくれた。
百年がかりとは驚きました。
「フォルスさん一時的に、作物の生産量が減ります。やれるでしょうか」
「やりましょう!!!」
「うな丼ニャー!!!」
フォリスさんとアドがやる気満々です。
「誰か、教えに来てくれるのでしょうか」
「私を、ご指名下さりませ。私はヤジ、ジュウベイと申します。ワギ人の末裔でございます。昨日のアズサ様の最後のうな重は私が作りました」
「じゃあ、うな重が作れるのですか」
「はい。お寿司も丼も、稲作も農家の出身ですので、よく知っています」
「ジュウベイさんですか。あなたを歓迎します」
「あの、かってに決めてしまって、よろしいのですか」
「よろしいのです!!」
フォリスさんとアドが返事をした。
二人とも、すでによだれが出ている。
「あの皆さんは、いったい魔王国のどの様なお方なのでしょうか」
「た、ただの子供です。魔王では決してありません」
僕は、ばれないように説明した。
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