第百二十四話 勇者の手下
天帝の勇者の側近ということもあって、他の騎士団は、手出しをせず傍観を決め込んでいます。
デイラの領主様の護衛、熊のような男は勇者の側近と私の後ろでにらみ合いながら、机から離れます。
「ここいらで良いだろう。俺は、天帝の騎士ザビロ様だ。覚悟しなー!!!」
障害物が回りからなくなると、ザビロが殴りかかった。
「ふんっ」
熊男は、ザビロの腕をつかみ、足を蹴り上げ地面へ投げました。
ザビロは石畳に叩き付けられます。
あれは、先日私が、熊男にやった技です。
「ぐああああーー、いてーーー!!!」
「ふむ、石畳に叩き付けたのに気絶させられなかったか。ライファさんにはやはり遠く及ばんようだな」
完全に私にやられたことを意識している様です。
「き、きさまーー!! 俺様にこんなことをして無事に済むと思っているのかー! 天帝の勇者様から厳しい罰が与えられるぞ!」
「わあーはっはは!! おめーみてーな馬鹿を手下にして天帝の勇者も気の毒だぜ」
デイラ様が邪悪な顔をして笑い出しました。
「な、なにが可笑しい!!」
「おめーさん、天帝の勇者に何て言うつもりだい。まさか、喧嘩に負けたとか言うつもりじゃねーだろうな。そんなことを言ったら、天帝の戦士ロドンのように殺されるのは、ザビロさんあんたの方だぜ」
「うっ……」
ザビロが言葉に詰まった。
デイラ様はロドンの事まで知っているようです。
王都の事情もよく調べていますね。
こういう人しか領主は出来ないのだろうと感心しました。
「天帝の魔女パリスはライファさんが殺したんだろ。ライファさんに喧嘩を売るとは馬鹿だねー」
小声で耳元にささやいた。
「こ、殺してはいません。やったのは天帝の勇者です」
「まあ、何にしてもさすがはライファさんだ」
領主様に評価されて悪い気はしないけど、強い強いと言われるのは嫌かもしれません。
「くそーーっ、憶えていろ!!」
腰をさすりながらザビロは、騎士団の兵士に支えられて、騎士団の本部へ歩いていきました。
他の騎士団の人達が、無言で見送ります。
可哀想ですね、あんなのが団長候補とは。
「イゴウ、やはり騎士団の援軍は断って正解だったな。あんな馬鹿が来たら作戦が台無しだ」
「確かにそうでありますな」
熊のような男の名前は、イゴウさんと言うようです。
「あの、断ったのですか」
「ああ、ライファちゃん以外の援軍はいらねえからな」
私の事を、ちゃん付けで呼び出しました。まあ良いですけどね。
「命令を忠実にこなせる配下で無いと、あの作戦が成功しないと言うわけですね」
「そういう事だ。とくにあの馬鹿が来たら台無しになりかねん。ところでライファちゃん、大聖女様にお目にかかりたいのだけれども、どうしたらいいのかなー?」
「イルゾー君ちょっと良いですか」
今の騒ぎを楽しそうに見ていたイルナ様が突然呼ばれて、体がビクンとなりました。
「ななな、何でしょう」
「こちらは、デイラ領の御領主様です。大聖女様にお会いしたいそうです。私はご覧の通り手が離せません。アンゾーさんと二人で、ご案内お願い出来ますか」
「わ、わかりました」
私は、邪魔者二人を追っ払い、ついでに大聖女様に、大聖女様のとこへ案内していただくことに成功しました。
入隊試験は、その後も続き大勢の新規隊員が登録を済ませました。
若い人が大勢いて、騎士団に入隊できたことを、目を輝かせて喜んでいます。
それを見ると私は、暗い気持ちになり心が沈んで行きました。
幸いなのは、弱小聖騎士団四番隊には、希望者がいなかった事ぐらいでしょうか。
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