ネズミの魔女③
「ねぇ、コウ。あれって」
どうやら桃も、気づいたようだ。
「あ、あなたのお、お名前は、タ、ロウさん、ですか?」
「あー?ちげぇよ。てか、なに?コスプレイヤーってやつ?」
「なになに?かわいいじゃーん」
公園で、1人の女の子を不良たちが取り囲んでいた。見るんじゃなかった。バイトの時間に遅れてしまう。
「ねぇねぇ、タロウ紹介してやるからさ、俺たちと遊ぼうぜ?」
「ほ、ほんとですか?!」
目を輝かせる少女の姿は、たしかに不思議な格好をしていた。中学いや、下手すると小学生ぐらいの身長だが、胸は大きい。ところどころ穴の空いた茶色のマント。ハロウィンでよく見かけるような三角帽子に、身長を超える木でできた杖。灰色の髪に透き通るような白い肌。
「ウンウン!タロウなんて、何十人でも紹介してやるさ…そのかわり紹介料として」
不良の1人が女の子を後ろから羽交い締めにする。
「な、な、な、なにするん、ですか!」
「おまえの身体に払ってもらおうかな?へへっ」
わきわきといやらしく手を動かして、舌なめずりしながら近づく不良を見て、俺はにこやかに言った。
「桃、帰ろうか!」
「バカタレ!助けるんでしょうが!」