第百二十話 狂気の勇者
天神の聖女邸の前には大勢の人だかりが出来ています。
全員女性ですが、貴族のご婦人から、そうで無い人まで様々な人がいる。
全員共通なのは、悲壮感がただよっているところでしょうか。
同行していた隊員には休暇を与えて家に帰らせたので、今は私一人です。
なので、シャドウの移動魔法でお屋敷の中に移動しました。
「ライファさん、お帰りなさい」
「ただいま戻りました」
ふー、きらきら美しくて、可愛いイルナ様です。
ただいまの声も、うれしさが隠せません。
丁度お昼だったので、リアン王女様と昼食中ですね。
「外が騒がしいようですが……?」
私は、外の人のことを質問してみた。
「ええ、王国騎士団の家族の方です。敗戦した王国騎士団の兵士は死刑が決まりました。たった六千人に負けた罰とのことです。私の所へ助命の嘆願に来ています」
「ええーえっ!!」
私は驚いた。
せっかく生きて帰って全員死刑って、天帝の勇者は何を考えているのでしょうか。
「すぐに王城に行こうと思います。ライファさんも行きましょう」
「は、はい。ですが少し疲れておりまして……」
「クスクス、はい、回復」
自分でも回復魔法は使えますが、イルナ様の回復魔法は全然違うのです。
体力が戻るのはもちろんですが、何だか心が軽くなり安らかな気持ちに成ります。
もう絶対中毒になる奴です。
「クフッ」
あーだめだー、変な声が出てしまった。
「プッ」
うわーーっ横にエマ姉がいつの間にか来ているーー。
そして吹き出しているー。はずかしーー。
「では、私は支度をしてきます」
真っ赤な顔で、私はその場を離れた。
お風呂に入り、着替えを済ますと、イルナ様は騎士団の家族の方に、今からお城に行き助命の嘆願をすることを伝えていた。
「では、行きましょう」
戻ってくると、イルナ様が移動魔法をかけてくれた。
王城の聖女控え室に移動すると、そのまま玉座の間へ歩いた。
玉座には天帝の勇者ハルラが座っている。
ハルラの左後ろにオニス国王が立たされている。
これを見ても、今のこの国には文句を言えるものが誰もいない。
天帝の勇者の顔は、無駄に美形だ。でもニヤニヤ気持ちの悪い笑顔が、邪悪な化け物のように感じて、背筋が寒くなる。
ふと、視線を玉座の勇者から下に移すと、赤い固まりが床に転がっている。
回りの家臣達の顔が引きつり、緊張感がただよっている。
「うっ」
私は少し声を漏らしてしまった。
エマ姉が鋭い視線を私に向けた。
声を出すなということでしょう。
床に転がっている赤いものは、全裸にされて両手両足を切りとられ、胸に剣の刺さった王国騎士団第一番隊、隊長ヘルさんでした。
手足を切られた時に苦しんだのでしょう、全身に血が付いています。
「連れてこい!!」
天帝の勇者が声を上げた。
この時、勇者は部屋の隅にいるイルナ様に気が付いたようです。
視線を止めると、ニヤリと薄気味悪い笑顔になりました。
私は全身に悪寒が走り、腕には鳥肌がたちました。
「やめろーーー!! やめてくれーーー!!!」
裸にされた王国騎士団二番隊隊長のギールさんが連行されてきました。
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