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ネズミの魔女④

桃はずんずんと不良に近づいていく。

「あ〜くそっ!やめとけって!」

「コウはあのままでいいと思ってんの?!」

「いいとは思わないけど、さぁ」

「いい!私がやるから」

桃の悪い癖だ。昔は引っ込み思案で、いつも誰かの後ろに隠れていたくせに。トラブルと見ると首を突っ込まずにはいられない。


「ん?なんだ?なんだ?混ぜて欲しいのかな?ギャハハ!」

「ははっ彼氏のほうが賢明だな。ほらあっちにいきな!」

こちらを嘲ってきたが、俺は関わりたくないので、目を背ける。

「は、チキンが。彼女の後ろで震えてな」

「コウは関係ないでしょ?」


彼女はカバンから折り畳み傘を取り出して柄をのばす。


「こいつ、折り畳み傘を構えてやがる。超こぇ、へへっ」

おどけた様子で不良たちは桃のことを笑った。


「さっさとその子を離しなさい!」

「はぁ?お前も一緒に遊んでやるぜ。おい、捕まえてこい」

リーダー格の男は仲間に伝えると、桃を囲むように不良たちは取り囲んでいた。


「へぇ、近くで見ると、ちょっとかわいいじゃないか」

「…はぁ?ちょっと?!」


彼女は折り畳み傘をブンブンと振り回していた手をとめる。そのまま駆け出し、飛び上がり、ドロップキックを不良の顔面にお見舞した。


「とっても!でしょうが!!バカタレが!!!」

「ぐぁ!!」

そのままサーフィンのように頭を踏みつけて、地面を滑る。

呆気にとられていた不良たちだが、彼女を捕まえようと距離をつめる。

「天下無双流…じゃなかった…スーパーハイパーウルトラ…」

彼女は傘を構え直し、上段に構える。長々と同じ姿勢でぶつぶつ唱える彼女は、ただ淡々と小学生もセンスを疑うかっこいいセリフをつぶやいていた。

しびれをきらした1人の不良が彼女につかみかかる。

「なにぶつくさ言ってんだよ!」

「…ギガンティック、おっと、ギャラクシー…えーと、ファンシーダイナマイトぉ!」

不良たちの攻撃を躱していく。

「くっそ、ひらひらと避けやがって!ぶちころしてやる」

「メルシー!アフロボォンバー!!メェェェエエ工ン!!!!」


ズドン


地面に響く低い音を立てて、頭を叩きつぶされる。

「…天下無双流桃割り…。桃、お前、相変わらず、ネーミングセンスねぇな」

「だまらっしゃい!!私名前桃なのに、技名に名前入ってるのダサいっしょ」

長々とした口上のほうがかっこ悪いだろ。

「なにか?」

天下無双流と仰々しい名前だが、要は剣道でいうただの面。幼いころに剣道を習い始め、インターハイにも出場する猛者。「豪傑の桃」と呼ばれる女の実力である。

彼女の握るピンクの傘は凶器に見えた。

「なんでもありません!サーイェッサー!!」

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