白い本(ロストストーリー)
魔女たちは、また世界をわたる準備を始めた。白い本を中心に、魔法陣を書いている。だが、その前にやってもらわないといけないことがある。
「なぁ、俺たちを元の世界に帰してくれないか」
「ちょ、コウ!みんなを見捨てる気?!」
おれは豚から桃を助けるために、ここに来た。目的は達した。わけの分からない戦いに巻き込まれるのは真っ平だ。
「あんな危ないめにあって、まだ首を突っ込むのか!おれたちはただの学生だぞ」
「でも、物語が、」
「どうなろうが、知ったことか。物語なんかなくたってどうにでもなるだろ?」
沈黙が場を支配する。
「わりぃが、お前の考えてるより、事はでかいんだよ。」
うまの魔女が言った。
「物語ってなんのためにあると思う?」
「そりゃ、楽しむためだろ?」
「バカタレ!違うっての。なんのためによ」
「はぁ?」
「これだから、コウはにぶいのよ」
「なんだとっ」
ちゅーこが、まぁまぁと、間に入って、説明する。
「え、えっとね。例えば、三匹の子豚って、急いで適当な仕事をした長男や材料を吟味しなかった次男がオオカミに食べられて、レンガを使って、丁寧に家を作った三男が生き残ったでしょ。つまり、やることにたいして、真摯に取り組みなさいよって想いがこめられているの」
「つまり、物語てのは、そう言ったことを小さい子たちに伝えるために、つくられてるのさ」
「学校で習えばいいだろ?」
「三つ子の魂百までってね。小さい頃の学びは一生続くのよ。学校ってあんた寝てばかりじゃない」
「な、あれは、バイトで」
「小さい子どもでも分かりやすく、ものの考え方を学べる物語がなくなったら、大変なことになる」