第百一話 愚弄
王城のテラスで、集まっている貴族の隙間から中庭を見ました。
魔王の国から、宝物を満載した馬車が五台止っています。
「すごい量の、宝物だ。魔王は余程裕福なのだろう」
集まっている貴族が驚くほどの宝物の量です。
ザワめきが収まりません。
しかし、あれだけの金銀財宝を丸見えにしてここまで運んだのかーー。
道中で、賊と戦いまくった事が想像出来ます。
と、思ったら、レベル5ダンジョン最奥のモンスターが、馬車を警護しています。勝てる賊はいませんね。
「な、何だあの、赤黒いモンスターわ。魔人とはやはり気持ち悪いのー」
近くにいる、老人の貴族が腕をクロスさせて、寒そうな仕草をしました。
豪華な、馬車から一人の目つきの悪い背の高い男が降りてきます。
すごく目つきが悪くて震えが来ます。
「こ、恐そうな人ですね。あれが使者の方でしょうか」
アンちゃんが、おびえた顔でこっちを向きました。
「贅沢な服を着ていますからそうなんでしょうね。きっと魔人の中でも高貴な方なのでしょう」
「あっ、中に入りました」
「私達も行きましょう」
私達は謁見の間に向った。
謁見の間は、王の権威を示すため豪華な造りで部屋中が飾りたてられています。
そして部屋の中央に、玉座が二つ用意されています。第一王子と第二王子が座る為の物です。
第一王子用の椅子の横に天帝の勇者が立ち、第二王子用の椅子の横に教団の教祖が立っています。
この国は、まだ王が決まっていないのです。
そして、第一王子側の壁に王国騎士団の幹部が整列し、第二王子側の壁に教団の聖騎士団の幹部が整列しています。
私は聖騎士団第四番隊隊長エマさんと、副隊長ライファさんの後ろで興味津々で、顔をちょこんと出して、のぞき見ている。
横には、この国で死んだことになっている、リアン王女が同じように興味津々でのぞき見ています。
「き、来た。あれが魔王からの使者か。でかいし不気味だ」
護衛の騎士の横に、身分の高い貴族が、入室を許されて数十人入っています。
使者が入室してくると、その貴族達から、小さくささやくような声が出ました。
胸をはり、眉をつり上げて入ってきた使者は、第一騎士団の団長より頭一つ背が高い。
鑑定をしようと思いましたが、人によってはそれに気付く人もいるのでやめておきました。
近くで見る魔王の使者は、父ちゃんよりよっぽど魔王のように威厳があります。
部屋の中央に着くと使者は膝を突き、頭を下げました。
遅れて王子が入ってきました。
「おもてを上げよ」
二人の王子が声をそろえた。
顔を上げた使者の顔を見て、王子が一瞬怯んだ。
使者の方の貫禄勝ちです。
「え、遠路ご苦労であった。第一王子オニスである」
「だ、第二王子モドスだ」
「私は、アスラ魔王国使者のファージと申します」
「な、なんだと、アスラだと」
今度は天帝の勇者と、教祖の声がそろった。
しかも相手国の国王の名を呼び捨てにしました。
使者の目が一瞬で充血し真っ赤になった。
最後までお読み頂きありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「頑張って!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。