第百十九話 大聖女様のもとへ
「ロウロ領と魔人の国は、この山岳地で隣接している。だからロウロは百年以上かけて、罠を仕掛けている。俺なら五十万の兵で侵入しても、全滅する自信がある。現に魔王軍は一度撃退されている」
「それで?」
領主様はいきなり答えを教えてくれません。
私は答えが聞きたくてしょうが無いのに。
あれほど強い魔王軍の弱点とはなんでしょうか?
「その後の六千の部隊は、魔王の最強の部隊だろう。王国騎士団は六千人の兵士を見て舐めたのだろうな。弓も使わず、力押しとは呆れてものも言えん」
ニヤニヤして私を見てきた。
これがヒントなのだろうか。
「はい、もっと敵の強さを正当に評価すればよかったですね」
「うむ、そうだ。俺なら、山を越えてきた時点で、五十万人相当と考えて対応する。決して近づかん!」
「……!?」
「はやいな、もう気が付いたか?」
「遠距離攻撃だ!!」
私は少し大きな声がでた。
「そうだ、聞いている範囲では、魔王軍は魔法を使っていねー」
「そうですね」
確かに魔法を使う素振りも無かった。
「神殿は昔、世界の中央にあった。だから世界の人々が職業を持てた。今は人間の国にあり教団が独占している。これがどういう意味かわかるか?」
わかる。魔人は職業を持っていないということだ。
生まれつき職業を持っていれば良いのだけど、持っていない人は職業無しだ。
「魔人は魔法職の人がいないという事ですね」
「あんたは、つえー上に、美人で頭もいいなー。非の打ち所がねえ。その通りだ。そして俺は、その事に気が付いて、領内の軍人は、魔法職につけている。恐らく王国一魔法使いや、魔導師が多いはずだ。まあ、選択出来ねえ奴は自由に選ばせたが、出世はさせてねえ」
「す、すごいです」
私は、素直に感動した。
ロウロの領主様も優れた人だと思いましたが、この凶悪な顔をしたデイラの領主様も頭が良い。
「ふふふ、美人に褒められると、嬉しいもんだな。だが驚くのはまだはやい」
「えっ!?」
「魔法職があると言うのが、人間の優位性だが、更にもう一つの優位性がある。それは人間のほうが魔人より数が多いと言うことだ」
「はい」
「魔法というのは、大勢で同じ魔法を使えば足し算になる。一人では十の力でも、千人なら一万の力の魔法になる。その集団魔法を俺は訓練により、すでに使える所までにしている」
「あ、あの、何人魔法職の方がいるのですか?」
「ふふふ、それは言えねえ。あんたが、俺の配下になるのなら、教えてやるがな」
「あーー、配下になるのは無理です。私は聖女様に全てを捧げていますので」
私の言葉を聞いて、すごく残念そうな顔をしています。
本気のお誘いだったのでしょうか。
でも、すごい、そんなやり方を考え付くなんて!
「まあしょうがねえ。だが魔王軍が来たら、あんたを指名で援軍を頼むからな。聖騎士団、四番隊副隊長のライファだな……。んっ、あんたが隊長じゃ無いのか。まさか隊長はもっと強いのか?」
「ふふふ、隊長は強いぞ」
実は、私は隊長のエマ姉と強さは大差が無くなっています。
でもここは、こう言ったほうが良いでしょう。
領主様は驚いた顔をしましたが、すぐに満面の笑顔になりじっと私の顔を見つめていました。
領主様は話しが終ると、隊員達全員に食事を用意してくれました。
私は、シャドウの魔法で王都へすぐに移動出来るのですが、その事を知られたく無いので歩いて帰ることにしました。
でもやっと、イルナ様のもとへ帰れます。
心がうきうきします。
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